副業をしている方のなかには「収入300万円以下だけど、事業所得として青色申告したい」と考えている方もいるでしょう。一方で、過去の国税庁発表を受けて「300万円以下だと事業所得にできないの?」と不安を抱いている人もいるようです。
本記事では、300万円以下の副業収入は雑所得なのか、事業所得なのかを詳しく解説します。青色申告をしたいと考えている副業ワーカーの方は、ぜひ最後までご覧ください。
- 副業収入が300万円以下でも、帳簿書類を保存していれば事業所得にできるよ!
- ただしこの法解釈は、2022年から適用となるから注意しよう
- 事業所得として申告すれば、青色申告を利用して大幅な節税ができるよ!
目次
事業所得と雑所得とは?
所得にはいくつかの種類があります。税務上の分類は、以下の10種類です。
- 事業所得
- 不動産所得
- 利子所得
- 配当所得
- 給与所得
- 雑所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 山林所得
- 退職所得
参考:国税庁『所得の種類と課税方法』
上記のうち、副業収入は基本的に雑所得に、場合によっては事業所得に分類されます。それでは、どういった収入が事業所得や雑所得に分類されるのかについて、以下で解説します。
事業所得になるもの
事業所得とは、商業・鉱業・漁業・農業・自由業といった事業で得た所得のことです。事業規模の株取引、先物取引での所得も、事業所得に分類します。
それでは、事業所得に関する基準を見てみましょう。
- その事業が、社会通念上、事業と呼べるような程度で行われている
- 収入が300万円を超えている、主たる収入に対する割合が10%を超えている
- 営利性が認められる(赤字が続いていない、もしくは改善のための取り組みをしている)
- 記帳・帳簿書類を作成・保管している
※必須でない
2022年10月に法令解釈通達の一部が改定され、事業所得と雑所得の境界線が明確になりました。
特に大きなポイントは「記帳・帳簿書類を作成し保存しているか」という点です。収入が300万円を超えていたとしても、記帳・帳簿書類の保存がない場合、事業所得に分類されない可能性があります。
反対に、300万円以下であっても、帳簿書類を保存していれば、原則として事業所得にできることとなりました。なおこの改正の背景については「副業300万円問題についてわかりやすく解説」の項目で紹介します。
雑所得になるもの
雑所得は、ほかの所得に分類できない所得全般を意味します。具体的には、以下のような所得です。
- 年金、恩給、一定の外国年金などの所得
- 原稿料、講演料、シルバー人材センター、シェアリング・エコノミーなどの副収入所得
- 生命保険の年金や、暗号資産通貨取引などによる所得
- 先物取引に係る所得
参考:国税庁『所得の種類と課税方法』
副業収入に関しては、基本的にこの雑所得に分類されます。
適用は2022年から
なお、上記の事業所得・雑所得に関する法解釈の改正は、2022年から適用となります。それ以前の所得に関しては、以前の解釈が適用となるため、注意が必要です。
具体的な違いは、以下のとおりです。
- 『営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得』は業務に係る雑所得に該当する。※
- 『その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうか』が、事業所得かどうかを判断するポイントになる
- その収入が300万円超で、かつ事業所得と認められる事実がある場合を除き、帳簿書類の保存がなかった場合は、業務に係る雑所得とする
※ここでいう「資産」とは、金銭債権・外国通貨・暗号資産など、資産の値上がり益が生じないと認められる資産
300万円以下は雑所得と事業所得どっち?
「300万円以下の雑所得を、事業所得にしたい」と考える方もいるでしょう。所得の分類によって、確定申告の内容が大きく変わってしまうため、特に節税したい方にとって重要なポイントです。
では、国税庁の見解をもとに、300万円以下の副業収入が雑所得と事業所得どちらなのかを、解説します。
国税庁の見解
300万円以下の副業収入は、原則として雑所得になるとしています。判断ポイントは、以下の2つです。
- 300万円以下、主たる収入に対する割合が10%以下など、収入金額が僅少と考えられる
- その所得を得る活動が、赤字が続いていて、かつ改善の取り組みをしていないなど、営利性が認められない
上記のような所得は、事業所得になりません。300万円以下の副業収入は「収入が僅少」とされるため、事業所得に分類できないと考えるのが通例です。
また、事業所得とするには、事業性があると言えるほどの規模で活動している必要があります。
つまり、社会通念上明らかに事業性があると言える規模で、主たる収入の10%を超えており、記帳・帳簿書類も保存していて、かつ営利性が認められる場合でなければ、事業所得とは認められないのです。
LINEであなたに合った補助金を診断!
【今すぐ】あなたの事業種別・業歴・業種に合った補助金が分かる!
\5秒で自分に合う補助金を知る!/
LINEで補助金診断!
【今すぐ】あなたの事業に合った補助金が分かる!
\5秒で自分に合う補助金を知る!/
副業300万円問題についてわかりやすく解説
副業300万円問題とは、2022年の国税庁発表をきっかけとした問題です。2022年8月に、国税庁は以下のような基本通達改正案を発表しました。
- その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定すること、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が 300 万円を超えない場合には、特に反証がない限り、業務に係る雑所得と取り扱うこととします。
引用:e-Gov『「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)に対する意見公募手続の実施について』
上記から分かるように「300万円以下の副業収入は、原則雑所得」といった方針について、いわば雑所得の範囲が拡大されたような印象を受けた方が多く、以下のような意見が出ました。
- 副業推進に逆行する内容ではないか?
- 主たる所得とは何かが曖昧ではないか?
- 反証の範囲は?
- 記帳しても300万円以下なら雑所得とすると、記帳する人が減るのでは?
- 開業届を出して副業している人も雑所得するのはどうなのか?
参考:e-Gov『「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)
上記のようなパブリックコメントを受けて、国税庁は以下のように修正をしました。
- 収入金額が 300 万円以下であっても、帳簿書類の保存があれば、原則として、事業所得に区分する(社会通念上、事業性があると認められる場合に限る)
- その他、細部の修正
一番の修正ポイントは、300万円以下であっても、帳簿書類を保存していれば事業所得とすると明記された点です。これにより、収入の多くない副業ワーカーであっても、事業所得として確定申告しやすくなりました。
事業所得と雑所得どっちが得?
300万円以下の副業収入であっても、事業所得に分類できることが分かりました。
しかし、そもそも事業所得と雑所得だと、どちらで申告したほうがお得なのでしょうか?以下では、それぞれの所得で確定申告した場合のメリットとデメリットを解説します。
事業所得にした場合のメリット・デメリット
事業所得にした場合のメリットは、青色申告を利用できる点です。確定申告には青色と白色があり、青色は以下の条件を満たす場合のみ利用できます。
- 事業所得、もしくは事業規模のある不動産所得である
- その年の3月15日までに青色申告承認申請書を提出している
- 複式簿記による記帳をして提出している
- 貸借対照表と損益計算書を作成し提出している
- e-Taxで電子申請している
上記の要件を満たして青色申告をすると、以下のようなメリットがあります。
- 65万円控除を活用できる
- 赤字を3年間繰り越せる
- 青色事業専従者給与を全額経費として計上できる
- 30万円未満の固定資産を全額経費として計上できる
一方で、事業所得として青色申告するためには、複式簿記という複雑な方式による記帳が必要です。また、そもそも事前申請をしていないと、青色申告できません。
ただし、昨今は確定申告ソフトがとても使いやすくなっており、青色申告の書類も作成しやすくなりました。これから副業収入を事業所得として確定申告したい方は、事前申請をしたうえで、確定申告ソフトを導入して書類作成をするのがおすすめです。
雑所得にした場合のメリット・デメリット
雑所得にする場合、確定申告がシンプルなのがメリットです。雑所得だと、確定申告は白色一択となります。この白色申告は、青色申告に比べて書類作成が非常に簡単なので、本業が忙しい副業ワーカーでも余裕をもって確定申告ができるでしょう。
一方で、前述したような青色申告のメリットは一切利用できません。経費計上は可能ですが、少額固定資産の一括経費計上や、赤字繰り越し、専従者給与の全額経費計上といったことはできないのです。
結果として、支払う税金は青色申告65万円控除利用時と比べると、高くなってしまうでしょう。
LINE登録で3つをGET!
- 今ならLINE登録で36Pの税金・節税丸わかり資料GET!
- 税金・節税・助成金・法律など、逃しがちな情報を週2でGET!
- お金や法律の悩みをLINEで解決→事業成長をGET!
\登録者1万人超、5秒でLINE登録!/
LINE登録で3つをGET!
- 36Pの税金/節税対策資料GET!
- 税金/節税/助成金/法律… 逃しがちな情報を週2でGET!
- →事業成長をGET!
\登録者1万人超、5秒でLINE登録!/
副業収入を事業所得にする場合の注意点
副業収入を事業所得として確定申告する場合、以下の点に注意が必要です。
- その仕事は、社会通念上、事業性があると認められるか?
- ある程度の期間、継続的な収益があるか
- 継続的にある程度の時間を割いているか
- 設備などを備えていて、継続的な収入が見込めるようにしているか
- 帳簿書類を保存しているか
事業所得としたい場合は「事業性を認めてもらえるか」「帳簿書類を保存しているか」の2つが大きなポイントになります。事業性については少し曖昧ですが、継続的・安定的に収入があれば認められやすいと考えましょう。
確定申告のやり方
副業ワーカーでも、確定申告をすれば、前述したようなメリットがあります。それでは、必要書類と基本的な流れを見てみましょう。
必要書類
確定申告をするのに、以下の書類を準備しましょう。
- 本人確認書類
- マイナンバーが確認できるもの
- 口座が確認できるもの(還付金受取のため)
- 経費や控除を証明する書類(レシートや領収書など)
また、提出するのは白色申告と青色申告で異なります。
- 白色申告
- 確定申告書B
- 収支内訳書
- 法定帳簿、任意帳簿
- 青色申告(65万円控除の場合)
- 確定申告書B
- 青色申告決算書
- 貸借対照表、損益計算書
- 第三表
- 第四表
- その他、総勘定帳や仕訳帳などの保存帳簿
上記を見ると、青色申告のほうが非常に多く見えますが、確定申告ソフトを使用すれば、収入や経費などの情報を入力するだけで、すべて自動で作成してくれます。
基本的な流れ
確定申告の基本的な流れは、以下のとおりです。なお今回は、確定申告ソフトを利用した場合で紹介します。
- 必要書類を準備する
- 確定申告書を作成する
- 収入、口座の入出金状況を入力
- 経費情報を入力
- その他、控除に関する情報を入力
- 案内に沿って確定申告書を作成
- 作成した確定申告書を提出
- 所得税を納税
確定申告は、毎年2月16日〜3月15日までに行います。15日が土日祝日だった場合は、週明けが期限となります。
確定申告書の提出方法は、窓口提出・郵送・電子申請などから選択可能です。
- 所轄税務署の窓口で提出
- 所轄税務署の時間外収受ボックスに投函
- 所轄税務署に郵送
- e-Taxで電子申請
なお、65万円控除を利用する場合は、電子申請が必須なのでご注意ください。
まとめ
副業収入300万円以下だった場合の扱いについて解説しました。
300万円以下の副業収入でも、社会通念上、事業性があると認められるもので、かつ帳簿書類を保存していれば、事業所得に分類できます。
事業所得に分類できれば、最大65万円控除や赤字繰り越しなどが可能な「青色申告」を利用可能です。節税対策をしっかりとしたい方は、ぜひ活用しましょう。
本記事を参考にしながら、自分の副業は事業所得なのか雑所得なのかを正しく判断して、しっかりと確定申告・納税をしていきましょう。
- 副業収入が300万円以下でも、帳簿書類を保存していれば事業所得にできるよ!
- ただしこの法解釈は、2022年から適用となるから注意しよう
- 事業所得として申告すれば、青色申告を利用して大幅な節税ができるよ!
LINE限定の最新お役立ち情報配信中!
【実際のLINEトーク画面】
\例:個人でも利用できる補助金の情報/ \例:期日系のリマインドも!/
LINE登録1万超!3秒で登録はこちら↓↓