「確定申告をしたいけど、副業収入って事業所得なの?雑所得なの?」とお悩みの方は多くいます。所得の種類は複数あり、副業収入はその内容によって扱いが異なるため、迷う方が多くいるのです。
本記事では、副業収入が事業所得になるのか、雑所得になるのかを詳しく解説します。
- 副業収入は、基本的に「雑所得」になるよ
- ただし、帳簿作成など一定の要件を満たせば事業所得にできる場合も!
- 確定申告の内容によっては副業が会社に知られてしまうので、注意してね
目次
副業の定義と所得区分
副業収入の確定申告について学ぶ前に、まずは「副業とは何か」「どんな所得区分になるか」を把握しましょう。
副業とは本業以外の仕事
副業とは、本業以外で何らかの仕事をすることです。個人事業・アルバイト・日雇い派遣など、仕事の仕方に関わらず、本業以外で収入が発生するものを指します。
- 宅配アルバイト
- シール貼りの内職
- フリーランスでのデザイン業務
- 物流センターでの日雇い派遣業務
上記のような仕事を、本業以外の時間で行って収入を得たら「副業」となります。
副業所得の区分
副業所得にはさまざまな区分があります。
- 給与所得
- 雑所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- その他の所得(利子、山林、譲渡など)
所得区分の概要を知って、自分の副業所得はどの区分に該当するかを知りましょう。
給与所得
給与所得とは、雇用契約を結んだ会社で働いて得た収入のことです。アルバイトの給料や、ボーナス、歳費などが給与所得に該当します。
雑所得
雑所得とは、ほかの所得に該当しないもの全般を指します。フリーランスとしての報酬や、年金、暗号資産取引による利益などが雑所得に分類されます。
配当所得
配当所得は、株や投資信託収益の分配などのことです。株式の配当、公募株式等証券投資信託の収益の分配などが配当所得に該当します。なお、株やFXの取引で得た所得は、配当所得ではありませんのでご注意ください。
不動産所得
不動産所得は、不動産の賃料で得た所得です。土地や建物だけでなく、船舶や航空機の貸付も不動産所得に該当します。
事業所得
事業所得とは、名前のとおり事業で得た所得のことです。個人事業の売上から生じた所得は、この事業所得に分類されます。また、株式等の譲渡益から生じた所得も、事業規模と認められる場合は事業所得に分類されます。
その他の所得(利子、山林、譲渡など)
そのほかにも、利子所得や山林所得などさまざまな所得があります。
- 利子所得:預金や特定公的社債の利子など
- 譲渡所得:ゴルフ会員権・金・機械・土地・建物などを譲渡した際の所得
- 一時所得:賞金・懸賞金・生命保険一時金など
- 山林所得:5年超所有している山林を伐採し譲渡した際の所得
- 退職所得:退職金や一時恩給など
副業収入の場合、例えば事業性のない株式譲渡所得は、一時所得に分類されます。
副業収入は原則「雑所得」になる
前述した所得区分のうち、副業収入は原則「雑所得」に該当します。事業所得ではなく、雑所得である点がポイントです。
事業所得とするためには、継続的かつ事業規模な所得でないといけません。副業収入の場合、その継続性・反復性や、所得額の規模が事業性を持たないケースが多いため、原則として雑所得に分類するのです。
それでは、雑所得の税率や、細かい分類について見ていきましょう。
雑所得の税率
雑所得は「所得税」がかかります。税率を知りたいときは、事業所得や譲渡所得などと同じく、所得税率を確認しましょう。
以下は、平成27年分以降の所得税率です。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 〜1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円〜3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円〜6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円〜8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円〜17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円〜39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
なお「課税される所得金額(課税所得額)」は、以下のように計算します。
- 売上 – 控除(所得控除、経費など) = 課税所得
雑所得の種類
雑所得は10種類に分けられます。副業収入の場合は「事業所得」もしくはその他に分類するのが基本です。
公的年金
公的年金とは、以下のようなもののことです。
- 国民年金
- 厚生年金
- 確定給付企業年金
- 確定拠出年金
- 恩給
- 一定の外国年金
副業の場合は、公的年金の雑所得が発生することはないでしょう。
事業関連
フリーランスとして働いて得た所得は、この事業関連に分類できます。
- 原稿料
- 講演料
- アフィリエイト収益
- ネットショップでの物販の利益
- フリマアプリで得た利益
なお、FXや仮想通貨のトレードで得た所得については、この後解説します。
その他(貸金、利子など)
その他の雑所得としては、生命保険の年金(私的年金)、暗号資産取引の所得、先物取引に係る所得などです。
ここで注意したいのは、仮想通貨やFXは雑所得に分類されるのに対して、株式は譲渡所得・事業所得に分類されるということです。副業でトレードをしている方は注意しましょう。
事業所得との違い
事業所得と雑所得との主な違いは、継続性・反復性および事業性です。
事業所得とは、継続的に営まれている事業で生じた所得です。その所得だけで生計が立つような、一定以上の規模の事業かどうかも判断ポイントになります。
一方で雑所得は、アルバイトや内職といった、継続性や反復性のない仕事を含みます。また、その所得だけで生計を立てるのが難しく、事業と言うほどの規模ではないものを、雑所得に分類します。
一時所得との違い
一時所得と雑所得との主な違いは、営利目的かどうか、また役務や資産譲渡の対価かどうかです。
一時所得とは、非営利目的で生じた所得で、仕事の報酬や資産譲渡の対価ではないものを言います。公営ギャンブル(競馬・競輪)の払戻金や、福引きの賞金品などが、一時所得に該当します。
一方の雑所得は、仕事の報酬といった継続性のあるものです。一時的でなく、かつ役務や資産譲渡の対価といった一時所得には該当しないものが、雑所得となります。
雑収入との違い
雑所得と間違いやすい言葉に「雑収入」があります。
雑収入とは、事業所得のうち本業以外の収入を指します。つまり、事業所得の一部なのです。
一方の雑所得は、事業所得や利子所得などに該当しない所得を指します。所得という括りで考えると、事業所得か雑所得かという点で大きく異なるのです。
雑所得扱いでも経費計上はできる!
「雑所得だと経費が使えないって本当?」と不安を抱く方もいるでしょう。
雑所得であっても、経費計上は可能です。しかし、何でも経費にできる訳ではありません。経費として認められるもの・認められないものを知って、正しく計上しましょう。
雑所得で経費にできるもの
雑所得で経費にできるものは、その所得を得るのに必須だったものです。具体的には、以下のようなものが経費として計上できます。
- 副業で使うパソコン
- 打ち合わせで使ったカフェの飲食代(全額でないケースあり)
- 取引先へ行くための交通費
なお、カフェ飲食代は一部しか経費にできない場合があります。例えば、ドリンクとは別にホットサンドやケーキなどを注文した場合です。あくまで必須の出費のみなので、ドリンク以外は経費として認められない場合もあります。
副業収入を雑所得とした場合の税金シミュレーション
副業収入を雑所得とした場合、税金がいくらかかるか知りたい方もいるでしょう。
今回は、年間所得5万円・15万円・30万円それぞれのケースで、所得税額を計算してみます。
- 5万円:50,000 × 5% = 2,500円
- 15万円:150,000 × 5% = 7,500円
- 30万円:300,000 × 5% = 15,000円
今回は課税所得額が200万円未満だったので、税率5%・控除なしで計算しました。所得税率および控除額は、前述のとおり課税所得額に応じて変動するので、計算する際は注意しましょう。
確定申告が必要になる副業ワーカーは?
確定申告が必要になる人は、以下のとおりです。
- 副業収入が20万円超の人
- 2ヶ所以上から給与をもらっている人
- 年間給与2,000万円超の人
- 一時所得が年間50万円超だった人
- 年末調整を忘れた、ミスがあった人
上記のような人は、正しい所得額を国に申告するために、確定申告を行う必要があります。
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確定申告のやり方!必要書類と流れについて
確定申告が必要な方は、期限までに忘れずに申告しましょう。今回は、確定申告で必要となる書類や、基本的な流れを解説します。
なお、より詳細な解説は以下の記事をご覧ください。
確定申告での必要書類
確定申告をするためには、以下の書類が必要です。
- 本人確認書類
- 確定申告書
- 決算書、収支内訳書など所得金額に関する書類
- 控除に必要な書類
- 経費を証明する書類(レシート、領収書)
- 銀行口座が分かるもの
上記のものを用意したうえで、確定申告書の作成をしましょう。
確定申告の基本的な流れ
確定申告の基本的な流れは、以下のとおりです。
- 売上や経費、控除などの書類をまとめる
- 書類を参照して提出書類を作成する
- 書類を所轄の税務署に提出する
- 所得税を納税する
- 必要書類を保管する
確定申告書の提出方法は、以下から選択できます。
- 所轄税務署の窓口に提出
- 所轄税務署の時間外収受箱に投函
- 所轄税務署に郵送
- e-Taxで電子申請
確定申告は毎年2月16日〜3月15日までに行います。15日が土日祝日だった場合は、週明け平日が申告期限になります。
確定申告をするメリット・デメリット
確定申告をすると、以下のようなメリットがあります。
- 還付金を受け取れる場合がある
- 各種控除を活用できる
- 赤字の繰り越しが可能(青色申告)
- 最大65万円の控除が受けられる(青色申告)
特に青色申告は、専従者給与を全額経費にできたり、赤字繰り越しができたりと、さまざまなメリットがあります。
一方で、手間がかかったり、種類によっては事前申請が必要だったりと、デメリットもあります。
- 書類準備や申告書作成など手間がかかる
- 青色申告は事前申請が必須
事業所得として確定申告する方法は?
「副業収入を事業所得にしたい」という方もいるでしょう。特に青色申告は事業所得でないと対象にならないので、なんとか事業所得にしたいと考える方も多いかと思います。
事業所得として申告するためには、以下の要素を満たさないといけません。
- 社会通念上、事業性がある規模の売上になっている(原則、年間収入300万円超)
- 年間収入300万円未満であるが、記帳・帳簿書類を作成・保管している
※年間収入300万円超であっても、記帳・帳簿書類を作成・保管していない場合、事業性を有していると判断されない場合がある
参考:国税庁『雑所得の範囲の取扱いに関する所得税基本通達の解説』
つまり、年間収入300万円を超えていて、かつ記帳・帳簿書類を作成していれば、事業所得として認められるということです。
また300万円を超えていなくても、帳簿書類を作成していれば、事業性があると認められるケースがあります。300万円ラインに達していない場合は、まず帳簿書類を作成しましょう。
2022年10月に、事業所得と雑所得の区別が明確化されたものの、細かいルールがあります。不安な点があれば、確定申告の前に税務署で質問しておきましょう。
確定申告で副業がバレないようにする対策方法
「確定申告をすると、副業がバレるのでは」と心配な方もいるでしょう。
確かに、確定申告の内容によっては、副業がバレてしまう可能性があります。会社に副業バレしたくない方は、以下のポイントを抑えておきましょう。
- 住民税の徴収方法を「普通徴収」にする
- 副業について口外しない
- 作業は自分のPC・携帯で行う
それでは、各ポイントについて詳しく解説します。
住民税の徴収方法を「普通徴収」にする
副業がバレる一番の原因が、住民税です。
- 会社員は、会社が住民税を代理で納税する「特別徴収」で納税している
- 副業をしていると、所得額が変わるため納税額も変動する
- 会社が代理納税する際に「金額が違う=給与以外の所得があるな」と副業がバレる
この住民税での副業バレを回避するために、確定申告で住民税の徴収方法を「普通徴収」にしましょう。
普通徴収にすると、確定申告分の住民税は自分で納めるので、会社の納税額は変わらなくなり、副業バレも回避できます。
副業について口外しない
人づてにバレるというのも、副業バレの原因として非常に多いものです。
副業収入が増えてくると、周囲に言いたくなってしまう方も多いでしょう。特に、月10万、20万と稼げるようになってくると、その頑張りや成果を誰かに言いたくなるものです。
しかし、どれだけ仲の良い人だったとしても、副業をしていると会社に言わない保証はありません。特に副業「そんなに稼いでるのか」と、妬みを買ってバラされるケースが多くあります。
また、話した相手が直接会社に言わずとも、噂が回ってバレる可能性も十分にあります。副業のようにお金が関わる噂は特にリスクがあるので、誰にも言わないほうが無難です。
作業は自分のPC・携帯で行う
ごく稀に、社用PCや社用携帯で副業をしている方がいます。
会社によりますが、社用PC・携帯には監視ソフトがインストールされていることがほとんどです。あなたが副業をしていることは、すぐにバレてしまいます。また、監視ソフトが入っていなかったとしても、予測変換や検索履歴、アプリ通知などから不意にバレることも少なくありません。
そもそも、社用PC・スマホは、会社が業務を行うために貸与している機器です。リスクが高まるだけなので、副業では絶対に使用しないようにしましょう。
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副業収入の確定申告に関するよくある質問
副業収入の確定申告に関しては、以下のような疑問を抱く方が多くいます。
- 確定申告しなかったらどうなる?
- 赤字だった場合も確定申告は必要?
- 消費税や住民税はどれくらい?
- 副業収入が100万円だったら税金はどれくらい?
- 確定申告をした方が良い(必須ではない)人の特徴は?
- なぜ副業禁止の会社があるの?罰則は?
よくある質問について以下で回答しますので、参考にしてください。
確定申告しなかったらどうなる?
確定申告が必要なのにも関わらず、申告しなかった場合、脱税になります。
そもそも確定申告とは、その年にいくら稼いで、いくら納税するのかを国に申告する手続きです。確定申告を行わないと、正しい納税ができなくなります。
「申告をしなかったら、納税せず逃げられるのでは?」と考える人もいるかもしれません。しかし、法人は誰にいくら給与を払ったか国に申告しているので、あなたが申告しなかったとしても、あなたに給与や報酬を支払っていることは把握されています。
また、国は必要に応じて、個人口座の入出金履歴を調べられます。そのため、脱税状態を続ければ、いつかバレてしまうのです。
納税は金銭的に大きな負担になりますが、国民として絶対に行わなければならないことです。しっかりと確定申告と納税をしましょう。
赤字だった場合も確定申告は必要?
赤字だった場合でも、確定申告をしたほうが良いケースがあります。なぜなら、払いすぎた税金を(還付金)として受け取れるケースがあるためです。
また、青色申告であれば赤字の繰り越しができるので、翌年以降の税金を減らせる場合があります。
赤字だった場合でも、必要に応じて確定申告をしましょう。
消費税や住民税はどれくらい?
副業ワーカーのなかには、消費税や住民税がいくらになるか不安に感じる方もいるでしょう。
まず消費税は、インボイス制度に登録した場合や、前々年の課税売上高が1,000万円超の場合に、納税することになります。
計算方法には「本則課税」と「簡易課税」がありますが、今回は簡易課税での計算方法を解説します。
- 売上にかかる消費税 – (売上にかかる消費税 × みなし仕入率) = 納税額
上記のように、売上にかかる消費税から、みなし仕入率を用いて仕入にかかった消費税額を差し引き、納税額を計算します。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
また住民税は、課税所得 × 10%が課税されます。
副業収入が100万円だったら税金はどれくらい?
副業収入が100万円だった場合、所得控除がなければ、5万円の所得税が発生します(税率5%、控除無し)。また、インボイス制度に登録していた場合は、別で消費税も納税する必要があります。
確定申告をしたほうが良い(必須ではない)人の特徴は?
必須ではないものの、確定申告をしたほうが良い人の特徴は、以下のとおりです。
- 年の途中で退職して年末調整をしておらず、再就職もしていない人
- 住宅ローン控除を利用できる人
- 特定支出控除が適用される人
- 医療費控除を利用できる人
- 寄附をした人
- アルバイトで源泉徴収を受けている人
上記のような人は、確定申告をすると納め過ぎた税金が戻ってくる可能性があります。副業ワーカーだけでなく、住宅ローン控除・寄付金控除・医療費控除を利用できる人も、確定申告をしましょう。
なぜ副業禁止の会社があるの?罰則は?
副業禁止の規定を設けている背景として、働き過ぎ防止があります。長時間労働で体調を崩し、会社での業務に支障が出るのを防ぐねらいです。また、機密情報を副業で漏らすリスクを抑えたい、といった目的もあります。
副業禁止の会社で働いているのに、副業を行った場合、状況によっては罰則があります。例えば、本業に支障が出ていて警告されたのに、副業を続けた場合です。また、副業先で機密情報を漏らしたり、本業の顧客を副業に誘導したり、本業で得た情報を使って競合事業を立ち上げたりした場合も、罰則が科される可能性があります。
具体的な裁判事例については、以下の記事をご覧ください。
まとめ
副業収入は、基本的に雑所得として確定申告します。申告し忘れると脱税になってしまうので、確定申告が必要な方は、期限までに行いましょう。
申告が必須でない人でも、確定申告をすれば還付金を受け取れる場合があります。本記事の内容を参考にして、自分は確定申告が必要なのか、申告はどのように行うのかを正しく理解しましょう。
- 副業収入は、基本的に「雑所得」になるよ
- ただし、帳簿作成など一定の要件を満たせば事業所得にできる場合も!
- 確定申告の内容によっては副業が会社に知られてしまうので、注意してね
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