ファクタリングの契約では、売掛債権を買い取る条件として債権譲渡登記を求められる場合があります。
債権譲渡登記はすべての契約に必要な手続きではなく、法人が金銭債権を譲渡したことを売掛先以外の第三者へ主張するための制度です。
登記の有無だけで判断せず、登録免許税や証明書の取得費、司法書士への報酬を誰が負担するのかまで契約前に確認する必要があります。

登記が必要かどうかは契約ごとに違うよ。費用と通知の条件まで確認してから契約しよう。必要事項は契約書で確かめるのが大切だよ!
債権譲渡登記は法人の金銭債権譲渡を第三者へ主張する制度
法務省の債権譲渡登記制度の案内では、法人がする金銭債権の譲渡などについて、債務者以外の第三者に対する対抗要件を備える制度と説明されています。
第三者対抗要件とは、同じ債権を別の人も取得した場合などに、自分が債権を譲り受けた事実を相手へ主張するための条件です。
登記をすると、確定日付のある証書で売掛先へ通知した場合と同じように、売掛先以外の第三者へ譲渡の事実を主張できます。
同じ債権の二重譲渡・差押えなどで優先関係を示す
売掛債権が複数の相手へ譲渡された場合、譲受人同士でどちらが優先するかが問題になります。
売掛債権が差押えを受けた場合や、譲渡人が破産した場合も、譲受人、差押債権者、破産管財人の間で権利関係を明確にする必要があります。
債権譲渡登記には年月日だけでなく時刻も記録されるため、登記の先後を確認できます。
ファクタリング会社は、買い取った売掛債権について第三者対抗要件を先に備えることで、二重譲渡などのリスクに対応します。
登記だけでは売掛先への請求要件を満たさない
登記で備えられるのは、原則として売掛先以外の第三者に対する対抗要件です。
登記をしただけでは、ファクタリング会社が売掛先へ債権の譲受人であると主張し、支払いを請求するための債務者対抗要件を満たしません。
法務省の債権譲渡登記に関するQ&Aでも、売掛先に譲渡の事実を主張するには、譲渡人または譲受人が登記事項証明書を交付して通知するか、売掛先から承諾を得るなどの対応が必要と説明されています。
第三者対抗要件と債務者対抗要件は相手と目的が異なるため、分けて確認しましょう。
ファクタリングで債権譲渡登記が必要になるケース
ファクタリングで登記を行うかどうかは、契約内容と対抗要件を備える方法によって決まります。
登記を求められやすい場面を確認します。
ファクタリング会社が第三者対抗要件を登記で備える
ファクタリング会社は、買い取った売掛債権が別の会社へ二重に譲渡された場合や、差押えを受けた場合に備えて第三者対抗要件を確保します。
売掛先へ通知せずに要件を備える方法として、債権譲渡登記を契約条件に含める場合があります。
多数の債権をまとめて譲渡する
法人が多数の金銭債権を一括で譲渡するとき、すべての債務者へ確定日付のある証書で通知する方法では、手続きと費用の負担が大きくなります。
債権譲渡登記は、複数の債権を1件の申請にまとめて公示できるため、一括譲渡にも使われます。
契約で登記を条件としている
ファクタリング契約に、債権譲渡登記を申請することや、必要に応じて登記できることが定められている場合があります。
申込時の説明だけでなく、契約書の「対抗要件」「債権譲渡登記」「費用負担」などの条項を確認してください。
契約条件として登記が必要なら、誰が司法書士へ依頼するのか、いつ申請するのか、登録免許税や報酬を誰が支払うのかを契約前に書面で確認します。
説明と契約書の内容が異なる場合は、署名や同意をする前に質問しましょう。
登記を使わず通知・承諾で対抗要件を備える場合もある
確定日付のある証書による売掛先への通知や、売掛先の承諾によって対抗要件を備える方法もあります。
3社間ファクタリングで売掛先が契約に関与する場合や、契約で通知方法を定める場合は、登記を行わないことがあります。
債権譲渡登記はすべてのファクタリングに必要ではない
ファクタリングを利用するたびに債権譲渡登記が義務付けられているわけではありません。
登記をしない契約もあり、登記の代わりに通知や承諾で対抗要件を備える場合もあります。
2者間・3者間だけでは登記の要否は決まらない
2社間ファクタリングでは売掛先を契約に含めないため、登記を使う場合があります。
一方で、2社間でも登記を行わない契約があり、3社間でも契約条件や債権の状況に応じて確認事項が変わります。
契約方式と対抗要件の取り方を確認する
見積書や契約書を受け取ったら、登記の有無、登記の時期、売掛先への通知、承諾の取得、登記留保の条件を確認します。
登記をしない場合も、対抗要件をどの方法で備えるのかを尋ねると、契約後の対応を把握できます。
2社間と3社間の仕組みや契約当事者について知りたい人は、下記の記事も参考になります。
法人と個人事業主では債権譲渡登記の扱いが異なる
債権譲渡登記の譲渡人になれるのは法人です。
法人と個人事業主の違いを以下の表で確認します。
区分債権譲渡登記確認する方法法人金銭債権の譲渡人として利用できる登記、通知、承諾など個人事業主同制度の譲渡人として利用できない通知、承諾など別の方法
法人は金銭債権の譲渡人として登記を利用できる
株式会社や合同会社などの法人が金銭債権を譲渡する場合は、債権譲渡登記を利用できます。
対象となるのは金銭の支払いを目的とする債権で、債務者がまだ特定していない将来債権も一定の条件で登記の対象になります。
個人事業主は同制度の譲渡人として登記を利用できない
個人事業主は、債権譲渡登記制度の譲渡人になれません。
これは登記制度の対象が法人による金銭債権の譲渡に限られているためです。
個人事業主が債権譲渡登記を利用できないことは、売掛債権を譲渡できないという意味ではありません。
個人事業主向けのファクタリングはあり、契約先が定める方法で債権譲渡と対抗要件の手続きを進めます。
個人事業主は通知・承諾など別の方法を確認する
個人事業主がファクタリングを契約するときは、売掛先への通知や承諾など、登記以外の方法を確認します。
通知の時期や内容は取引先との関係にも影響するため、契約先や司法書士、弁護士などへ確認してください。
売掛先に知られずにファクタリングを利用する方法と注意点を確認したい人は、下記の記事も参考になります。
債権譲渡登記にかかる費用
債権譲渡登記では、法令で決められた登録免許税のほか、証明書の取得、郵送、司法書士への依頼などに費用がかかる場合があります。
登録免許税とその他の費用を分けて確認しましょう。
| 登記の種類 | 登録免許税 |
|---|---|
| 債権譲渡登記(債権5,000個以下) | 1件7,500円 |
| 債権譲渡登記(債権5,000個超) | 1件15,000円 |
| 延長登記 | 1件3,000円 |
| 抹消登記・一部抹消登記 | 1件1,000円 |
債権5,000個以下の登録免許税は1件7,500円
法務省の添付書面・登録免許税の案内によると、1件の申請に含まれる債権の個数が5,000個以下の場合、登録免許税は7,500円です。
債権1個ごとに7,500円ではなく、登記の申請1件ごとに課されます。
5,000個を超える場合は1件15,000円
1件の申請に含まれる債権が5,000個を超える場合、登録免許税は15,000円です。
多数の債権をまとめるケースで使われる区分であり、一般的な請求書1件の買い取りで自動的に15,000円になるわけではありません。
延長登記は3,000円・抹消登記は1,000円
登記の存続期間を延ばす延長登記の登録免許税は1件3,000円です。
債権譲渡登記を消す抹消登記または一部抹消登記は、1件1,000円です。
証明書取得・司法書士依頼など別費用も確認する
登録免許税とは別に、登記事項証明書などの交付手数料、郵送料、申請データの準備費用、司法書士へ依頼する場合の報酬が発生することがあります。
司法書士報酬は一律ではないため、金額を決めつけず個別の見積もりで確認します。

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債権譲渡登記を申請する流れ
債権譲渡登記は、全国の登記を扱う東京法務局民事行政部債権登録課へ申請します。
実際の申請では、公開時点の法務省ページで様式、申請データの仕様、添付書面を確認してください。
譲渡人と譲受人が共同で申請する
債権譲渡登記は、債権を譲る法人と、債権を譲り受けるファクタリング会社などが共同で申請します。
司法書士が代理で申請する場合は、代理権限を示す委任状などが必要です。
申請データと添付書面を準備する
書面方式による債権譲渡登記では、登記申請書、添付書面、申請データを準備します。
申請データには、譲渡人と譲受人、対象となる債権、登記の存続期間などの情報を記録します。
オンラインまたは書面で申請する
申請方法には、オンライン方式、事前提供方式、書面方式があります。
書面方式では窓口への持参または送付で提出し、オンライン方式では申請用総合ソフトなどを使って申請します。
登記事項証明書を取得・保管する
登記後は、必要に応じて登記事項証明書を取得します。
登記事項証明書は個々の債権に関する登記事項を記載するもので、請求できるのは当事者、債務者、その他の利害関係人などです。
売掛先への通知に証明書を使う場合があるため、交付方法と保管担当者も決めておきます。
法務省の証明書交付請求の手続で、オンライン請求と書面請求の違いを確認できます。
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債権譲渡登記のメリットとデメリット
債権譲渡登記は、売掛先を契約に関与させずに第三者対抗要件を備えられる一方、費用や情報公開の面に注意が必要です。
登記で得られる効果と得られない効果を分けて確認します。
売掛先を関与させず第三者対抗要件を備えられる
登記を使えば、第三者対抗要件を備える時点で売掛先の通知や承諾を必要としません。
売掛先を契約に含めない2社間ファクタリングでは、ファクタリング会社が権利を守る方法のひとつになります。
多数の債権をまとめて公示できる
多数の売掛債権を譲渡するとき、債権ごとに売掛先へ通知する代わりに、複数の債権をまとめて登記できます。
債務者が多い一括譲渡で、第三者対抗要件を備える手続きを進めやすい点がメリットです。
登録免許税などの費用がかかる
登記には登録免許税がかかり、司法書士報酬や証明書の取得費なども発生する場合があります。
ファクタリングの手数料とは別に負担すると、受け取れる金額が想定より少なくなる可能性があります。
登記事項概要証明書は誰でも請求できる
登記事項概要証明書は誰でも請求できます。
ただし、証明書には債務者名など個々の債権を特定する情報は含まれません。
個々の債権の内容を記載した登記事項証明書は、当事者や債務者、その他の利害関係人など請求できる人が限られます。
債権譲渡登記は信用情報機関への登録とは別の制度です。
登記をしたことが、借入れに関する信用情報として信用情報機関へ自動登録されると混同しないようにしましょう。
登記後も売掛先への通知・承諾が必要な場面がある
ファクタリング会社が売掛先へ譲受人として支払いを求める場合、登記だけでは足りません。
登記事項証明書を交付した通知や、売掛先の承諾などによって債務者対抗要件を備える必要があります。
登記をした時点では売掛先へ自動通知されませんが、契約違反などが起きた後に通知される条件が定められている場合があります。
通知の条件と時期を契約書で確認してください。
登記は債権の実在・譲渡の真正を公的に証明するものではない
債権譲渡登記は、対象となる売掛債権が実際に存在することや、譲渡契約が有効に成立したことを公的に証明する制度ではありません。
共同申請によって登記されても、虚偽の債権や消滅済みの債権が実在するものに変わることはありません。
ファクタリング会社は、請求書、契約書、入出金の記録などを審査して売掛債権を確認します。
登記の有無と、債権の内容を確認する審査は別の手続きです。
ファクタリング利用時の会計処理や仕訳も確認したい人は、下記の記事も参考になります。
ファクタリング契約で登記について確認する項目
契約前には、登記の条件、費用、抹消、売掛先への通知を確認します。
口頭説明だけで済ませず、契約書と見積書に記載されている内容を照合してください。
登記を行う条件とタイミング
契約締結と同時に登記するのか、審査結果によって登記するのか、一定の事由が起きるまで登記を留保するのかを確認します。
登記留保の場合は、二重譲渡、支払遅延、契約違反など、登記へ切り替わる条件も確認が必要です。
登録免許税・証明書・専門家費用の負担者
登録免許税、証明書の交付手数料、郵送料、司法書士報酬を誰が負担するか確認します。
申込者が負担する場合は、ファクタリング手数料を含む支払総額と、売掛債権の額面から差し引かれる金額を見積書で確かめましょう。
契約終了後の抹消登記と費用負担
売掛金の回収や契約終了だけで、登記が自動的に抹消されるとは限りません。
抹消登記を申請する条件、申請する人、申請時期、登録免許税と司法書士報酬の負担者を確認します。
売掛先への通知・承諾の条件
売掛先へ通知する時期、通知する人、通知に登記事項証明書を添えるか、売掛先の承諾をいつ得るかを確認します。
2社間ファクタリングでも、契約違反や支払いの遅れが起きた場合に通知する条項が含まれることがあります。
ファクタリング契約で確認する書類と条項を詳しく知りたい人は、下記の記事も参考になります。
契約後のトラブル事例と対策を確認したい人は、下記の記事も参考になります。

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債権譲渡登記に関するよくある質問
登記なしのファクタリングは違法ですか?
債権譲渡登記をしないだけで、ファクタリングが違法になるわけではありません。
通知や承諾など別の方法で対抗要件を備える場合もあり、契約によって登記を行わないことがあります。
ファクタリングの合法性や違法な契約の見分け方を知りたい人は、下記の記事も参考になります。
個人事業主でも登記されますか?
個人事業主は債権譲渡登記制度の譲渡人になれません。
ただし、個人事業主でも売掛債権をファクタリング会社へ譲渡できます。
契約先が通知や承諾など、どの方法で対抗要件を備えるか確認してください。
登記すると取引先に自動で通知されますか?
登記を申請しただけで、売掛先へ自動的に通知されるわけではありません。
ファクタリング会社が売掛先へ譲渡の事実を主張するには、登記事項証明書を交付した通知や売掛先の承諾などが必要です。
一方で、登記事項概要証明書は誰でも請求できます。
個々の債権を特定する情報は記載されませんが、登記の事実が絶対に知られないとは断定できません。
契約終了後は必ず抹消しますか?
契約終了後に必ず自動で抹消されるとは限りません。
抹消が必要になる条件や申請時期は契約内容によって異なるため、契約書の抹消条項を確認してください。
抹消登記を行う場合の登録免許税は1件1,000円です。
司法書士へ依頼する場合は別に報酬がかかるため、契約終了後の負担者まで確認しましょう。
まとめ
債権譲渡登記は、法人が金銭債権を譲渡した事実を売掛先以外の第三者へ主張するための制度であり、すべてのファクタリングに必要な手続きではありません。
個人事業主は同制度の譲渡人になれませんが、通知や承諾など別の方法で対抗要件を備えてファクタリングを利用できます。
契約前に、登記の条件と時期、登録免許税や専門家費用の負担、契約終了後の抹消、売掛先への通知を確認しましょう。
登記だけでは売掛先への請求要件を満たさず、債権の実在や譲渡の有効性を公的に証明するものでもない点に注意が必要です。

- 登記は法人の金銭債権譲渡で第三者対抗要件を備える方法だよ!
- 登記費用と抹消費用を誰が負担するか契約前に確認しよう。
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