フリーランスの皆さんは税務調査について考えたことがありますか?「大企業に入るもの」「自分には無関係」だと思っていませんか?実はフリーランスも税務調査の対象になる可能性があるのです。
そこで今回は、税務調査が入りやすい人の特徴、そして対処法をわかりやすく紹介します。
- 税務調査は、確定申告の不備に対する調査!
- フリーランスも対象になることがあるよ!不正はもちろんダメだけど、地球人って忘れっぽいもんね。
- うっかり忘れて税務調査の対象になった時のためにも、対処法を知っておこう!
目次
そもそも税務調査とは?
自分には無関係だと思って、税務調査がどのようなものかあまり知らないフリーランスの方も多いのではないでしょうか?
そんな方のために、まずは税務調査の概要から見ていきましょう!
確定申告の不備に対する調査
税務調査とは、納税者による申告が正しいかどうか確認する調査です。日本の税金は基本的に、事業者が自ら税額を申告する「申告納税制度」をとっており、納税者の裁量が大きくなっています。そのため、計算ミスや虚偽の申告により納税が正しくされないことがあるのが現状です。
これらの不正を確認・是正するために、税務署が調査に入るというわけです。
フリーランスが税務調査される割合は約2.6%
フリーランスが税務調査に入られる割合は、2.6%ほどです。令和3年度は約2,300万人が確定申告を行い、うち60万件の税務調査が行われています。
つまり「60万人 ÷ 2,300万件 = 0.026…」で、2.6%の人が税務調査に入られているといえるのです。
参考:国税庁『令和3事務年度 所得税及び消費税調査等の状況』
参考:国税庁『令和3年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について』
税務調査が入りやすいフリーランスの特徴は?
「税務調査が入るのは企業だけ」というイメージの方が多いかもしれませんが、フリーランスも税務調査の対象になる可能性が十分にあります。では、調査されやすいフリーランスには、どのような特徴があるのでしょうか?
確定申告をしていない
原則、個人事業主やフリーランスは確定申告をする義務があります。そのため、無申告が税務調査の対象になることは必然と言えます。国税庁は口座情報などにアクセスできるので、脱税は確実にバレるのです。
上のように意図して不正を働くフリーランスの方は少ないでしょうが、うっかり忘れてしまうこともあるでしょう。しかし、確定申告をしなかった場合には、「加算税」という厳しいペナルティがあります。
本来の税額に対し、次の割合を乗じた額を追加で支払うことになります。
50万円までの金額 | 15% |
50万円越の金額 | 20% |
最大2割増しで税金を支払うことになるので、無申告は絶対にやめましょう。
確定申告を忘れてしまったら?
注意していても、忘れてしまうことはあります。やむを得ず申告できなかった場合は、なるべく「早急に」「自主的に」申告・納付をすることがポイントです。
税務調査の通知が来る前に自ら申告をすれば、加算税が5%まで軽減される、もしくは免除される可能性もあります。
ただし、基本的に確定申告は期日通り行うものです。直前に焦って申告をすると数字に矛盾が出てしまい、税務調査の対象になってしまうケースもあるので、余裕を持って行いましょう。
控除額、免税ラインギリギリで申告している
各税金を計算する際には、収入から一定の額を控除してくれる制度があります。この控除額にぎりぎり満たない金額で申告を続けている場合は「税金を納めなくて済むように虚偽の申告(過少申告)をしている」と勘繰られてしまうことがあります。
消費税免除の対象になる1000万円前後で申告をしているフリーランスなどは、まさにその実例でしょう。
こうした「ギリギリ申告」が調査対象になるかどうかのポイントは、「継続して行われているかどうか」です。たまたま控除額のすぐ下で収まったのであればよいのですが、毎年のように900万円~999万円の申告が続いていると確実に怪しまれます。
「脱税目的で無理やり控除枠内の金額に納めているのではないか」と考えるのは自然なことでしょう。もちろん、正しく節税をして、妥当な金額の所得控除を行っていれば問題ありません。
利益・経費のバランスが明らかにおかしい
経費の割合が売上に対して高すぎるのも、税務調査が入りやすい特徴です。「経費をかさ増しして、課税所得を圧縮しようとしているのではないか」と疑われてしまいます。
明らかに生計を立てられない額になり、不自然だと思われます。
また、赤字申告が毎年続いている場合も要注意です。こちらも単年の赤字であれば自然なことですが、連年だと脱税目的だと思われてしまいます。
それぞれの業種につき目安となる経費率は決まっています。
業種 | 経費率 |
卸売業 | 90% |
小売業 | 80% |
製造業 | 70% |
飲食業 | 60% |
サービス業 | 50% |
ここで言う「サービス業」には、エンジニアやWebデザイナーなども含まれています。サービス業は顧客のニーズを満たすサービスを提供する、という意味合いのため、フリーランスにおいても幅広い職種が該当するでしょう。
ご自身の業種がどれに該当するのかを把握し、経費率に悩んだときの指標にしてみてください。
売上が急激に増えた
売上が大きく増えた年も要注意です。フリーランスにとって売上が伸びるのは嬉しいことですが、同時に税務署からマークされやすいタイミングでもあります。理由として、売上が急に伸びると「不正をしやすくなる」そして「申告が雑になる」ということが挙げられます。
「不正をしやすくなる」理由としては、当然ですが売上が増えた分の税金を増やしたくない事業者が多いからです。特に怪しまれるケースとして、売上が大幅に伸びているのに引かれる経費が異常に多く、課税所得は前年と変わらない場合です。
また、事業を拡大して人を雇うことになれば、人件費や福利厚生費等の経費も増えるので、それが妥当かどうかについてもチェックされます。「申告が雑になる」と考えられるのは、売上の伸びに伴い修正箇所が増え、申告漏れや間違いが多くなる傾向にあるからです。
多忙で申告を丁寧にする時間がない場合は、申告の精度を上げるため税理士を雇うことも検討してみましょう。
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フリーランスが税務調査を乗り切るためには?
税務調査が入ってしまうと、作業時間はもちろん、スキルアップのための勉強など仕事の付加価値を高めるための時間まで奪われてしまいます。
税務調査が入ったとしても、きちんと対応するためのポイントを押さえておきましょう。
正確な数値を申告することは大前提
最初のポイントとしては、当たり前ですが「正直に」申告することです。偽りなく申告すれば、客観的に見て異常な数字が出ることはないでしょうし、もし怪しまれたとしても理由を説明できます。
特にフリーランスが偽りやすく、税務署が目を光らせている項目は、以下の2つです。
①売上を過少に申告していないか
まず、売上の過少申告です。売上の申告漏れは、主に取引先からの支払い調書により判明します。
支払い調書には支払い先や金額が細かく記されています。そのため、なかったことにできる売上はなく、全てもれなく申告しなければなりません。
②生活費を経費に入れていないか
生活費を経費に計上するのもありがちな偽装申告です。特に多いのは、私生活での外食や旅行などを全て「接待交際費」として計上するケースです。
また、家賃の大半を「仕事場」と偽って経費計上してしまうのもありがちです。フリーランスは自宅で仕事をすることが多いですが、全てを経費にはできません。事業に使用する部屋の面積もしくは事業で滞在する時間に対応する家賃だけを計算して経費計上しなければなりません。
曖昧な部分ですが、正確に公私の線引きをしましょう。
このような偽装申告は「過少申告」といい、罰則が設けられています。本来の税金額との差額に一定の税率を乗じた額が追加で徴収されます。過少申告の加算税率は以下の通りです。
過少申告加算税 (意図的でないミスの場合) | 50万円以下の部分:10% 50万円超の部分:15% |
重加算税 (意図的に偽った場合) | 35% |
ミスであった場合はともかく、税務署に意図的だと判断された場合は「重加算税」としてかなりの税をプラスで納めなければなりません。
このように、「差額」に加算税率を乗じて計算するため、本来の税額と申告額の差額が大きいほど加算税は膨らみます。つまり、嘘をつけばつくほど後で損をするということになります。
「意図的」とみなされないよう正直に、正しい税額を申告しましょう。
事実を証明できる書類は取っておく
税務調査に入られたとしても申告が間違っていないことを証明できれば問題ありません。あらかじめ税務署に説明するための書類を選定しておくのも対策の一つです。
税務調査においてフリーランスがチェックされるのは、主に以下のような書類です。
- 総勘定元帳
- 領収書・レシート
- 請求書
- 納品書
- 預金通帳
- 給与関係書類(人を雇用している場合)
- 契約書関係(外注など)
こうした書類で税務署が主に何をチェックするのかというと、先にも述べた通り「売上と経費が合っているかどうか」です。特にフリーランスが経費のエビデンスとして整備しておくべき書類を挙げておきましょう。
①家事費が経費算入されていないかの証明
家事費とは、プライベートで利用する飲食や買い物の費用です。これらは「接待費」や「研究開発費」などとして計上できてしまうので、特に疑われやすい項目です。家事費を算入していないかどうかの証明ですが、ただ領収書が残っていればよいわけではありません。
税務調査では領収書の中身が不審でないかをチェックされるため、以下のような状況に当てはまっていないかどうか確認しましょう。
- 自宅近くの店ばかり
- 特定の店が多い
- 同一時間帯に2つの領収書がある
自宅近くにある領収書ばかりだと、個人の飲食費、買い物として見られることがあります。特定での領収書が多い場合も同様の見解をされる恐れがあります。
同一時間帯に2つの領収書がある場合には、他人や家族の買い物、食事の領収書を加算しているという印象を与えかねません。
仮にこうした条件に当てはまっていても、以下の項目が盛り込まれていれば、家事費だとみなされる確率は低くなります。
飲食の領収書 | 交際相手(取引先等)の氏名、関係性の明記飲食に参加したモノの数 |
贈答品の領収書 | 送り先の氏名、関係性の明記 |
接待等があった際にはその都度、領収書への記載項目を忘れないようにしましょう。
②外注先への支払い
仕事を外注しているフリーランスは、外注に関する書類も精査しておく必要があります。
重要なのは、「外注」なのか「給与」なのかはっきり示すことです。なぜなら、外注費ではなく給与だとみなされてしまうと余分なお金が発生するからです。
源泉所得税・消費税・社会保険料などは、外注費にはかかりませんが、給与にはかかります。そのため、契約書には「外注」である旨を明確に示した要素を盛り込んでおく必要があります。
- 実績により報酬を支払う
- 請求書は外注先が作成する
- 外注先が業務において損害を生じさせた場合、外注先が損害を補てんする
また、架空の外注費だとみなされないように、外注先の氏名、電話番号、住所も記載しておきましょう。
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堂々とした態度で臨む
税務調査では対象者の仕事環境を含めチェックするため、税務官を仕事場に招いて対面で調査をします。
その際に大切なのが、税務官への接し方です。訪問した税務官が「怪しい」と感じてしまうと、より細かな調査をされたり、追加書類を求められたりと、調査は長引く一方です。
そうした事態を避けるためにも、以下の点に気をつけて対応しましょう。
①余計な話をしない
税務調査の中では、多くの質問をされるでしょう。このときに大切なのは「聞かれたことだけに答える」ということです。余計なことまで話してしまうと調査が長引くのはもちろん、疑われる要素になる情報を与える場合があります。
②適当に回答しない
税務調査における質問は、簡単に答えられるものもあれば複雑なものもあります。時には即答できないこともあるでしょう。
その際、早く終わらせたいからと咄嗟に取り繕った解答をしてはいけません。なぜなら、税務調査の回答はひとつひとつ記録されているため、後に間違いが発覚すると税務署からの信用に関わります。
即答できない質問には必ず「後日調べてから回答します」とワンクッション置いて、いい加減な受け答えをしないようにしましょう。
③冷静に接する
税務調査だからといって、慌てる必要はありません。。態度が不自然だと、税務官も直感的に「何かやましいことがあるのか」と思ってしまいます。
冷静さを欠くと必要な対処に時間がかかってしまうので、普段の来客時と同じように振る舞いましょう。
まとめ
税務調査は厄介ですが、犯罪捜査ではないので必要以上に怯える必要はありません。繰り返しにはなりますが、誠実に毎年申告をしていれば問題が起こることもないでしょう。
ぜひ、本記事で紹介した「調査に入られないために」そして「調査に入られたとき」のポイントを押さえて、効率よく対策してみてください。
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