「人材育成や機材導入をしたいけど、資金がない」という悩みを持つ個人事業主の方はいるのではないでしょうか。そんな悩みを解決する手段の一つとして、助成金の申請をおすすめします。助成金は、条件を満たしていれば受け取れる資金サポート制度で、主に人材育成や設備整備などに充てることができます。返済の必要もないので、資金繰りに余裕がない事業主にとてもおすすめできます。本記事では、個人事業主におすすめの助成金や補助金、支援金などを紹介します。
- 助成金は、基本的に労働者を雇っている個人事業主や法人経営者が利用できるよ!
- 条件がかなり細かく規定されているので、要項をしっかりと確認して申請しよう
- 助成金のほかにも補助金・給付金・支援金などがあるので、適宜使い分けていこう!
目次
そもそも助成金・補助金・給付金とは?
資金調達の方法として、助成金・補助金・給付金などがあります。それぞれ似たような単語ですが、意味合いは少し異なる言葉です。それぞれどういった資金調達方法なのかを把握して、自分がどの方法を利用すべきかを判断しましょう。
補助金は審査があるが、金額が高額
補助金とは、主に経済産業省が管理している事業者向けの資金給付制度です。助成金は異なり、審査を通過した人にしか支給されません。審査は比較的厳しいとされており、審査が通過せず受給できなかったケースも多くあります。
助成金は条件を満たせば受け取れる
助成金とは、主に厚生労働省が管理している資金給付制度です。補助金と異なり、条件を満たしていれば受け取れるので、比較的利用しやすい制度となっています。
給付金は主に個人や事業主向け
給付金とは、主に天災や感染症などによって緊急事態に陥った場合に、困窮者や倒産リスクの高い法人・個人事業主などに向けて資金援助をする制度です。救済措置として支給されるものなので、審査自体はあまり厳しくありません。一方で、いつでも申請できる制度ではなく、緊急事態に陥ったときのみ申請が可能となります。
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【2023年】個人事業主が利用できる助成金
2023年、個人事業主が利用できる助成金には、以下の種類があります。
- 地域雇用開発助成金
- キャリアアップ助成金
- 業務改善助成金
- 人材開発支援助成金
それぞれ対象者や支給額などが異なるので、ご自身の事業状況や収入状況などをふまえて、利用できるものがないか探してみてください。
地域雇用開発助成金
対象者 | 雇用機会が不足している特定地域において、事業所を新設・整備し、地域の人々を雇い入れる事業者 |
支給額 | 50〜800万円 ※特例あり |
支給までの流れ | ①「計画書」を管轄労働局長に提出 ②事業所の設置・整備 ③労働者の雇い入れ ④「完了届(第1回)」を管轄労働局長に提出 ⑤1年間、労働者の維持・定着に努める ⑥「支給申請書(2回目)」を管轄労働局長に提出 ⑦1年間、労働者の維持・定着に努める ⑧「支給申請書(3回目)」を管轄労働局長に提出 ⑨審査や実地調査 |
地域雇用開発助成金は、求人が極端に少なくなっている地域において、事業所の新設や整備などを行い、地域の人々を雇い入れる際に利用できる助成金です。設備の設置・整備費用や雇い入れる人数などに応じた助成金を受け取れます。事業所の整備ではなく、雇用を創出しようとしている事業主に支払われます。
キャリアアップ助成金
対象者 | 非正規雇用労働者のキャリアアップ支援施策を実施した事業者 |
支給額 | 10〜50万円ほど※コースにより異なる |
支給までの流れ | 申請期間までに到着するよう、申請書と添付書類を事業所の所在地を管轄する都道府県労働局に提出 |
派遣労働者・有期雇用労働者・短時間労働者などに対して、キャリアアップに向けた施策を実施した事業者に支給される制度です。キャリアアップの目的によって助成金のコースが分かれており、正社員化コースや賃金規定等改定コースなどが設けられています。なお、申請期間までに書類が到着していないと受け取れませんので、発送日時には十分ご注意ください。
業務改善助成金
対象者 | 設備投資や人材育成を行うとともに労働者賃金を一定額アップした事業者 |
支給額 | 60〜600万円 |
支給までの流れ | ①「交付申請書」「事業実施計画書」を労働局に提出 ②審査、交付決定 ③事業実施 ④「事業実績報告書」「支給申請書」の提出 ⑤審査、助成金の交付 |
業務改善助成金は、設備投資や人材教育、コンサル等を行って生産性を向上させ、賃金も一定額引き上げた場合に受給できる助成金制度です。生産性向上や賃金の向上などを目的として作られました。賃金引き上げの判定条件はかなり細かく設定されているので、申請対象外とならないよう要項を確認しておきましょう。
人材開発支援助成金
対象者 | 従業員の専門性向上に向けた施策を計画に沿って実施した事業者 |
支給額 | 1事業所あたり〜1億円、 または受講者1人当たり〜150万円 ※コースや計画内容などにより異なる |
支給までの流れ | ①計画書の提出 ②訓練の実施 ③支給申請書の提出 |
人材開発支援助成金は、従業員のスキルアップのための訓練を計画に沿って実施した場合に資金援助を受けられる制度です。コースは7つに分かれており、人材育成支援コースや人への投資促進コースなどさまざまな種類があります。コースが細分化されており、助成率などについても細かな規定がありますので、まず要項を読んでどのコースの助成金を申請するのかしっかりと考えましょう。
前述した7つのコースは以下の通りです。1つでも興味のあるコースがあれば、ぜひ申請してみてはいかがでしょうか。
- 人材育成支援コース
- 教育訓練休暇等付与コース
- 人への投資促進コース
- 事業展開等リスキリング支援コース
- 建設労働者認定訓練コース
- 建設労働者技能実習コース
- 障害者職業能力開発コース
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個人事業主が利用できる補助金・給付金・支援金
個人事業主が利用できる補助金・給付金・支援金には以下の種類があります。
- 創業促進補助金
- IT導入補助金
- 事業承継・引継ぎ補助金
- 小規模事業者持続化補助金(一般型)
- 事業再構築補助金
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
- 家賃支援給付金
- 持続化給付金 対象者拡大
- 特別定額給付金
- 子育て世代への特別給付金(児童手当世帯への追加支給)
- 起業支援金
以下では、個人事業主におすすめの補助金・給付金・支援金を紹介します。なお、ご覧になる時期によっては募集がストップしている可能性もありますので、ご了承ください。
創業支援補助金
創業支援補助金は、地方自治体が行っている創業支援事業の総称です。主に、新規事業の立ち上げや、事業継承を行うための資金として利用できます。利用条件や金額などは補助金の種類によって異なるので、利用を検討される方は「地域名 + 創業支援補助金」で検索してみてください。
IT導入補助金
対象者 | 業務改善ソフトやセキュリティ対策ソフトを導入した事業者 |
支給額 | 5〜450万円 ※種類により異なる |
支給までの流れ | ①ITソリューション導入の準備 ②専用サイトから交付申請 ③ITソリューションの導入 ④事業実績報告 |
IT導入補助金は、会計ソフト・受発注ソフト・セキュリティ対策ソフト・インボイス制度対応ソフトなどを導入する事業者が利用できる制度です。経営課題を解決するためのITソリューションを導入したい場合に、必要経費の一部を補填してくれます。通常枠や商流一括インボイス対応類型などいくつかの種類があるので、導入するものに合わせて選択しましょう。なお、年度ごとにサイトが新設されていますので、申請する際にはサイトを間違わないようご注意ください。
事業承継・引継ぎ補助金
対象者 | 事業継承・引き継ぎ等を行う事業者 |
支給額 | 100〜800万円 ※種類により異なる |
支給までの流れ | ①認定⽀援機関や専⾨家などへの相談 ②「jGrants」にて交付申請 ③事業状況の報告 ④実績報告 ⑤補助金交付請求 ⑥事業化の状況報告 |
事業承継・引継ぎ補助金は、既存の事業もしくは廃業した事業を継承・引き継ぎした場合に利用できる制度です。事業継承だけでなく、経営資源や株式を譲り受ける場合や、M&Aに失敗し廃業となった事業を再チャレンジする場合などでも利用できます。3つの種類に分かれているので、状況に応じて選択しましょう。
小規模事業者持続化補助金(一般型)
対象者 | 小規模事業を営む事業主 |
支給額 | 〜200万円 ※種類により異なる |
支給までの流れ | ①経営計画書・補助事業計画書の作成 ②商工会議所へ「事業支援計画書」の交付を依頼申請 ③書類を事務局に提出 ④審査 ⑤事業実施 ⑥実績報告を提出 ⑦審査、補助金額決定 ⑧補助金請求、交付 ⑨状況報告書の提出 |
小規模事業者持続化補助金(一般型)は、小規模事業者がビジネスを継続するために、販路開拓や業務効率化を進めるための資金を補助する制度です。賃料・開発費・広報費・ウェブサイト関連費・資料購入費など柔軟に利用しやすい点が魅力となっています。
事業再構築補助金
対象者 | 時代変革に対応するため事業を再構築する事業主 |
支給額 | 100〜8,000万円※企業規模などにより異なる |
支給までの流れ | ①「GビズIDプライム」にて電子申請 ②採択通知 ③交付申請 ④事業実施事業の実施報告 ⑤交付額の決定 ⑥補助金の請求、交付 ⑦事業状況などの報告 |
事業再構築補助金は、新しい時代の経済社会に対応するため、新分野展開や事業転換などを行う事業主を支援するための制度です。大規模な事業では、最大8,000万円が支給されるケースもあります。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
対象者 | インボイス対応や賃上げ、被用者保険の拡大など 制度変革の対応に苦慮する事業主 |
支給額 | 100〜1,250万円 ※種類により異なる |
支給までの流れ | ①「GビズIDプライム」にて電子申請 ②採択通知 ③交付申請 ④事業実施事業の実施 ⑤報告交付額の決定 ⑥補助金の請求、交付 ⑦事業状況などの報告 |
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業や小規模事業者などの、制度変革対応を支援する制度です。インボイス制度の導入や被用者保険の拡大といった制度変化に対応するためには、ソフトウェア導入や社会保険料の増額などさまざまな負担増が懸念されます。制度対応にあたって資金繰りが悪化するのを防ぎ、事業を継続するサポートをするのが「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」です。
起業支援金
対象者 | 地域の課題を解決するための社会的事業を新たに起業する人 ※東京都以外、もしくは条件不利地域での起業が対象 |
支給額 | 〜200万円 |
支給までの流れ | ①執行団体へ申請 ②審査、交付決定 ③開業届の提出 ④伴走支援 ⑤実績報告 ⑥支援金精算払 |
起業支援金は、地域の課題解決に向けて事業を始める人に対して、事業費の助成と伴走支援を行う制度です。伴走支援とは、事業が抱える課題の解決に向けたサポートを意味します。なお、企業支援金の対象になるのは、東京都以外の地域、もしくは東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県いずれかの条件不利地域において起業した場合のみです。
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助成金を申請する流れ
助成金を申請する流れは、種類やコースなどによって異なります。それぞれ申請締め切り日も異なるので、期限切れで申請できないといったトラブルが起こらないよう、余裕をもって準備をすすめてください。以下では、一般的な助成金の申請手順を紹介します。
- 助成金の要項(パンフレット等)を確認する
- 計画書を所轄の労働局に提出する
- 計画書に沿って事業を行う
- 完了書や申請書を所轄労働局に提出し審査を受ける
- 問題がなければ助成金が支給される
なお、助成金は基本的に「事業完了後の支払い」となります。カードローンや銀行融資のように、資金をもらってから事業を進めることはできないのでご注意ください。
助成金を利用するメリット
助成金を利用するメリットは、利用がしやすい点や、返済不要である点などがあります。以下では、助成金を利用するメリットを4つ紹介します。
条件を満たしていれば受給できる
助成金は、条件を満たしていれば基本的に受給でき、補助金のように審査が通るかどうか分からない不安が少ないのはメリットです。ただし、助成金はそれぞれ申請条件が細かく決められています。要項の確認漏れがあると、申請が受理されなくなる可能性もありますので、申請前に条件を確認しましょう。場合によっては、専門家に意見を求めるようにしてください。
返済しなくてよい
助成金は返済の必要がありません。返済によって資金繰りが悪化するリスクがないのは、利用するうえで大きなメリットでしょう。
資金繰りの改善に役立つ
資金を減らさずに生産性を向上させられるのも、助成金を利用するメリットのひとつです。設備が古く生産性が低い、人が育たないといったことに悩みつつ、人材育成や設備投資に回す資金が不足している事業主は少なくありません。
助成金を利用すれば、人材育成や設備投資などによる出費の一部を補填してもらえます。資金悪化の原因はつくらずに生産性を高められるので、結果として資金繰りが改善するケースも多くあります。
種類がたくさんある
本記事でも紹介したように、助成金にはさまざまな種類があります。各助成金のコースまで含めると、かなりの種類があるでしょう。自分の事業状況をふまえて、最適な助成金を選びやすいのも、助成金の魅力や利用するメリットといえます。
助成金は条件を満たせば利用できるかわりに、条件がかなり細かく定められています。しかし、助成金そのものの種類が多いので、無理なく条件を満たせる種類を見つけやすいのです。
助成金を利用するデメリットと注意点
助成金を利用するうえでは、さまざまなメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあります。利用申請をしてから後悔しないよう、以下で紹介するデメリットについても把握しておきましょう。
手続きや書類準備が大変
助成金や補助金は、必要書類を揃えるのにかなりの手間がかかります。事前に申請書を提出したり、関連書類を作成したり、職業訓練後にまた支給申請書を作成したりと、受け取るまでにかなりの準備が必要なのです。カードローンと比較すると、手続きや書類準備が複雑で、忙しい方だと利用しにくいケースもあるでしょう。
支給までに時間がかかる
支給までに年単位で時間がかかるケースもあります。例えば「地域雇用開発助成金」は、計画書を提出してから1年間、計画通りに事業を進めたうえで完了届を提出します。基本的に「計画書どおりにできれば支給」というのが助成金なので、いわゆる「資金の前借り」はできないのです。カードローンやファクタリングのように、即日で資金調達できる手法ではないので注意しましょう。
受給できない可能性がある
助成金は、受給上限がとても細かく決まっています。計画書どおりに事業が進まなかったり、実地調査によって対象外とされてしまったりすれば、助成金を受け取ることができません。条件を満たしていたつもりでも、受給できない可能性がある点には十分注意しましょう。必ず受給できるだろうと考えて事業を進めてしまうと、支給不可の判定となった場合に資金が不足し、破産してしまう可能性もあります。
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助成金以外の資金調達方法は?
助成金以外にも、資金調達方法にはさまざまなものがあります。
- カードローン
- ファクタリング
- 銀行融資
以下では、助成金以外の資金調達方法について、それぞれ詳しく紹介します。
カードローン
カードローンは多くの人が利用している資金調達方法です。種類によっては、個人事業主でも申請しやすいローンもあります。ただし、開業したばかりで売上実績(確定申告書など)が提出できない場合は、返済能力がないと見なされ利用できないケースも少なくありません。また、カードローンは利息をふくめて返済しなくてはならないので、結果的に利用前よりも資金繰りが悪化してしまう可能性があります。
ファクタリング
ファクタリングは、売掛債権をサービス会社に売却して資金を調達する手法です。主に請求書を提出して「〇〇社から〇円受け取る権利」をサービス会社に売り渡し、手数料を差し引いた金額を受け取ります。売掛債権を売却するサービスなので、返済の必要がないのは大きなメリットです。翌々月払いの契約で、資金繰りが悪化しやすい事業主には特におすすめできます。ただし、手数料が引かれるため資金繰りが余計に悪化するリスクがある点や、種類によっては取引先にファクタリング利用が知られてしまう可能性がある点には注意しましょう。
銀行融資
事業規模や内容によっては、銀行からの借り入れを行えるケースもあります。カードローンに比べて利息が低く、また大規模な借り入れも可能なのは銀行融資のメリットです。ただし、審査や書類準備に時間がかかる点や、審査が比較的厳しい点には注意しましょう。
まとめ
助成金のなかには、個人事業主が利用できるものも多くあります。ただし、基本的に従業員を雇っている事業主を対象としていますので、単独で仕事をしている場合には別の資金調達方法を検討しましょう。
助成金以外には、補助金やカードローン、ファクタリング、銀行融資といった資金調達方法があります。それぞれ調達までのスピード感や利息・手数料の高さなどが異なるので、事業の状態にあわせて最適なものを探してみてください。
- 助成金は、基本的に労働者を雇っている個人事業主や法人経営者が利用できるよ!
- 条件がかなり細かく規定されているので、要項をしっかりと確認して申請しよう
- 助成金のほかにも補助金・給付金・支援金などがあるので、適宜使い分けていこう!
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