昨今は、「一人親方」のように個人事業主で建設業を営む人も多くいます。ただし、個人事業主として建設業を営むためには、さまざまな許可が必要です。特に「建設業許可」はさまざまな依頼を引き受けるうえで必須になるので、取得を検討している人も多いのではないでしょうか。
本記事では、個人事業主が建設業許可を取得する方法について詳しく解説します。取得条件や必要書類、提出方法なども解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
- 個人事業主でも建設業許可を取れるよ!
- 条件は取得する許可によって異なるから注意しよう
- 建設業許可要件は数年ごとに改正されているので確認してね
目次
建設業許可とは?
建設業許可とは、建設業を営むのに必要となる許可です。建設業は、軽微な建設工事以外は全て建設業許可が必要となっています。軽微な建設工事とは、以下のような作業です。
- [1]建築一式工事
- 工事1件の請負代金の額が1,500万円未満の工事または延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事
- 「木造」…建築基準法第2条第5号に定める主要構造部が木造であるもの
- 「住宅」…住宅、共同住宅及び店舗等との併用住宅で、延べ面積が2分の1以上を居住の用に供するもの
- [2]建築一式工事以外
- 工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事
参考:国土交通省『建設業の許可とは』
上記の範囲を超える作業については全て建設業許可が必要です。例えば建築一式工事でない案件であれば、工事1件の請負代金が500万円を超える場合は建設業許可が必要になります。
個人事業主でも建設業許可を取得できる
一人親方をはじめとした個人事業主でも、建設業許可を取得するのは可能です。条件を満たす必要はありますが、法人と同様の許可を得られます。ただし、個人事業主は基本的に「建築一式工事以外」の建設業許可を取得することになります。建築一式工事は、元請業者として各業者に工事を依頼するような案件のことです。
つまり、一戸建て工事に携わる場合であっても、内容によっては建築一式工事以外の建設業許可で可能となります。もし、建築一式工事の建設業許可を取得したい場合は、法人化も検討しましょう。
個人事業主が建設業許可を取得するメリット
個人事業主が建設業許可を取得した場合、受注案件の幅や社会的信用度などの面でメリットがあります。
- 500万円以上の案件を受けられる
- 法人よりも手続きが簡単
- 社会的な信用が高まる
建設業許可を取得する大きなメリットは、受注できる案件の幅が広がることです。また、法人より手続きが簡単な点や、社会的な信用が高まる点などもメリットとしてあげられます。以下では、個人事業主が建設業許可を取得するメリット3つを解説しますので、許可を取るか迷っている方は参考にしてください。
500万円以上の依頼を受けられる
個人事業主が建設業許可を取得すれば、建築一式工事以外で500万円以上の依頼を受けられるようになります。個人事業主で建設業許可を取得する人の多くは、この「500万円以上の依頼を受けたい」と考えているのではないでしょうか。
建設業許可を取得するためには、手間や費用はかかってしまいます。しかし許可を取って大型案件を受注できるようになれば、資金繰りはより好調になっていくでしょう。
法人よりも手続きが簡単
個人事業主は、法人よりも簡単な手続きで建設業許可を取得できます。建設業許可を取得するための提出書類のうち「履歴事項全部証明書」「定款」「納税証明書」は法人のみに提出義務が課されています。
個人事業主はこうした書類を提出しなくて済むので、手続きが簡単なのです(ただし、「確定申告書」「個人事業税の納税証明書」など個人事業主のみ提出する書類も有ります)。
社会的な信用度が高まる
社会的な信用度が高まるのも、個人事業主が建設業許可を取得するメリットです。建設業許可を得るためには、資金面や職歴など一定の条件を満たしている必要があります。
つまり建設業許可を取得できれば「この人は安心して契約を結べるような背景がある人だな」と思ってもらえるのです。結果として、案件をもらいやすくなるでしょう。また、建設業許可と日本政策金融公庫の融資条件は、重なっている部分も多くなります。そのため、許可を得られる状況をつくれれば、融資も受けやすくなるでしょう。
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個人事業主が建設業許可を取得するデメリット
個人事業主が建設業許可を取得するデメリットは、以下の3点です。
- 手続きの手間や費用がかかる
- 高額な依頼がなければ取得した意味が薄れる
- 決算報告書の提出義務が発生する
法人よりも少し提出書類が少ないとはいえ、建設業許可を得るには手間と時間がかかります。そのため、費用対効果や今後の案件取得状況なども加味しながら、本当に許可を得るべきか考えましょう。以下で建設業許可を取得するデメリットについて解説しますので、ぜひ取得前にご覧ください。
手続きの手間や費用がかかる
建設業許可を取得するためには、書類準備の手間がかかります。この後の項目でも解説するように、建設業許可を取得するためには、8種類の書類を準備する必要があります。また、以下のような手数料も支払わなくてはなりません。
新規申請の手数料 | 各種証明書代 | |
大臣許可 | 150,000円 | 約3,000円 |
知事許可 | 90,000万円 | 約3,000円 |
さらに申請を行政書士に依頼する場合は、別途20〜30万円の手数料が発生します。自分でやる場合は、各種証明書を発行したり書類を記入したりと数週間ほどの時間がかかるでしょう。このように、たくさんの手間・時間・費用がかかるのは建設業許可を取得するうえでの大きなデメリットです。
なお、自己資金が少なく許可がもらいにくかったり、申請費用を出すのが厳しかったりしたら、ファクタリングなどで資金調達をするのがおすすめです。弊社ペイトナーでは、報酬を受け取る権利「売掛債権」を買い取り、早期に現金化するサービス「ペイトナーファクタリング」をご提供しています。請求書を発行してから報酬を受け取るまでのタイムラグにお悩みの方は、ぜひ利用を検討してみてください。
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高額な依頼がなければ取得した意味が薄れる
建設業許可を持っていないと受けられない依頼をもらえなければ、建設業許可を取得した意味が薄れてしまいます。建設業許可を取得すると、5年に1度5万円をかけて更新しなくてはなりません。取得費用のほかに更新費用もかかるので、500万円を超える建設業許可が必須の案件を受注できないと、経費負担が重くなってしまうでしょう。
決算報告書の提出義務が発生する
建設業許可を取得した場合、個人事業主であっても、事業年度が終了してから4か月以内に決算報告書を提出しないといけません。建設業許可を取得しなければ、確定申告だけで済むので、かなり手間が増えてしまうといえます。コスト面だけでなく、継続的に事務作業が増えてしまうのも、建設業許可を取得するデメリットといえるでしょう。
建設業許可の種類
建設業許可にはさまざまな種類があり、条件によって必要となる許可が異なるので注意が必要です。
- 建築一式工事・専門工事
- 建築一式工事・専門工事
- 大臣許可・知事許可
建設業許可には「建築一式工事・専門工事」や「一般建設業・特定建設業」などによって異なります。それぞれがどういった区分なのかを理解したうえで、建設業許可の種類を理解しましょう。
建築一式工事と専門工事
まずは「建築一式工事・専門工事」について解説します。
業種 | |
建築一式工事 | 土木一式工事・建築一式工事 |
専門工事 | 土木工事業・建築工事業・大工工事業・左官工事業・とび/土工/工事業・石工事業・屋根工事業・電気工事業・管工事業・タイル/れんが/ブロック工事業・鋼構造物工事業・鉄筋工事業・ほ装工事業・しゅんせつ工事業・板金工事業・ガラス工事業・塗装工事業・防水工事業・内装仕上工事業・機械器具設置工事業・熱絶縁工事業・電気通信工事業・造園工事業・さく井工事業・建具工事業・水道施設工事業・消防施設工事業・清掃施設工事業・解体工事業 |
建築一式工事は、専門工事の内容をいくつか組み合わせたような作業を指します。対して専門工事は何かひとつの業務を専門的に行うものです。建築一式工事の建設業許可を取得していても、専門工事を行う場合は別の許可が必要になるケースがあるので注意してください。
一般建設業と特定建設業
続いて「一般建設業・特定建設業」の違いを見てみましょう。
一般建設業 | 下記以外のもの |
特定建設業許可 | 発注者から直接請け負った1件の工事代金について、4,500万円(建築工事業の場合は7,0000万円)以上となる下請契約を締結する場合 |
つまり、自分が元請として、下請け会社と4,500万円以上の契約を締結する場合は、特定建設業の許可が必要になります。なお、特定建設業許可の条件は2023年1月1日に変更されましたので、ご注意ください。
大臣許可と知事許可
大臣許可と知事許可の違いは、営業所の設置状況です。
大臣許可 (国土交通大臣) | 二以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業しようとする場合 |
知事許可 (都道府県知事) | 一の都道府県の区域内のみに営業所を設けて営業しようとする場合 |
ひとつの営業所で事業を営んでいる個人事業主であれば、都道府県知事の許可を得られれば問題ありません。逆に、2以上の都道府県で営業所を設けている場合は、大臣許可が必要になるので注意しましょう。
建設業許可の取得要件
建設業許可を取得するためには、いくつかの条件を満たしている必要があります。具体的には、経営・技術者・財産的基礎の3つの条件を満たさないと許可が得られません。
- 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者
- 専任技術者
- 誠実性
参考:国土交通省『許可の要件』
以下では、それぞれの詳しい条件を解説するので、建設業許可を取得する際の参考にしてください。
建設業に係る経営業務の管理
一つ目の条件は、建設業の経営管理に関する条件です。具体的には、以下2つを証明する必要があります。
- 経営業務の管理責任者等の設置
- 適正な社会保険への加入
経営業務の管理責任者とは、建設業という他業種とは異なる特徴を有する形態のビジネスについて、専門的な管理能力を有する人のことです。具体的には、以下のような条件を満たす人をいいます。
- 建設業の経営業務の管理責任者として5年以上の経験がある人
- 設業にの経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として5年以上の経験がある人
- 建設業の経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に6年以上従事した経験がある人
- 建設業の役員として2年以上、さらに合わせて5年以上にわたり役員等または役員に次ぐ地位での経験がある人
- 建設業の役員として2年以上、さらに合わせて5年以上にわたり役員としての経験がある人
参考:国土交通省『許可の要件』
上記の条件を満たす人を1人設置するのが、建設業務の管理責任者の設置に関する条件です。さらに「適性な社会保険への加入」として、以下の条件も満たす必要があります。
- 健康保険、厚生年金保険:適用事業所に該当する全ての営業所について、その旨を届け出ていること
- 雇用保険:適用事業の事業所に該当する全ての営業所について、その旨を届け出ていること
なお従業員を雇っていない個人事業主、また従業員4人以下の個人事業主であれば、事業主として社会保険に加入していなくても問題ありません。
専任技術者の設置
専任技術者とは、建設工事に関する専門知識があって、適切な契約の締結および履行を行える人物です。専任技術者になる条件は、一般建設業と特定建設業で異なります。
- 指定学科修了者で高卒後5年以上若しくは大卒後3年以上の実務の経験を有する者
- 指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務の経験を有する者又は専門学校卒業後3年以上実務の経験を有する者で専門士若しくは高度専門士を称する者
- 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、10年以上実務の経験を有する者
- 国家資格者
- 複数業種に係る実務経験を有する者
参考:国土交通省『許可の要件』
- 国家資格者
- 指導監督的実務経験を有する者
- 大臣特別認定者:建設省告示第128号の対象者
参考:国土交通省『許可の要件』
誠実性
誠実性とは、安定した経営を行って適切に契約を履行できるだけの状況が整っているかを判断するための条件です。誠実性に関しては、一般建設業と特定建設業とで条件が異なります。
- 自己資本が500万円以上である
- 500万円以上の資金調達能力を有する
- 許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有する
参考:国土交通省『許可の要件』
- 欠損の額が資本金の20%を超えていない
- 流動比率が75%以上である
- 資本金の額が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上である
参考:国土交通省『許可の要件』
上記をみて分かるように、誠実性の条件は特定建設業のほうが重く設定されています。これは特定建設業は基本的に下請け業者を使用することや、下請負人は一定期間内に下請代金を支払う義務があることなど、安定した経営基盤が必要だからです。特定建設業を営む場合は、条件を満たせるよう注意しましょう。
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個人事業主が建設業許可を取得するための手続き方法・流れ
個人事業主が建設業許可を取得する際には、まず各要件を満たせるようにしたうえで、必要書類を提出する必要があります。なお個人事業主の場合は、自分一人が「経営業務の管理責任者」や「専任技術者」の条件を満たしていれば問題ありません。
条件を満たしていれば、以下の内容を参考にして書類提出を行いましょう。以下では、必要書類や提出先などを詳しく解説します。
提出書類の準備
個人事業主が建設業許可を取得する場合、以下の書類が必要になります。
- 身分証明書
- 登記されていないことの証明書
- 社会保険の領収書
- 財産要件に関する書類
- 経営業務の管理責任者、専任技術者になる方の健康保険証
- 営業所の写真
- 直近の確定申告書
- 個人事業税の納税証明書
なお個人事業税は、事業所得金額が290万円以下であれば免税になります。個人事業税が免税の場合、税務署にて「申告所得税の納税証明書その(2)」を発行してもらいましょう。申告所得税の納税証明書は税務署でしか発行できず、都道府県税事務所では発行できませんのでご注意ください。
なお提出書類は「建設業許可+書類+(地名)」などで検索をすると、一覧のページが探せるかと思います。例えば東京都であれば東京都都市整備局のこちらのページにまとめられていますので、ご覧ください。
建設業許可の申請先
建設業許可関連の書類提出先は、大臣許可か知事許可かによって異なります。
大臣許可 | 知事許可 | |
提出先 | 本店所在地を管轄する地方整備局長等 | 都道府県知事 |
提出部数 | ・正本1部 ・副本1部 | 各都道府県が定める数 |
大臣許可に関しては、国土交通省の許可行政庁一覧表にて問い合わせ先を確認できます。都道府県については、土木事務所や行政庁主管課などが受付担当をしているので、提出時に問い合わせましょう。
建設業許可に関する2023年(令和5年)の変更点
建設業許可に関しては、状況にあわせて随時制度の変更がされています。2023年(令和5年)の変更は、以下のとおりです。
- 一般建設業許可の営業所専任技術者要件が緩和
- 特定建設業許可に関する下請代金額下限の変更
- 解体工事の技術者要件に係る経過措置の終了
過去に建設業許可について調べていた人は、既に情報が古くなっているかもしれません。以下では、直近の変更点について解説しますので、ぜひ参考にしてください。
一般建設業許可の営業所専任技術者要件が緩和
2023年5年7月1日に施行された建設業法施行規則の改正により、一般建設業許可に関して専任技術者の要件が緩和されました。指定学科を卒業せずとも、以下の施工管理技士試験に合格+実務経験で要件を満たせるようになったのです。
検定種目 | 試験学科 |
土木・造園工事施工管理技士 | 土⽊⼯学 |
建築施工管理 | 建築学 |
電気工事施工管理 | 電気光学 |
管工事施工管理 | 機械工学 |
なお、各条件において必要とされる実務経験は以下のように変更されています。
学歴 | 実務経験 |
大学、短大等(指定学科) | 卒業後3年 |
高等学校(指定学科) | 卒業後5年 |
1級1次検定合格(対応種目) | 卒業後3年 |
2級1次検定合格(対応種目) | 卒業後5年 |
上記以外 | 10年 |
なお指定建設業および電気通信工事業は除きますので、ご注意ください。
特定建設業許可に関する下請代金額下限の変更
特定建設業許可に関して、許可等が必要となる下請代金額・請負代金額の下限が変更となりました。
改正前 | 改正後 | |
特定建設業の許可・監理技術者の配置・施工 体制台帳の作成を要する下請代金額の下限 | 4,000万円 (6,000万円) | 4,500万円 (7,000万円) |
主任技術者及び監理技術者の専任を要する 請負代金額の下限 | 3,500万円 (7,000万円) | 4,000万円 (8,000万円) |
特定専門工事の下請代金額の上限 | 3,500万円 | 4,000万円 |
今回の改正によって、昨今の工事費上昇に対応しやすくなりました。
まとめ
個人事業主が建設業許可を取得する方法を解説しました。建設業許可にはさまざまな種類があるので、まず自分はどの許可を取るべきなのかをきちんと確認しましょう。また、都道府県ごとに提出書類が異なる場合がありますので、ご注意ください。本記事の内容が、個人事業主の方が建設業を営むうえで、何かの参考になれば幸いです。
- 個人事業主でも建設業許可を取れるよ!
- 条件は取得する許可によって異なるから注意しよう
- 建設業許可要件は数年ごとに改正されているので確認してね
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