法人化による節税メリット9選|個人事業主が知るべき会社設立の最適タイミングとは

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法人化で節税メリット9選!個人事業主が知るべき会社設立の最適タイミング

個人事業主として働いていると、「法人化」を考える方も多いでしょう。しかし、そのメリットを理解している方は意外に少ないのではないでしょうか?

今回は、会社設立に伴って得られる節税効果や法人化すべき時期などについて解説します。個人事業主の皆さんにとって、法人化はビジネスを次のステップに進める重要な選択肢となります。ここからは、そのメリットや法人化の最適なタイミングについて、詳しく掘り下げていきましょう。

やっぷん
  • 法人化すると、個人事業主では使えない所得控除で節税できるよ!
  • 同じ経費であっても、法人のほうが経費にできる範囲や金額が多いんだ!
  • 法人化するタイミングは、消費税課税事業者に該当する売上1,000万円もしくは課税所得が800万円前後がおすすめだよ!

会社を設立すると得られる節税効果は?

会社を設立すると、個人事業主にはない節税のメリットがたくさん得られます。まずはどのような節税効果があるのかを知っておきましょう。

給与所得控除

個人事業主との大きな違いとして、給与所得控除の特典があります。個人事業主の収入は事業所得にあたるので、収入から経費を差し引いた額にそのまま課税される仕組みです。

しかし、会社を設立し社長になると得ることになる「役員報酬」は、給与所得に区分されます。すると、給与所得控除として、所得から55〜195万円を控除することができます。これは個人事業主が使える青色申告控除(最大65万円)と比べると控除額が大きくなることが多く、節税効果も高くなります。

家族と所得を分散して節税

家族に所得を分散する方法も、法人ならでは節税対策です。

まず、給与を受けた者それぞれに対し給与所得控除が適用されるため、全体の課税所得額自体を減らすことができます。また、所得税の税率は、累進課税制度により、高所得者ほど高い税率が適用されます。そのため、社長である自分に報酬を集中させるよりも、家族を役員または社員として給与を分散させるほうが、最終的な税額は少なくなるというわけです。

ちなみに、個人事業主の場合でも、似たような制度として「青色事業専従者給与」という方法があります。これは、家族を青色事業専従者とすることにより、支払った報酬を経費として節税できる制度です。ただし、利用するには勤務期間や年齢等の要件が厳しいため、法人として所得を分けるほうが簡単でしょう。

退職所得の税制優遇が受けられる

退職金は、通常の給与に比べて税金の面で優遇されています。そのため、退職金を上手く活用することで、節税に繋がるのです。退職金は、会社側にも受け取る側にもメリットがあります。まず、受け取る側のメリットは次の3つです。

会社側が退職金を出すメリット
  1. 退職所得控除が受けられる
  2. 課税金額が少ない
  3. 分離課税である

1つ目は、退職所得控除が受けられることです。控除額は勤続年数×40万円で、この範囲内であれば税金がかかりません。2つ目は、課税金額が少ないことです。退職所得控除を差し引いたあとの2分の1しか課税されないため、かかる税額も少なくなります。ただし、この特典については勤続年数5年以下の場合、適用がないので注意しましょう。3つ目は、分離課税であることです。他の所得と合算して課税されないため、低い税率が適用されます。

こうした役員や従業員側のメリットは受け取る対象が家族従業員でも適用されるので、世帯の税金対策にもなるでしょう。そして、会社側のメリットとしては、退職金を経費にできることです。ただし、退職金として不当に大きな額とみなされれば税務署に否認されるので、あくまで適正な範囲内で活用しましょう。

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配偶者控除・扶養控除が受けられる

個人事業主の中には、家族を「青色専従者」として節税対策をしている方も多いでしょう。家族に「青色専従者給与」として給与を払うことで、差し引く経費を増やすことができます。ただし、この青色専従者給与を支払った家族は、配偶者控除や扶養控除の対象外になるというデメリットもあります。

しかし、法人化して会社から家族に給与を支払う形にすれば、こうした控除も受けられるようになります。なぜなら、個人事業主は「個人」から給与を支払うのに対し、法人は別人格である「会社」から家族に給与が支払われるからです。社長個人から家族に給与を払うとみなされないため、控除を受けることができるのです。

赤字の繰り越し期間が長い

法人になると、赤字の繰り越し期間が個人事業主よりも長くなります。「赤字の繰り越し」とは、事業で出た損失を翌年以降の利益から差し引くことです。

個人事業主で青色申告をしている場合、以後3年間の繰り越しが認められますが、法人の場合は最長10年間の繰り越しができます。

法人保険ならではの節税効果

会社を設立すると、保険も、法人を契約者とした法人保険に加入することになるでしょう。そして、法人で加入する保険は、個人保険よりも節税効果が高い傾向にあります。なぜなら、損金算入できる保険料の額が大きいからです。個人保険の場合も、所得から、払込み保険料に応じて控除できる「生命保険料控除」という制度があります。

ただし、これについては年間で最大12万円しか控除できず、節税効果は低いです。

一方、法人保険の場合、保険種類によっては保険料の全額が損金参入できることもあります。2019年の税制改正以降損金算入できる金額は減りましたが、上手に保険選びをすれば、保障と同時に大きな節税効果が得られるでしょう。

減価償却の節税効果が高い

法人化すると、減価償却が有利にできるのもメリットです。減価償却とは、車両や建物、備品等の「減価償却資産」の価値が減るごとに、費用に計上していく手続きのことです。減価償却の方法には「定額法」と「定率法」があり、基本的に個人は定額法、会社は定率法を採用します。定額法が毎年一定の減価償却費を計上するのに対し、定率法は初年度に多くの費用を計上します。

そのため、会社を設立し低率法で減価償却手続きをするほうが、節税効果が高いというわけです。

経費にできるものが多い

法人になると、個人事業主よりも経費として差し引けるものが増えます。また、個人で経費にできるものでも法人として経費にしたほうが有利になるので、知っておきましょう。

社宅の家賃

社宅をつくることは、法人ならではの節税対策です。個人事業主の場合、自宅の家賃等は事業用の部分のみしか経費にならず、居住用とみなされれば経費として認められません。しかし法人の場合、居住用の家賃も「社宅」であれば経費計上できるのです。

社宅といっても大規模である必要はなく、法人で社宅を借りて役員や従業員に貸し付ければ、小規模でも社宅として認められます。ただし、経費計上するには、従業員が一定の賃料を支払う必要があるので気をつけましょう。経費にできる金額は、会社が支払った賃料から、受け取った家賃を引いた額です。

個人事業主の場合、車も家賃と同様に「業務に使用した割合」だけを経費計上できます。しかし、この業務利用割合はかなり曖昧なので、証明に苦労するのが現実です。一方、法人の車の場合、車にかかるほぼ全ての費用が経費になります。具体的には、以下の費用が例として挙げられます。

経費になる費用の例
  • ガソリン代
  • 保険料
  • 車検費用
  • 自動車税
  • 高速料金

また、先ほども述べた通り、車両は減価償却資産なので、購入費用も経費にできます。このように、車は個人よりも会社名義で所有するほうが、圧倒的に得だと言えます。

出張手当

出張手当とは、従業員が出張するときの交通費や食費、宿泊費などについて、個別で支給せずに一律で支給するものです。この手当については、その出張について妥当と認められる金額であれば、全て損金算入できます。

一方、個人事業主の場合、出張にかかる費用を「出張手当」として一律で支給し、損金参入することは認められません。交通費、接待費など項目ごとに細かく経費計上し、業務との関連性の証明をします。その手間と金額を加味すれば、会社から出張手当として一括で支給するほうが、楽で効率的な節税方法と言えるでしょう。

消費税が2年間免除される

消費税は、前々年の売上が一定額に達した場合に課税されます。つまり、開業後もしくは会社設立後2年間は、非課税事業者になるということです。そのため、個人事業主として一定の売上に達した場合でも、課税事業者になる前の年に法人化すれば非課税期間を延ばすことができます

法人と個人事業主は完全に別々の事業者とみなされるので、法人化する前々年の売上は消費税の課税事業者の判定には関係ありません。

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      いつ会社設立を検討すべき?

      ここまでで、会社設立のメリットについておわかりいただけたかと思います。そこで迷うのが、「いつ法人化すべきか?」ということですよね。ここからは、会社設立を検討するのに最適な時期や収入の目安をお伝えします。

      個人事業主として消費税納税義務が出たとき

      先ほども述べたとおり、個人事業主は前々年の売上高が一定額を超えると、消費税の納税義務が生じます。

      しかし、そのタイミングで会社設立をすれば、新しい法人としてさらに最大2年間は、納税が免除されます。この場合、個人事業主のときとは全く別の事業者として扱われるため、過去に上がった売上については課税事業者の判断基準から省かれます。

      納税義務者となる課税売上の基準は以下の通りです。

      納税義務者となる課税売上の基準
      1. 前々年の課税売上高が1,000万円を超える
      2. 前々年の課税売上高が1,000万円以下で、前年の前半6ヶ月の課税売上が1,000万円を超える

      つまり、課税売上が1,000万円を超えたときが、法人化を検討するのに良い時期と言えるでしょう。ただし、法人として免税事業者となるためには、設立時の資本金が1,000万円未満などの要件があるので確認しておきましょう。

      所得が一定の金額に達したとき

      個人事業主が法人化するのに、節税の観点から最適と言われる所得の額は、800万前後です。なぜなら、個人の所得税率と法人税率が逆転する分かれ目だからです。

      所得税率は以下の通りです。

      課税所得税率
      課税所得金額税率税額控除
      1,000円~1,949,000円5%0円
      1,950,000円~3,299,000円10%97,500円
      3,300,000円~6,949,000円20%427,500円
      6,950,000円~8,999,000円23%636,000円
      9,000,000円~17,999,000円33%1,536,000円
      18,000,000円~39,999,000円40%2,796,000円
      40,000,000円以上45%4,796,000円

      所得が695万円〜900万円未満の場合は所得税率が23%、900万円超は33%に上がります。一方、法人税率は、普通法人の場合所得800万円までは15%で、それを超える部分には23.2%の税率が適用となります。

      ここで、課税所得800万円の場合の税額を計算してみましょう。

      課税所得800万円の場合の税額
      • 個人の場合:800万円×23%ー63万6,000円=120万4000円
      • 法人の場合:800万円×15%=120万円

      以上のようになり、法人にしたほうが少しだけ税額が少なくなります。

      実際に税額を算出する際はより複雑になりますが、800万円前後が損益の分岐点となることがわかりますね。ただし、注意点があります。各種控除額や住民税額などは個人や地域ごとに異なりますし、法人設立のための費用も加味して考えなければなりません。

      あくまで800万という金額は目安なので、600万円を超えたあたりから、税理士などに依頼してシュミレーションしてみるとよいでしょう。

      まとめ

      以上のように、会社を設立すると税金のメリットがたくさんあり、長期的に見れば支払う税額も大きく変わってくるでしょう。

      事業が軌道に乗ってきたら、ぜひ前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

      やっぷん
      • 法人化すると、個人事業主では使えない所得控除で節税できるよ!
      • 同じ経費であっても、法人のほうが経費にできる範囲や金額が多いんだ!
      • 法人化するタイミングは、消費税課税事業者に該当する売上1,000万円もしくは課税所得が800万円前後がおすすめだよ!
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      監修者プロフィール

      ペイトナー執行役員 邨山毅

      立教大学経済学部卒。投資会社にて内部統制・米国新興事業の国内展開に従事。その後VOD運営会社にて経営戦略・機械学習・調達戦略領域の経験を経て、ペイトナー株式会社に入社。執行役員ファクタリング事業本部長として、ファイナンスサービスの運営及びフリーランスの与信構築全般を所掌している。

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