個人事業主の介護保険料は経費になる?勘定科目や計算方法を解説!

介護保険料

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個人事業主が支払った介護保険料は、経費になりません。経費とは、事業に必須な支出だからです。しかし、経費にできないものの「医療費控除」として、所得控除にできます。

本記事では、個人事業主の介護保険料やその他介護費用は控除になるのか、確定申告ではどのように記載するかを詳しく解説します。介護費用の負担が大きくお悩みの方は、本記事を参考に控除を受けて、節税をし、手取り額を増やしていきましょう。

やっぷん
  • 介護保険料は「社会保険料控除」にできるよ
  • その他の介護サービス費用については、一部は医療費控除にできるかも!
  • 確定申告のやり方を正しく理解して、適切に控除を受けよう!

個人事業主が払った介護保険料は「社会保険料控除」の対象になる

40歳になると、通常の健康保険料に加えて、介護保険料の支払いが義務となります。この介護保険料は、健康保険に加入する40歳以上の方が支払うものです。介護が必要な人々を、社会全体で支えるための制度なので、必ず納めましょう。

支払った介護保険料は、全額「社会保険料控除」の対象になります。社会保険料控除とは、所得控除の一種です。控除を利用すると、所得税や住民税などが安く抑えられます。

参考:国税庁『No.1130 社会保険料控除

実際に介護にかかった費用は「医療費控除」の対象

実際に介護を受ける側になって、介護サービスの利用料を支払う場合もあるでしょう。ここでいう介護サービスとは、要介護または要支援認定を受けた方が受けられるサービスのことです。自己負担1割(所得により2〜3割)でサービスを利用できます。

介護サービスの利用料を支払った場合、そのお金は「医療費控除」の対象になります。医療費控除とは、その年の1月1日〜12月31日までで、自分や生計を一にする配偶者、または親族のために支払った医療費について、一定額を超える場合に利用できる所得控除です。

なお、おむつ代や施設費なども、医療費控除にできる場合があります。

参考:国税庁『No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)

医療費控除の計算方法

医療費控除の金額は、以下の計算方法で決定します。

医療費控除額の計算方法
  • (実際に支払った医療費の合計額 – ①) – ②
    • ①保険金などで補填される金額
    • ②10万円

※総所得金額等が200万円未満であれば総所得金額等の5%の金額

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参考:国税庁『No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)

65歳以上・要介護または要支援認定・その他基準を満たせば「障害者控除」の対象

65歳以上で、要介護や要支援認定を受けている場合、条件を満たせば「障害者控除」を受けられる場合があります。65歳以上の要介護や要支援の方は全員が対象で、審査には以下の「障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)」や「認知症高齢者の日常生活自立度 」を用いるケースが多いようです。

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)

生活自立ランクJ何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出する1. 交通機関等を利用して外出する2. 隣近所へなら外出する
準寝たきりランクA屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出しない1. 介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する2. 外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている
寝たきりランクB屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが、座位を保つ1. 車いすに移乗し、食事、排泄はベッドから離れて行う2. 介助により車いすに移乗する
寝たきりランクC1 日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替において介助を要する1. 自力で寝返りをうつ2. 自力では寝返りもうてない

引用:厚生労働省『障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)

認知症高齢者の日常生活自立度 

ランク判定基準
何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している。
日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが多尐見られても、誰かが注意していれば自立できる。
Ⅱa:家庭外で上記Ⅱの状態が見られる。Ⅱb:家庭内でも上記Ⅱの状態が見られる。 
日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さがときどき見られ、介護を必要とする。Ⅲa:日中を中心として上記Ⅲの状態が見られる。Ⅲb:夜間を中心として上記Ⅲの状態が見られる。
日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする。
著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする。

引用:厚生労働省『認知症高齢者の日常生活自立度

上記のような基準に照らして「障害高齢者の日常生活自立:ランクJ」や「認知症高齢者の日常生活自立度:ランクⅠ」に該当する人は、障害者認定はされないと考えて良いでしょう。それ以外のランクに該当する方は、多くの自治体において障害者認定がされ、障害者控除が利用できるようになります。

障害者控除とは、納税者本人または同一生計配偶者や扶養親族が、所得税法上の障害者に当てはまる場合に利用できる控除です。所得から以下の金額を控除できます。

区分控除額
障害者27万円
特別障害者40万円
同居特別障害者※75万円

※同居特別障害者:特別障がい者である同一生計配偶者または扶養親族のうち、納税者自身、配偶者、その納税者と生計を一にするその他親族のいずれかとの同居を常況としている人

引用:国税庁『No.1160 障害者控除

社会保険料控除を利用する際の必要書類

社会保険料控除を申告するにあたっては、源泉徴収票や介護保険料納付確認書などが必要になります。書類は、正確な金額を確認するためにも必要です。

以下では、被保険者別で用意する書類を紹介しますので、参考にしてください。

第1号被保険者

第1号被保険者とは、65歳以上の方です。第1号被保険者の場合、2パターンの支払い方法が考えられます。

第1号被保険者の

  • 年金から天引き
  • 国民健康保険料と併せて納付

年金から天引きされている場合「公的年金等の源泉徴収票」で金額を確認しましょう。毎年1月下旬ごろまでには、年金機構から郵送されます。

国民健康保険料と併せて直接納付している方は、自治体から送られてくる「介護保険料納付確認書」や「納付のお知らせ(名称が異なる場合あり)」で確認しましょう。

第2号被保険者

第2号被保険者とは、40〜64歳の方です。

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各種控除の計算方法

各種控除を利用する際「どれくらい節税になるのかな?」と気になる方も多いでしょう。以下では、各種控除を利用する際の税額計算について解説します。

「所得控除」と「税額控除」

税額計算をする前に、所得控除と税額控除の違いを把握しましょう。

そもそも、税金は「所得×税率」で計算します。例えば年の所得が50万円で、所得税が10%なら、所得税額は5万円になる訳です。

所得控除は、名前のとおり所得額から差し引けるものです。一方、税額控除は算出した税額から差し引けるものです。計算方法を見ながら、具体的な違いを見てみましょう。

【所得控除と税額控除の違い】
  • 売上 – 必要経費 – 所得控除 = 課税所得
  • 課税所得 × 税率 = 所得税額
  • 所得税額 – 税額控除 = 納税額

上記のように、どのタイミングでその金額を差し引くのかが異なります。この所得控除と税額控除を混同してしまうと、納税額がまったく異なってしまうのでご注意ください。

控除の計算方法と具体例

今回は、社会保険料控除が20万円、年間売上350万円、必要経費50万円だったと仮定して、所得税額の計算をしてみましょう。

所得税額の計算シミュレーション
  • 350万円(売上) – 50万円(経費) – 20万円(社会保険料控除) = 280万円(課税所得)
  • 280万円 × 10% = 28万円
  • 28万円 – 9.75万円(税額控除) = 18.25万円(182,500円)

97,500円の税額控除は、課税所得が195万円〜330万円未満の方が全員受けられるものです。所得税率および控除については、国税庁のページや、以下の記事を参考にしてください。

社会保険料控除を確定申告で記載する流れ

社会保険料控除を確定申告で記載する場合「どの欄に何を記入するのか?」と迷ってしまう方が多くいます。ソフトを利用する方でも、自分が入力した社会保険料の情報がどこに載っているのか確認できず不安を抱く方がいるでしょう。

以下では、確定申告の際に必要な書類や、記入する欄などを解説しますので、これから確定申告する方はぜひ参考にしてください。

確定申告の必要書類

確定申告をする際には以下の書類が必要となります。

確定申告の必要書類
  • 確定申告書
  • 本人確認書類とマイナンバーがわかるもの
  • 決算書や収支内訳書など所得金額がわかるもの
  • 控除関連の書類

介護保険料について、社会保険料控除を受ける場合、以下のような書類のうちいずれかの添付・提示が必要になります。

社会保険料控除を受ける際に必要な書類の例
  • 介護保険料納付確認書
  • 納付のお知らせ
  • 公的年金等の源泉徴収票

上記は、介護保険料の支払い額を証明する書類なので、大切に保管しておきましょう。

社会保険料控除の記入欄

社会保険料控除は、確定申告書 第一表「所得から差し引かれる金額」のうち「⑬社会保険料控除」の欄に金額を記入します。

また第二表の右上にある「⑬社会保険料控除」にも、保険料等の種類や、支払保険料等の計などを記入しましょう。

確定申告の申告方法と期限

確定申告の方法は、以下の方法から選択できます。なお、65万円の青色特別控除を利用する場合はe-Taxでの電子申請のみとなるのでご注意ください。

確定申告方法
  • 所轄税務署の窓口で提出
  • 所轄税務署の時間外収受箱に投函
  • 所轄税務署もしくは業務センターに郵送
  • e-Taxにて電子申告

参考:国税庁『申告書の提出方法

確定申告は毎年2月16日〜3月15日が申告期間となっています。3月15日が土日祝日だった場合は、次の平日が申告期限です。

確定申告 やり方

個人事業主の介護保険料に関するよくある質問

個人事業主の介護保険料に関しては、以下のような疑問・不安を抱く方が多くいます。

個人事業主の介護保険料に関するよくある質問
  • 社会保険料控除を申告し忘れたら?
  • 申告したらどれくらい節税になる?
  • 将来、介護保険料はいくらくらいになる?
  • 介護保険料の勘定科目は?
  • 経費に上限はある?

それでは、よくある5つの質問について以下で回答します。

社会保険料控除を申告し忘れたら?

社会保険料控除の申告を忘れてしまう場合もあるかもしれません。

まず年末調整で忘れてしまった場合、別で確定申告をして控除を申告すれば、払いすぎた税金が還付されます。

また確定申告で社会保険料控除の記載を忘れた場合でも、5年以内は「還付申告」を行って、払いすぎた税金を取り戻すことが可能です。

申告したらどれくらい節税になる?

申告したらどれくらい節税になるかは、所得額や控除額によって異なります。今回シミュレーションしたケースを参考にして、介護保険料の控除があった場合となかった場合で、所得税額がいくら変わるかを見てみましょう。

所得税額の計算シミュレーション
  • 介護保険料の控除あり
    • 350万円 – 50万円 – 20万円(控除) = 280万円
    • 280万円 × 10% = 28万円
    • 28万円 – 9.75万円 = 18.25万円(182,500円)
  • 介護保険料の控除なし
    • 350万円 – 50万円 = 300万円
    • 300万円 × 10% = 30万円
    • 30万円 – 9.75万円 = 20.25万円(202,500円)
  • 介護保険料の有無による差額
    • 20.25万円 – 18.25万円 = 2万円

今回は所得税10%だったので、控除額の1割がそのまま差額となりました。今回のケースでいえば、年間2万円の節税になります。

所得税率は、所得金額が多いほど高くなります。控除額が大きくなったり、所得税率が上がったりするほど、控除による節税効果も大きなものとなります。

将来、介護保険料はいくらくらいになる?

介護保険料は、標準報酬月額の1.82%です。健康保険料率(10%)と併せて支払うので、合計11.82%となります。

標準報酬月額とは、残業代や通勤手当などを含む給与を、32等級に分類したものです。例えば、標準報酬月額が20万円だった場合「17等級」に該当します。17等級は標準報酬200,000円となるため「200,000 × 1.82%」で月額3,640円、保険料とあわせて23,640円を支払います。

介護保険料の勘定科目は?

個人事業主が払った介護保険料の勘定科目は「事業主貸」です。介護保険料は必要経費ではないため、この「事業主貸」を使って仕訳をします。なお、事業用口座でなくプライベートな口座から支払った場合は、仕訳の必要はありません。

経費に上限はある?

経費に上限はありません。必須の支出であれば、どれだけでも計上できます。

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ただし、1つが10万円以上である場合、原則として資産としての減価償却が必要になります。青色申告の方は、30万円未満の資産は「小額減価償却資産の特例」を利用して一括で経費にできますので、上手に活用しましょう。

減価償却資産や、小額減価償却資産の特例については、以下の記事をご覧ください。

まとめ

個人事業主が払った介護保険料は、社会保険料控除にすることができます。控除を受ける場合には、金額がわかる書類を添付する必要がありますので、源泉徴収票や納付確認書などを受け取ったら、大切に保管しましょう。

控除を活用すれば、年間数万円の節税効果が期待できます。確定申告での正しい記載方法を把握したうえで、社会保険料控除や医療費控除を活用して、上手に節税対策をしていきましょう。

監修者プロフィール

ペイトナー執行役員 邨山毅

立教大学経済学部卒。投資会社にて内部統制・米国新興事業の国内展開に従事。その後VOD運営会社にて経営戦略・機械学習・調達戦略領域の経験を経て、ペイトナー株式会社に入社。執行役員ファクタリング事業本部長として、ファイナンスサービスの運営及びフリーランスの与信構築全般を所掌している。

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