フリーランスとして仕事をスタートした後に、開業届を出していない方はいませんか?開業届を出さずにフリーランスとして働いていると、確定申告で悩むことがあるかもしれません。「開業届を出してないから、確定申告をしなくてもいいんじゃないか」と思う方もいるでしょう。
本記事では、開業届を出していない場合の確定申告について、やるべき理由を解説します。開業届の出し方や、控えの再発行方法なども解説しますので、ぜひ参考にしてください。
- 開業届を出してなくても、確定申告は絶対に行おう!
- まだ開業届を出していない人は、デメリットが多くあるので、早めに開業届を提出するのがおすすめだよ
- 開業届の控えを紛失してしまったら「保有個人情報開示請求書」の提出や、開業届の再提出を行おう!
目次
フリーランスは開業届を必ず出さないといけないの?
フリーランスとして事業をしていても、ビジネスが軌道に乗っていなければ、開業届を出さなくてよいと考えていませんか?開業届は、所得税法上で「提出する義務がある」と定められているものです。以下の項目では、そもそも開業届とは何か、出さなかったらどうなるのかについて、解説します。
開業届とは、開業を税務署に知らせる書類
開業届とは、個人事業を開業したときに提出する書類です。「誰が・どんな事業を・どこで開始したのか」を記載し、税務署に提出します。会社に勤めていないフリーランスにとっては、事業の実態を証明するために大切な書類です。開業届は、開業してから1ヶ月以内に提出することになっています。
開業届を出さなかったとしても罰則はありませんが、後述するようにデメリットが多くあるので、提出することをおすすめします。開業後しばらくしてから提出するのでも問題ないので、出していない方は今からでも提出しておきましょう。
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フリーランスが開業届を出していない場合に起こること
フリーランスが開業届を出していなかった場合、さまざまなデメリットがあります。特に、節税対策がやりにくくなったり、経理作業が行いにくくなったりするのが、大きなデメリットです。この後の項目では、フリーランスが開業届を出していない場合に起こることを6つご紹介します。
青色確定申告が利用できない
開業届を出していないと、青色確定申告が利用できません。青色確定申告は、節税効果の大きい確定申告方法です。そもそも確定申告は、大きく分けると「白色」「青色」の2種類があります。確定申告の中で最も節税効果が大きいのが、最大65万円の控除がある「青色確定申告」です。
開業届を出していない場合、控除のない白色確定申告しか利用できないので、税金対策ができなくなります。青色確定申告が利用できず、所得税をはじめとした税金対策が難しくなってしまうのは、大きなデメリットです。
赤字の繰り越しができない
開業届を提出していないと、赤字の繰り越しもできません。赤字の繰り越しとは、事業で赤字が発生した場合に、その年以降の所得から赤字分を差し引けるものです。個人事業主の場合は、最長3年間まで赤字の繰り越しができます。この赤字の繰り越しは、青色確定を利用した場合のみ行えるものです。
前述の通り、開業届を出していない人は青色確定申告が利用できないため、赤字の繰り越しもできなくなります。
家族への給与支払いを経費として計上できない
家族への給与支払いを経費にできなくなるのも、開業届を出さない場合に起こることです。通常、生計を共にしている家族に対する給与は、経費として計上できません。
しかし、青色確定申告であれば、家族への給与支払いも経費にできます。開業届を出していない場合だと、青色確定申告が利用できないため、家族への給与支払いを経費計上することもできないのです。
法人用のクレジットカードが作れない
個人事業主になったら、確定申告のために「事業用のクレジットカードを作ろう」と考える方が多くいます。個人用のクレジットカードで事業用の支払いもしていると、事業とプライベートの支払いが混在し、管理しにくくなるためです。
法人用クレジットカードは、種類によっては個人事業主でも作成できます。開業届を出していない場合は、そもそも個人事業主という扱いにならないので、法人用クレジットカードが作れません。個人用のクレジットカードしか持てないので、経理管理が煩雑になってしまう可能性があるでしょう。
屋号で口座開設することができない
開業届を出していない場合は、屋号もないので、屋号での口座開設ができません。屋号とは「〇〇商店」や「〇〇レストラン」のような、ビジネスの名前です。開業届を出す際は屋号を記載することができ、申請した屋号は口座開設をする際に利用できます。個人事業主は、事業用の口座を持っておいたほうがよいので、屋号で口座開設できるのは大きなメリットです。
開業届を出していないと、正式な屋号がない状態になるので、屋号で口座開設ができません。場合によっては、プライベート用の口座で事業資金の管理も行わねばならず、資金管理や確定申告がとても煩雑になってしまいます。
補助金や助成金の申請ができない
開業届を出していないと、補助金や助成金の申請もできません。そもそも個人事業を実際に行っているのか、その実態が不明確になってしまうためです。
開業届を出していれば、事業を行っていることを証明でき、補助金や助成金の申請もできます。事業を拡大していきたい場合や、資金繰りに困っている場合に、補助金や助成金は積極的に利用したいものです。そうした補助金や助成金の申請ができなくなってしまうのは、開業届を出さないデメリットのひとつでしょう。
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開業届を出していない場合の確定申告
開業届を出していなかったとしても、確定申告は可能です。「開業届を出してないから、確定申告をしなくてもよいのでは?」と考える人もいるかもしれません。しかし、確定申告はフリーランスとして活動している方なら、全員が行わなくてはならないものです。以下では、開業届を出していない場合の確定申告について解説します。
確定申告は必ず行う
開業届を出していない場合でも、確定申告は絶対に行いましょう。確定申告とは、その年の所得金額や収支を計算し、収めるべき税金の金額を算出するものです。確定申告をしないと「事業をして収入を得ているのに、税金を納めていない状態」になります。つまり、脱税になってしまうのです。
確定申告をせず脱税した場合、より高額な税金を納めなくてはならなくなります。脱税額が高額な場合は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。こうしたペナルティを科されないために、開業届を出してない場合でも、確定申告は必ず行ってください。
令和5年分(2023年分)分の確定申告の期間は、令和6年(2024年)2月16日〜3月15日まで!
最初の確定申告が開業届の代わりになる
開業届を出していない場合でも、開業した年の確定申告をしたら、その申告が開業届の代わりになります。確定申告の書類には、開業届に記載するような内容を一通り記載するためです。ただし「確定申告が代わりになるなら、開業届を出さなくてもいいのでは?」と考えた方は、注意が必要です。開業届を出さないと、前述の通り青色確定申告が利用できません。開業した年からしっかりと節税対策をしていきたいのであれば、開業1ヶ月以内に開業届を出しましょう。
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開業届を提出する流れ
開業届は、税務署へ行けば簡単に提出できます。住民票のように準備が大変な書類も特に必要ないので、誰でもすぐ提出できるものです。この後の項目では、開業届の作成方法や提出方法について解説します。これから開業届を出す方は参考にしてください。
開業届を作成する準備
開業届を提出する際は、以下のものが必要です。
- マイナンバーがわかるもの
- 本人確認書類
- 訂正印
※押印は不要になりました
上記のものがあれば、開業届は作成できます。訂正印はなくても問題ありませんが、税務署で修正を求められた場合に備えて、念のため持っておくと安心です。
開業届の作成
開業届は、以下の方法で作成できます。
- 国税庁のサイトで書式をダウンロードし、必要事項を記載する
- 税務署で用紙をもらって作成するのも可能
開業届は、国税庁のサイトから書式をダウンロードして、自宅で作成するのがおすすめです。税務署で用紙を受け取ってその場で作成する方法もありますが、混雑している場合もあるので、あらかじめ作成してしまったほうがよいでしょう。
記入する内容に不安がある場合は、税務署で作成しても問題ありません。開業届を作成する際は、以下のポイントに注意しましょう。
- 納税地は、住んでいる場所(住所地)か、事務所や事業所がある場所(事業所等)にするのが一般的
- 納税地の欄にある「居住地」は、海外在住の方や、別荘に住んでいる方などが使用する
- 職業欄には、メインの収入となっているものを記入する
- 職業欄に複数の事業を書いてもよいが、事業税や個人事業税に影響する場合があるので注意
- 屋号は空欄でもよい
- 青色確定申告を利用する場合『「青色申告承認申請書」又は「青色申告の取りやめ届出書」 』の欄にある『有』にチェックをする
開業届の提出
開業届は、以下の方法で提出できます。
- 税務署へ直接提出する
- 郵送する
開業届は、納税地に記載した住所を所轄している税務署に提出します。提出する場所が分からない方は、国税庁のサイトで検索しましょう。提出先を間違えると、開業届が受理されないので、お気を付けください。
開業届の控えを紛失してしまった場合の対応
開業届を提出すると、控えを受け取れます。しかし、開業時はとても忙しく、開業届をうっかりなくしてしまう方もいるでしょう。開業届の控えをなくしてしまうと、何らかの審査に申し込んだり、確定申告をする際に不便が生じます。
開業届の控えを紛失してしまった場合の対応方法について、以下で詳しく解説しまので参考にしてください。
保有個人情報開示請求書で再発行する
開業届の控えを再発行してもらう際は「保有個人情報開示請求書」を提出しましょう。保有個人情報開示請求書とは、行政が管理している個人情報を開示してもらうための請求です。用紙は国税庁のサイトからダウンロードできます。なお、保有個人情報開示請求書を作成・提出する際には、以下のものが必要です。
- 保有個人情報開示請求書の用紙
- 手数料分(文書1つにつき300円)の収入印紙
- 本人確認書類(運転免許証や保険証など)
なお、開示できるかの審査は30日以内に行われるとされています。すぐに開示されるものではないので、開業届の控えを紛失したことが分かったら、早めに開示請求を行いましょう。
開業届を再提出する
開業届を再提出して、控えを受け取る方法もあります。同じ内容で開業届を提出しても、特に問題はありません。開業届を再提出した場合、その場で控えをもらえるので、何らかの事情ですぐ控えが欲しい場合には適しています。
ただし、開業日と開業届の受付日がかなり空いてしまうので、税務署から不審に思われる可能性もあります。受理されなかったり、受付日で判断されるものが利用できなくなったりするので、再提出する際は注意しましょう。
開業届を出してないフリーランスに関するよくある質問
開業届を出してないフリーランスに関するよくある質問をまとめました。
- 開業届を出してなくても経費控除は使える?
- 開業届を出してないけど廃業届の提出は必要?
- 領収書の保管は開業届を出してなくても必要?
- 開業届を出してない自営業だと保育園を使えない?
経費控除や保育園の利用などについて疑問を感じている方は、ぜひ以下の内容もご覧ください。
開業届を出してなくても経費控除は使える?
開業届を出していなくても、経費控除を利用するのは可能です。開業届を出していない場合、自動的に「白色申告」で確定申告することになります。白色・青色どちらの申告方法であっても、経費控除は使えるのです。
経費控除の上限額はありません。しかし、経費を使いすぎると赤字になってしまうので、適正な範囲内で収まるようにしましょう。
開業届を出してないけど廃業届の提出は必要?
開業届を出していないフリーランスも、廃業届の提出は必要です。開業届を出していない場合でも、1度目の確定申告がそのまま開業届と同様の扱いになります。つまり、税務署には開業の事実が通知されるのです。
1年で廃業したとしても、その年の確定申告をすれば「開業した」という扱いになり、廃業届を出すまでは事業が継続していると認識されます。自分は廃業したという認識で確定申告をしなかった場合、2年目から「確定申告をせず脱税している人」となってしまうのです。こうしたトラブルが起きないよう、必ず廃業届を提出しましょう。
領収書の保管は、開業届を出してなければ必要ない?
開業届を出していなくても、確定申告で経費を計上するのであれば、領収書・レシートの保管は必須です。領収書がないと、経費を使った証明ができなくなり、後から追加で税金を払うことになります。
領収書やレシートの保管期間は、以下のとおりです。
- 白色確定申告:5年
- 青色確定申告:7年
※※前々年分所得が300万円以下の事業者は5年
開業届を出していない場合は「白色確定申告」となるので、領収書・レシートの保管期間は5年です。なお、電子帳簿保存法の改正により、経費関連書類や請求書などの保管方法も変更となっています。以下の記事を参考にして、各種書類を適切に保管しましょう。
開業届を出してない自営業だと保育園を使えない?
開業届を出していない自営業者は、保育園の審査が厳しくなる可能性があります。保育園の申込書にある職業選選択欄には「家族内職者」と「自営業(もしくはその他)」があるでしょう。開業届を出していない場合は、就労証明書上は「家族内職者」の扱いになります。
家族内職者は、自営業者と比べて点数が低くなるため、審査落ちする可能性が高まってしまうのです。もちろん申し込み状況によっては利用できるかもしれませんが、申し込みが複数ある地域だと、全保育園に落ちるケースもあるでしょう。
より確実に保育園審査を通過するために、開業届を提出することをおすすめします。
まとめ
開業届とは、所得税法上で義務として定められている大切な書類です。誰がどこでどんな事業をしているのかを、国に知らせるために提出します。フリーランスとして仕事を始めたら、すぐに提出しましょう。既に開業届を提出している方で、控えをなくしてしまった場合は、控えを再発行しておくのがおすすめです。
個人事業主として法人向けサービスを利用する際などに、開業届の提出が求められます。また確定申告時にも、屋号や納税地などの確認に使用する場合があるので、紛失したと気付いたらすぐに再発行しましょう。
- 開業届を出してなくても、確定申告は絶対に行おう!
- まだ開業届を出していない人は、デメリットが多くあるので、早めに開業届を提出するのがおすすめだよ
- 開業届の控えを紛失してしまったら「保有個人情報開示請求書」の提出や、開業届の再提出を行おう!
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