「退職して個人事業主(フリーランス)になると、再就職手当をもらえないの?」と考える方がいるでしょう。個人事業主になる人でも、再就職手当をもらえるケースはあります。ただし、副業をしている方はもらえない可能性があるため注意が必要です。
本記事では、個人事業主(フリーランス)が再就職手当をもらう方法を解説します。制度の概要や、再就職資金の調達方法なども解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
- 退職後に個人事業主になる場合でも、再就職手当の対象になるよ
- ただし、すぐに開業した場合や、企業に就職する意思がない場合は対象外なので注意しよう!
- 再就職手当をもらうには、説明会への参加や、月2回の求職活動が必要だよ!
目次
個人事業主・フリーランスになったら再就職手当をもらえる!
会社を退職して個人事業主(フリーランス)になる場合でも、再就職手当はもらえます。ただし、再就職手当をもらうためには「失業手当」を受給していなければなりません。
つまり、失業手当の申請をしていなかったり、失業手当の受給条件を満たせなかったりすると、再就職手当ももらえないため注意しましょう。
また、再就職手当や失業手当は、あくまで失業して仕事に困っている人のためにあります。「開業するから企業に就職する気持ちはまったくない」と考えているのであれば、本当に受給すべきなのかをよく考えましょう。
失業手当はもらえない可能性あり
失業手当とは、失業した方を対象として、生活を維持して再就職するために支給する手当金です。退職して個人事業主になった場合、失業手当がもらえない可能性があります。
具体的には、副業をしている方がその事業を個人事業(本業)とした場合、失業手当はもらえません。副業をそのまま本業にしたら、失業期間が発生しないためです。副業をしている方は、退職前に事業をストップするか、業務時間をセーブしましょう。
失業手当・再就職手当をもらうためのポイントについては、この後の項目で解説します。
個人事業が廃業した場合でも失業手当は対象
個人事業が廃業となった場合でも、条件を満たせば失業手当の対象になる場合があります。具体的な条件は、以下のとおりです。
- 事業期間が30日以上
- 事業開始日・事業に専念し始めた日・事業の準備に専念し始めた日いずれかから起算して30日を経過する日が受給期間の末日以前
- 当該事業で、就業手当または再就職手当の支給を受けていない
- 当該事業により自立はできないと認められる事業ではない
- 離職日の翌日以後に開始した事業である
参考:厚生労働省『離職後に事業を開始等した方は雇用保険受給期間の特例を申請できます』
上記すべてを満たす場合であれば、事業が休廃業となり再就職している場合でも、失業手当を受給できます。
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失業手当・再就職手当とは?
会社を退職したら、失業手当や再就職手当を受け取りましょう。手当金を受け取れば、余裕をもって次の仕事の準備ができます。ただし、手当金はそれぞれメリット・デメリットがあるため注意が必要です。
以下では、失業手当や再就職手当の受給条件やメリット・デメリットを解説しますので、これから退職を検討をしている方はぜひ参考にしてください。
失業手当(失業保険)
失業手当は、雇用保険に加入していた方が、失業した場合に受け取れる手当金です。条件によりますが、前職給与の約65%前後を受け取れます。
以下の条件を満たした場合、失業手当を受給することが可能です。
- 必須条件
- ハローワークで失業手当の申請をしている
- ハローワークで再就職活動をしている
- 再就職する意思と能力がある(病気や定年等で再就職不可な方を除く)
- 個人事業を開業していない
- 自己都合退職
- 離職日以前の2年間で、雇用者保険の被保険者期間が12か月以上
- 特定理由離職者、会社都合退職
- 離職日以前の1年間で、雇用保険の被保険者期間が6カ月以上
※特定理由離職や会社都合退職については「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」を参照
失業手当を受給すれば、事業開始に向けて準備しやすくなるのがメリットです。また、再就職手当を受け取れるようになるのも、メリットと言えます。
ただし失業手当を受給すると、雇用保険の加入期間がリセットされるので注意が必要です。雇用保険の加入期間がリセットされると、再度退職した場合の失業手当受給期間が短くなってしまいます。
年金が減額される可能性もあるため、本当に受給すべきか慎重に検討してください。
再就職手当
再就職手当は、失業手当をもらいながら再就職活動をした方が、就職できた場合に受け取れる手当金です。以下の条件を満たした場合に受給できます。
- 待機期間を満了してから、事業をスタートした
- 失業手当の支給残日数が3分の1以上残っている
- 前職に復帰したり、関係企業に就職したりしていない
- 1年を超えて仕事をするのが決まっている
- 原則、雇用保険の被保険者になっている
- 過去3年以内に、再就職手当又は常用就職支度手当を利用していない
- 再就職手当の受給決定より前に、就職が決まっていた場合は対象外
- 再就職手当の支給決定日までに離職していない
参考:厚生労働省「再就職手当のご案内」
再就職手当は、一括でまとまったお金を受け取れるのが大きなメリットです。一方、失業保険を満額(満期)まで受け取った場合よりは受給額は減るため、なるべく多くの手当金を受け取りたい方は注意しましょう。
個人事業主・フリーランスが失業手当と再就職手当をもらう流れ
個人事業主・フリーランスが失業手当・再就職手当をもらう流れは、以下のとおりです。
- 退職する
- 失業手当の手続きをする
- 雇用保険説明会に行く
- ハローワーク(公共職業安定所)へ行く
- 開業手続きをする
- 再就職手当の手続きをする
手続きの流れを解説しますので、参考にしてください。
退職する
退職する際には、以下の点を確認しましょう。
- 離職証明書をいつもらえるか
- 雇用保険の加入期間はどのくらいか
- 副業時間が1日4時間未満、もしくは収入が賃金日額の80%未満か
失業手当の手続きをするには、自署入りの離職証明書が必要です。また雇用保険の加入期間によって失業保険の受給金額は異なるので、事前に証明書と加入期間を確認しましょう。
また、副業の労働時間が1日4時間以上である場合、失業扱いになりません。退職後に失業手当を受け取りたい場合は、副業時間や収入を調整しましょう。
失業手当の手続きをする
退職後は、失業手当の手続きをしましょう。失業手当は、原則として離職翌日から1年まで受給できます。退職後は、お早めにハローワークで「基本手当」の手続きをしてください。
手続きでは、最初に「求職の申し込み」を行い、それから離職票を提出します。前述のとおり自署入りの離職証明書が必要なので、事前にご準備ください。
雇用保険説明会に行く
雇用保険説明会とは、失業手当を受給する方向けの会です。説明会日時のお知らせが届いたら、必ず出席してください。説明会に参加する際は、以下のものが必要です。
- 受給資格者のしおり
- 筆記用具
- 本人名義の通帳、払渡希望金融機関指定届など
- 写真
- マイナンバーのわかるもの
- 身分証明書
- 住民票の写し、印鑑証明書、国民健康保険被保険者証など
- その他、必要な書類
なお上記は2024年3月時点のものです。持ち物に関しては説明会のお知らせに記載がありますので、必ずご確認ください。
説明会に出席したら、失業認定日にハローワークへ行き「失業認定申告書「雇用保険受給者証」を受け取りましょう。
ハローワーク(公共職業安定所)へ行く
失業手当をもらっている期間は、ハローワーク(公共職業安定所)で月2回の求職活動をしましょう。求職活動を辞めた場合は、再就職の意思がないと判断され、給付延長・停止となります。
開業を検討している場合であっても、求職活動は必ず行ってください。「自分は開業するんだから、求職活動は必要ない」と考えるのであれば、そもそも失業手当をもらうのは辞めましょう。
開業手続きをする
求職活動をしてみたうえで、やはり個人事業主として働きたいと考える場合は、開業手続きを行いましょう。具体的には、以下のような手続きが必要です。
開業に関する手続き
手続きの種類 | 手続き先 |
開業手続き | 税務署 |
青色申告承認申請 ※青色申告をしたい方のみ | 税務署 |
インボイス事業者登録 (適格請求書発行事業者登録) ※インボイス対応したい方のみ | インボイス登録センター (郵送) |
消費税簡易課税制度選択届出手続 ※簡易課税制度を利用したい方のみ | 税務署 |
年金・健康保険の切り替え | 市区町村役所 |
青色申告を利用せず、インボイス対応も考えていない場合は、開業手続きと社会保険切り替えのみで問題ありません。確定申告やインボイス関連で追加の手続きが必要な場合は、税務署等で手続きをしましょう。
なお、インボイス制度や簡易課税制度については、以下の記事を参考にしてください。
再就職手当の手続きをする
開業手続きが完了したら、再就職手当の手続き(開業報告)をしましょう。手続きは、原則として開業から1か月以内に行います。
手続き後はハローワークから「再就職手当の申請書類」が届きます。書類を提出し、手当を受け取ってください。
個人事業主・フリーランスは再就職手当をいくらもらえる?
個人事業主になる場合、無職期間で再就職手当をいくらもらえるか気になる方が多いでしょう。手当金をいくらもらえるかは、無職期間の長さや、前職給与などにより異なります。
以下では、失業手当と再就職手当をどのくらい受給できるかを解説しますので、参考にしてください。
失業手当
失業手当の金額は、以下のように計算します。
- 離職日の直前6か月間の賃金合計 ÷ 180 = 賃金日額
- 賃金日額 × 50〜80%(60〜64歳は45〜80%) = 失業手当額
※割合は、賃金日額が低いほど高くなる
つまり、おおよそ前職給与の約65%ほどが失業手当としてもらえるのです。ただし、以下のように上限金額が決まっていて、前職給与が高額な方だと60%以下になる可能性もあります。
年齢 | 失業手当の上限金額 |
30歳未満 | 6,945円 |
30歳以上45歳未満 | 7,715円 |
45歳以上60歳未満 | 8,490円 |
60歳以上65歳未満 | 7,294円 |
引用:ハローワーク「基本手当について」
上記の上限額は、年度ごとに変動しますので、参考ページにて最新の金額をご確認ください。
再就職手当
再就職手当は、以下のようにして金額を計算します。
- 失業手当の残日数が3分の1以上、3分の2以下の場合
- 失業手当の金額 × 失業手当の支給残額 × 60% = 再就職手当の支給金額
- 失業手当の残日数が3分の2以上ある場合
- 失業手当の金額 × 失業手当の支給残額 × 70% = 再就職手当の支給金額
例えば失業手当7,000円、残日数2/3以上だった場合、再就職手当は490,000円となります。
失業手当・再就職手当の振り込み時期・タイミングは?
失業手当や再就職手当は、申請後すぐに振り込まれる訳ではありません。失業手当は、退職理由によって振り込み時期が異なるので注意しましょう。
- 失業手当
- 自己都合:給付制限(2か月)の後、認定日の約1週間後に振り込み
- 会社都合:認定日から1週間後
- 再就職手当
- ハローワークで開業報告をしてから約1か月後
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失業手当・再就職手当をもらいたい場合の注意点
失業手当や再就職手当をもらいたい場合は、以下の点に注意しましょう。
- すぐに開業届を出さない
- 副業としてのフリーランス活動を継続しない
- 原則バイトをしない
- 失業手当の受給残日数に注意
注意点についてそれぞれ解説しますので、参考にしてください。
すぐに開業届を出さない
すぐに開業届を出すと「失業していない」「再就職の意思がない」と判断され、手当の対象外となってしまいます。まずは月2回の求職活動をしばらく行って、それでも個人事業をしたいと思ったら開業するようにしましょう。
またそもそも、個人事業しか考えていないのであれば、失業手当・再就職手当は受け取るべきではありません。失業してしまった場合で、就職も視野にいれている場合のみ利用してください。
副業としてのフリーランス活動を継続しない
退職後も副業をそのまま継続していると、無職期間がなくなるため、失業手当の対象外となります。失業手当・再就職手当をもらえるのは、あくまで「退職後に求職活動を行い、その後開業した場合のみ」です。
副業としての活動を完全にストップしたくない場合は、業務時間を1日4時間未満として「内職・手伝い」という扱いにして、さらに収入を賃金日額の80%未満となるようにしましょう。
原則アルバイトをしない
雇用保険加入条件を満たすアルバイトをしてしまうと、無職扱いではなくなってしまうため、失業手当を受け取れなくなります。アルバイトの雇用保険加入条件を見てみましょう。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用が見込まれる
なお、上記条件を満たさないアルバイトであれば、求職申し込み前・給付制限期間中・失業給付受給中はアルバイト可能です。待機期間(7日間)は、アルバイト不可となりますので、自宅で待機しましょう。
失業手当の受給残日数に注意
失業手当の受給残日数が1/3以下だった場合、再就職手当はもらえません。例えば、所定給付日数が120日の場合、残日数が80日以上でないと再就職手当の支給対象外となります。
ギリギリに手続きをしようとすると、開業手続きや開業報告がうまくいかなかった時に、期日を過ぎる可能性があります。ある程度の余裕をもって、手続きをしましょう。
失業時に使える資金調達方法
失業してしまって、再就職や開業までに資金がなくなりそうであれば、以下の方法で資金調達をしましょう。
- カードローン
- 銀行融資
- 公的機関からの融資
- 友人・家族からの借金
- ファクタリング
ただし、無職期間は社会的信用が低く、今まで使えていた借金方法が使えない可能性があります。以下の解説を参考にしながら、自分でも使えそうなものがないか探してみてください。
カードローン
カードローンは、ほかの方法と比べて審査が柔軟なのが魅力です。貯金や収入の状況によっては、銀行融資やビジネスローンと比べて手軽に利用できます。
ただし、無職期間に利用登録をする場合、返済能力がないと見なされるため、上限額がとても低くなってしまいます。また、銀行・公的機関の融資と比べて利率が高く、返済負担が大きくなりがちな点もデメリットです。
銀行融資
銀行融資は、カードローンよりも大規模な借入がしやすい方法です。利率もカードローンと比べて低い傾向にあるため、返済の負担が大きくなりすぎず、計画的に利用できます。
一方、審査ハードルは比較的高いとされており、手軽に利用するのは難しい方法です。特に無職の場合は、よほど魅力的な事業アイデアがない限りは、審査が通らないでしょう。
審査準備にも時間や労力がかかるため、高額融資でなくても良い方は、ほかの方法を検討することをおすすめします。
公的機関からの融資
公的機関からの融資は、無利子・無保証でも利用できるものがあります。スタートする事業の内容、またご自身の職歴などによっては、公的機関からの融資を受けられる可能性があるでしょう。
ただし、銀行融資と同じく審査が厳しいとされており、手軽に利用できるものではありません。また、申請や審査のための準備に時間がかかり、振り込みまでにも数か月ほどかかる点にも注意が必要です。
友人・家族からの借金
社会的信用があまり影響しないのは、友人や家族からの借金です。年収や借入状況などに関わらず、その人と信頼関係を築けていれば借りられるでしょう。また、友人や家族からの借金であれば、信用情報に傷が付かずローンやクレジットカード審査に影響しません。
一方で、友人や家族からの借金はトラブルに繋がりやすい方法です。ささいな点でも「言った・言ってない」の喧嘩になってしまい、絶縁されるリスクもあります。どれだけ親しい人であっても、借金をする場合には誓約書を作成しましょう。
ファクタリング
ファクタリングとは、報酬を受け取る権利をファクタリングサービス会社に売却して、すぐに現金を調達する方法です。副業をしていて、取引先に対する売掛金がある場合に利用できます。
ファクタリングは、本来受け取るはずだったお金を、手数料を払って早期に現金化するサービスです。そのため、返済の必要がありません。また、借入ではないので信用情報に傷が付かない点も魅力です。
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まとめ
個人事業主(フリーランス)になる場合でも、再就職手当はもらえます。また、条件を満たした場合であれば、個人事業が廃業となった際も失業手当・再就職手当の対象となるので、積極的に活用しましょう。
なお、失業手当や再就職手当をもらった場合、雇用保険の加入期間がリセットになるなどデメリットもあります。また、開業届の提出タイミングや、再就職意思の有無によっては失業手当をもらえない場合があるため注意が必要です。
個人事業に興味がありつつも、再就職も検討しているという場合には、本記事を参考にして手続きをしましょう。
- 退職後に個人事業主になる場合でも、再就職手当の対象になるよ
- ただし、すぐに開業した場合や、企業に就職する意思がない場合は対象外なので注意しよう!
- 再就職手当をもらうには、説明会への参加や、月2回の求職活動が必要だよ!
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