iDeCoを利用しているだけでは、節税効果が得られません。年末調整で、掛金の金額を申告しないと、控除を受けられないのです。
本記事では、iDeCo利用者のために、年末調整のやり方を解説します。申告書の書き方や、控除でいくら戻るのか詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
- iDeCo利用者は、年末調整で掛金額を申告する必要があるよ!
- 手続きには証明書が必要なので、届いたら大切に保管しよう
- 証明書が間に合わない方や、個人事業主の方は確定申告をしよう!
目次
iDeCo利用者は年末調整で申告が必要?
iDeCoを利用している一部の方は、年末調整で申告が必要です。年末調整で申告をすると、税金の控除を利用できて、納税額が少なくなります。
では、どんな人がiDeCoの掛金額を年末調整で申告する必要があるのか、見ていきましょう。
個人払込か事業主払込かをチェック!
iDeCo利用者のうち、年末調整での申告が必要なのは「個人払込」という種類で掛金を支払っている人です。iDeCoの掛金支払い方法には「個人払込」と「事業主払込」があります。それぞれの特徴は、以下のとおりです。
- 個人払込:個人が自分自身で掛金を支払う
- 事業主払込:企業が従業員の掛金を支払う
事業主払込の場合、企業側が掛金の支払いから税金の調整までを行うので、年末調整で申告しなくても、控除を受けられます。
一方、個人払込の場合は、企業側は誰がいくらiDeCoの掛金を支払っているか把握していません。そのため、年末調整で掛金額を申告して、税額計算に反映してもらう必要があります。
公務員も年末調整が必要!
公務員の方も、iDeCoを利用している場合は申告が必要です。
会社員と同様に「個人払込」で掛金を支払っている方であれば、年末調整にて金額を申告する必要があります。
会社員や公務員で「確定申告」が必要なケース
会社員や公務員の方の一部は、年末調整ではなく、確定申告で掛金額を申告する必要があります。
具体的には「小規模企業共済等掛金払込証明書」が、年末調整の締切に間に合わない方です。証明書がないと、正確な金額を証明できないため、年末調整で掛金額を申告することができません。
年末調整で掛金額を申請できないと、本来の税額よりも多く税金を納めることになってしまいます。そこで、支払いすぎた税金を還付してもらうために、確定申告をして、正しい税額を納めるための手続きをするのです。
iDeCo掛金を年末調整で申告して戻る税金は2種類!
iDeCoの掛金を年末調整で申告すると、以下2種類の税金で掛金を全額控除できます。
- 所得税
- 住民税
それでは、それぞれの税金と控除について、詳しく見ていきましょう。
所得税
所得税は、所得額に対してかかる税金です。iDeCoの掛金が「小規模企業共済等掛金控除」となります。
小規模企業共済等掛金控除は、小規模企業共済・企業型年金・個人型年金・心身障害者扶養共済制度の掛金などの掛金に関する控除です。
個人住民税の所得割に関する控除
iDeCoの掛金は、個人住民税の所得割の控除にもできます。個人住民税とは、一般居住者が納税する税金です。法人の場合は「法人住民税」を納めます。
また、個人住民税は以下2種類にわかれており、iDeCo掛金が控除になるのは「所得割」です。
- 均等割:全住民が同一額で納める住民税
- 所得割:所得金額に応じて納める住民税
所得割は「道府県民税(都民税)4%)+区市町村民税(6%)= 10%」です。所得割は「所得金額 × 10%」で計算しますが、この所得金額からiDeCo掛金額を差し引いて計算できるため、税額が低く抑えられます。
iDeCo利用者の年末調整での書き方は?
iDeCo利用者のなかには、年末調整で掛金額をどのように申告するのか、書き方が分からないとお悩みの方も多くいるでしょう。
以下では、必要書類と申告方法について、それぞれ解説しますので、参考にしてください。
必要書類を準備する
年末調整をするためには、以下2種類の書類が必要です。
- 小規模企業共済等掛金払込証明書
- 給与所得者の保険料控除申告書
「小規模企業共済等掛金払込証明書」は、iDeCoの掛金額が記載された書類です。この書類がないと、いくら積み立てたのか証明できなくなるので、大切に保管しましょう。なお、年末調整の締切までに証明書が届かない場合に関しては、こちらの項目をご覧ください。
「給与所得者の保険料控除申告書」は、具体的な控除額について記載する書類です。会社で配布されますが、国税庁HPでダウンロードすることもできます。令和5年分の書式はこちらです。
給与所得者の保険料控除申告書の書き方
必要書類が準備できたら、給与所得者の保険料控除申告書に必要事項を記入していきましょう。iDeCoの掛金額を記入するのは、右下「小規模企業共済等掛金控除」のなかにある「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」の欄です。
該当欄に、小規模企業共済等掛金払込証明書に記載されている「合計金額」を記入しましょう。そして、証明書と申告書をあわせて、勤務先に提出してください。
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iDeCoの掛金を年末調整で申告したら、いくら戻る?
iDeCoの掛金を年末調整したら、税金がいくら戻るのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
以下では、所得税と住民税の計算方法を紹介したうえで、年収と掛金額に応じた控除額シミュレーションをしていきます。
所得税の計算方法
所得税は、以下のように計算します。
- 収入金額の合計を計算
- 収入 – (必要経費 + 必要経費など) = 所得金額
- 所得金額 – 所得控除(社会保険料控除、扶養控除など) = 課税所得
- 課税所得 × 所得税率 – 税額控除(配当控除、住宅借入金特別控除など) = 所得税
- 所得税 × 2.1%(復興所得税率)= 復興所得税
平成27年分以降の所得税率は、以下のとおり。
■平成27年分以降の所得税率
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
住民税の計算方法
住民税は、以下の方法で計算します。
- 収入金額の合計を計算
- 収入 – (必要経費 + 必要経費など) = 所得金額
- 所得金額 – 所得控除(社会保険料控除、扶養控除など) = 課税所得
- 課税所得 × 10%(住民税率) – 税額控除(配当控除、寄附金税額控除など) = 所得割額
- 所得割 + 均等割 = 住民税
2024年7月時点での均等割額は、通常の4,000円にプラスして森林環境税1,000円が上乗せとなり、合計5,000円となっています。
年収500万円・掛金月額1万円・25歳スタートのシミュレーション
年収500万円の方が、25〜65歳までの40年間、毎月1万円をiDeCoで積み立てた場合、どのくらいの節税効果があるかシミュレーションしてみましょう。
年収500万円・掛金月額1万円のシミュレーション
未加入者 | 加入者 | |
所得税額 | 138,550円 | 126,550円 |
住民税額 | 241,050円 | 229,050円 |
軽減額(所得税、住民税それぞれ) | – | 1年間:12,000円40年間:480,000円 |
軽減額合計 | – | 1年間:24,000円40年間:960,000円 |
iDeCo積立総額 | – | 1年間:120,000円40年間:4,800,000円 |
40年間の積み立てによる軽減額は、所得税と住民税がそれぞれ48万円、合計で96万円になります。
年収800万円・掛金月額2.3万円・25歳スタートのシミュレーション
次に、年収800万円の方が、25〜65歳までの40年間、毎月2.3万円(企業年金がない企業に勤めている方の限度額)を積み立てた場合のシミュレーションです。
年収800万円・掛金月額2.3万円・25歳スタートのシミュレーション
未加入者 | 加入者 | |
所得税額 | 466,260円 | 411,060円 |
住民税額 | 451,880円 | 424,280円 |
所得税軽減額 | – | 1年間:55,200円40年間:2,208,000円 |
住民税軽減額 | 1年間:27,600円40年間:1,104,000円 | |
軽減額合計 | – | 1年間:82,800円40年間:3,312,000円 |
iDeCo積立総額 | – | 1年間:276,000円40年間:11,040,000円 |
40年間の軽減額は、所得税が約5.5万円、住民税が約2.8万円、合計で約330万円になります。
個人事業主なら確定申告をしよう!
個人事業主の場合、勤務先での年末調整がないので、確定申告で掛金額を申告して、控除を受けましょう。なお、会社員や公務員の方でも、証明書が年末調整の締切に間に合わない場合は、確定申告が必要になります。
それでは、iDeCo掛金に関する確定申告の方法を解説しますので、以下を参考にして申告書を作成してみてください。
確定申告でのiDeCo掛金の書き方
確定申告では、以下の欄にiDeCoの掛金額を記入していきます。
- 第一表
- 「所得から差し引かれる金額」の「小規模企業共済等掛金控除⑭」
- 第二表
- 「⑭小規模企業共済等掛金控除」
金額は「小規模企業共済等掛金払込証明書」にある合計金額を参照してください。
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iDeCoの年末調整に関するよくある質問
iDeCoを利用している方は、年末調整シーズンになると以下のような疑問を抱くのではないでしょうか。
- 年末調整までにiDeCoの証明書が間に合わない場合は?
- 年末調整でiDeCoの掛金申請を忘れたら?
- 公務員の場合は年末調整でいくら戻るの?
- iDeCoの証明書は再発行してもらえるの?
- いつまでに加入すれば年末調整に間に合う?
この後の項目で、よくある質問5つについて、それぞれ回答していきます。
年末調整までにiDeCoの証明書が間に合わない場合は?
年末調整までにiDeCoの証明書が間に合わない場合は、確定申告で掛金額を申告します。年末調整の締切までに証明書が届かない場合、申告書を提出できません。正確な金額を把握・照明するのが難しいためです。
そのため、自ら確定申告を行って、納め過ぎた税金を還付してもらいます。
年末調整でiDeCoの掛金申請を忘れたら?
年末調整でiDeCoの掛金を申請し忘れてしまったら、確定申告で掛金額を申告します。
確定申告は、所得の内訳を記載して、納税額を国に申告するための手続きです。年末調整でiDeCoに関する手続きを忘れても、確定申告で正しい納税額を申告すれば、払いすぎた税金は還付されます。
公務員の場合は年末調整でいくら戻るの?
公務員の場合、年末調整で戻ってくる(控除される)税金は会社員と同様です。計算が異なるといったことはありません。
ただし、公務員と会社員では、iDeCoの掛金上限が異なる点に注意が必要です。
- 公務員:月額12,000円が上限
- 企業年金が未導入の企業:23,000円
- 企業年金を導入している企業:20,000円
- 確定給付企業年金に加入済み:12,000円
上記のように、公務員の場合は、月額12,000円、年間144,000円が上限となります。
iDeCoの証明書はいつ届く?
iDeCoの証明書は、原則として10月下旬に順次発送されます。iDeCoを利用している会社によって異なりますが、基本的には11月上旬までには自宅に届くはずです。
ただし、10月に掛金の初回引き落としがある方や、10月までに掛金納付月・金額が指定できていない場合は、11月以降の発送となります。
iDeCoの証明書は再発行してもらえるの?
iDeCoの証明書の再発行は、基本的に再発行できます。証券会社によって異なりますが、Webで手続きできる会社が多いでしょう。詳しい手続きの流れは、ご利用の証券会社HPをご覧ください。
いつまでにiDeCoに加入すれば年末調整に間に合う?
8月までに各種設定を完了して、9月に初回の掛金引き落としがかかる状態にしておけば、年末調整に間に合います。
年末調整関連の書類提出は11月頃を提出期限としている企業が多いので、10月下旬に証明書が発送されるようにしなければなりません。10月下旬までに証明書を発行してもらえるのが、8月までに設定完了して、9月に初回引き落としがかかる方です。
上記の期間を過ぎると、証明書が11月以降の発送となるため、年末調整に間に合わせるのが難しくなるでしょう。
まとめ
iDeCoは、老後資金を積み立てつつ、節税効果もある非常に便利な制度です。
昨今は、物価高や為替変動などによって、老後2,000万円では足りないといった意見も散見されるようになりました。老後資金に関する問題が顕在化している今だからこそ、iDeCoをはじめとした各種制度をうまく活用して、老後資金を作っていく必要があります。
これからiDeCoを利用する方は、今回紹介した流れで年末調整をして、しっかりと控除を受けられるようにしましょう。
- iDeCo利用者は、年末調整で掛金額を申告する必要があるよ!
- 手続きには証明書が必要なので、届いたら大切に保管しよう
- 証明書が間に合わない方や、個人事業主の方は確定申告をしよう!
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