車を買った際に「これって経費にして良いのかな?」と不安になったことはありませんか?個人事業主の場合、車の購入費用を経費として計上できます。しかし、購入金額をそのまま経費にすることは原則できず、さらに用途によっては計上できないケースもあるのです。
本記事では、車を購入された個人事業主の方に向けて、経費の計上方法を解説します。車の経費計上について詳しく理解できる内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
- 個人事業主は、車の購入費用・ガソリン代・駐車場代・タイヤ台などを経費にできるよ!
- 車関連の出費を経費にする際は「家事按分」と「減価償却」を忘れないようにしよう。
- 本当に事業に使っているのか、そしていくらの車をいつ買ったのかなどを証明できるようにしてね!
目次
個人事業主の車は経費として計上できる?
個人事業主の車は、経費として計上可能です。ただし、仕事で使うのか私用(プライベート)で使うのかによって、計上できるかは異なります。以下では、車の用途別に「経費にできるか・できないか」を詳しく解説します。
仕事でのみ使う車:計上可能
仕事で使用する車であれば、購入代金を経費として計上できます。仕事場までの移動や、商品の運搬などで使用する場合は、業務に関連する出費なので、経費扱いです。ポイントは「仕事でのみ」という点で、プライベートでも使用する場合は扱いが異なります。
私用でのみ使う車:計上不可
プライベートでしか使う予定のない車は、経費として計上できません。経費はあくまで業務に関連する出費なので、プライベートの出費は経費にあたらないのです。ただし、私用でのみ使う場合は経費として計上できませんが、後述するように「仕事・私用兼用」の場合は扱いが異なります。
仕事と私用どちらでも使う車:部分的に可能
仕事と私用どちらでも使う車は、購入金額の一部を経費として計上できます。兼用の場合は、走行距離や使用日数から、業務で使っただけの費用を経費計上しましょう。例えば「走行距離計10km / 仕事7km / 私用3km」の場合は、購入費用やガソリン代のうち70%を経費として計上します。
また「年間250日利用 / 仕事200日 / 私用50日」の場合は、車関連の出費のうち80%を経費として計上可能です。このように、仕事と私用で同じ車を使う場合は、それぞれどのくらいの割合かを把握しましょう。
その年に全額を経費にすることはできない
車の購入金額を、購入したその年に全額経費にすることはできません。車は何年も使用するのが一般的なので、使う年数にあわせて何年かに分けて経費計上するためです。
例えば、100万円したもので10年間使用することが想定される場合は、10万円の経費を10年間計上していきます。こうした考え方を「減価償却」といい、詳しい内容についてはこの後の項目で詳しく解説します。
個人事業主が経費として計上できるもの・できないもの
個人事業主が経費として計上できるのは、車の購入代金だけではありません。車は「修理代」「ガソリン代」「自動車税」などさまざまなお金がかかり、それらも経費にできます。
ただし、車関連の出費ならすべて経費にできる訳ではありません。以下の項目では、経費にできるものとできないものをそれぞれ見ていきましょう。
経費として計上できる車関連のもの
車関連で経費にできるものは、以下の通りです。
勘定科目 | 主な内容 |
減価償却費 | 車購入代金を減価償却したもの(後述) |
車両費 | ガソリン代、洗車代、車検費、点検費用 |
租税公課 | 自動車取得税、自動車重量税、自動車税 |
保険料 | 車両保険、自賠責保険、任意保険 |
地代家賃 | 駐車場代 |
旅費交通費 | 高速道路代、ETC代 |
消耗品費 | タイヤ代、エンジンオイル代 |
支払利息 | ローンの金利 |
上記のように、購入代金だけでなく消耗品費や駐車場代なども経費にできます。車関連の出費はひとつひとつの金額が大きいので、きちんと経費計上できるよう領収書やレシートを保管しましょう。なお、表にある「減価償却費」は、前述したように車の購入代金を耐用年数で割ったものです。
経費として計上できない車関連のもの
経費として計上できないのは「リサイクル預託金」です。リサイクル預託金とは、車が廃車となった場合のリサイクル費用を、あらかじめ所有者が支払っておくためのものです。このリサイクル預託金に関しては、経費計上できないのでご注意ください。
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「減価償却」や「耐用年数」について知ろう!
車を経費として計上する場合、前述したように「減価償却」をします。「減価償却」に基づいて計算する際には、「耐用年数」という概念を理解する必要があります。
減価償却とは?
減価償却とは、購入代金を何年かに分けて経費にするやり方です。車やパソコンのように何年にもわたって使用するものは、原則として減価償却をします。
減価償却をする場合は、耐用年数に応じた「償却率」を購入金額にかけて、減価償却費を算出しましょう。減価償却費が、その年に経費として計上できる金額です。なお、耐用年数や詳しい計算方法はこの後解説します。
車の耐用年数を知ろう
車の耐用年数は、車の種類や新車・中古車によって異なります。
車の種類・状態 | 耐用年数 |
普通自動車・新車 | 6年 |
軽自動車・新車 | 4年 |
貨物自動車 | ダンプ式4年、その他5年 |
耐用年数が残っている中古車 | 残りの耐用年数 + (経過年数 × 20%) ※1年未満の端数は切り捨て |
耐用年数が過ぎた中古車 | 2年 |
中古車を購入する場合、車両の耐用年数には注意が必要です。例えば、2015年製の普通自動車を2022年に購入した場合、耐用年数が過ぎているため、耐用年数は2年となります。
一方、4年落ちの普通自動車を購入した場合、耐用年数が残っているため、『(6年-4年) + (4年 × 20%) = 2.8年』となります。ただし、法律では小数点以下を切り捨てるため、耐用年数は2年となります。
定額法と定率法
減価償却費には「定額法」と「定率法」という2つの計算方法があります。
定額法 | 耐用年数に合わせた減価償却率を、購入金額にかけて計算 |
定率法 | その年の未償却残高に定率法の償却率をかけて計算 |
主な違いは、1年ごとの減価償却費の大きさです。定額法はもともとの金額におなじ償却率をかけて計算するため、減価償却費は毎年変わりません。一方、定率法は未償却残高に償却率をかけます。そのため最初の年の減価償却費が最も大きく、後になるほど小さくなります。
ただし、定率法は事前の届け出が必要で、届け出がなければ定額法で計算することになります。もし車の購入予定があって、定率法で減価償却したいと考えている方は、定率法の届け出を忘れないようにしましょう。
【参考:国税庁HP「No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)」】
いくらまで計上できる?車を経費にする際の計算方法
車を経費に計上する場合は、減価償却費を計算する必要があります。減価償却費の計算方法について「定額法」と「定率法」それぞれ見ていきましょう。
定額法で減価償却の計算をする場合
車の購入代金 × 償却率 = 減価償却費
前述した通り、償却率は耐用年数によって異なります。耐用年数ごとの償却率は、以下の通りです。
【引用:国税庁HP「減価償却資産の償却率等表」】
耐用年数 | 償却率 |
2年 | 0.500 |
3年 | 0.334 |
4年 | 0.250 |
5年 | 0.200 |
6年 | 0.167 |
ご自身の車の耐用年数に応じた償却率を、購入金額にかけることで、1年ごとの減価償却費が計算できます。
定率法で減価償却の計算をする場合
逓減法で減価償却の計算をする場合は、以下のようになります。
未償却残高(購入した年は購入価額) × 定率法償却率 = 減価償却費
※減価償却費が償却保証額(購入価額 × 保証率)を下回った場合、その年度から終了年まで「改定償却率」を用いて計算。定率法は「償却保証額」も計算する必要があるため、定額法よりも少し複雑です。しかし初年度の償却額が大きくなるので、買った年にたくさん経費として計上したい方には適しています。
定率法の償却率・保証率・改定償却率は以下の通りです。
耐用年数 | 償却率 | 保証率 | 改定償却率 |
2年 | 1.000 | – | – |
3年 | 0.833 | 0.02789 | 1.000 |
4年 | 0.625 | 0.05274 | 1.000 |
5年 | 0.500 | 0.06249 | 1.000 |
6年 | 0.417 | 0.05776 | 0.500 |
【引用:国税庁HP「減価償却資産の償却率等表」】
上記の表を見ながら、ご自身のお車の耐用年数に応じた償却率をかけて、償却費を出してみましょう。
リースの場合の計算方法
車をリースしている方でも、支払い料金を経費にできます。リース料の支払い時に、支払った金額を「支払手数料」などの名目で計上可能です。リースは減価償却の計算が不要で、経費計上しやすいのがメリットです。業務用の車はリースにする方も多いかと思いますが、忘れずに経費に入れましょう。
ローン購入の場合の計算方法
ローンで車を購入した場合、減価償却の計算自体は変わりません。ローンの場合は利息が発生しますが、支払い利息も経費として計上できます。例えば500万の車を頭金200万、残りを年利3%のローンで購入した場合、購入金額は500万として減価償却費を計算し、さらに利息を経費として計上します。
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個人事業主が車を経費にする際の条件
個人事業主が車を経費にする場合、いくつかの条件があります。以下に示すような条件を知らないと、追加で税金を徴収される可能性もありますので注意しましょう。
注意点は、4点あります。
- 車の名義は本人、または同一生計の人
- 仕事と私用兼用の場合は「家事按分」が必要
- 30万円までは一括で計上可能
- 台数に決まりはないが、複数台の計上には注意
以下で、それぞれについて詳しく見ていきます。
車の名義は本人、または同一生計の人
個人事業主が車の代金を経費として計上するときは、原則として本人名義の車でなくてはいけません。
例外として、生計が同じ親族の車であれば経費にできます。業務用の車の場合、名義が自分以外であるケースも考えられるので、経費計上する際は必ず確認しておきましょう。
仕事と私用兼用の場合は「家事按分」が必要
前述した通り、仕事と私用で同じ車を使っている場合は、それぞれの使用割合に応じて経費にできる金額が異なります。この計算を「家事按分(かじあんぶん)」といい、車関連の出費を経費として計上する場合は注意しなくてはなりません。
家事按分ができていないと、経費として認められず、後から追加で税金の支払い義務が生じる可能性もあります。特に個人事業主は、仕事と私用があいまいになってしまいやすいので、客観的に説明ができるようにしておきましょう。
30万円までは一括で計上可能
車の購入代金は減価償却をするため、一括で経費計上できないと解説しましたが、例外があります。例外のケースが、車の購入金額が30万円未満だった場合です。
30万円未満の車だと「少額減価償却資産の特例」が適用され、一括で経費として計上できます。少額減価償却資産の特例を利用する場合、以下の条件を満たしている必要があります。
- 青色確定申告の申請書を提出している
- 取得金額30万円未満、年間合計300万円が限度
- 青色申告決算書の減価償却費計算欄に「措法28の2」と記載する
- 適用期間は令和6年3月31日まで
適用期間はこれまでも延長されてきたため、今後も延長される可能性があります。なお、10万円未満であれば特例を使わず一括で経費にできます。
台数に決まりはないが、複数台の計上には注意
車の購入代金や関連費用にする場合、台数に関しては特に決まりがありません。1台でも10台でも、業務に使用するのであれば経費にできます。ただし、すべての車を業務で使用していると証明できるようにしておきましょう。
個人事業主が3台以上の車をすべて仕事で使うケースは多くないため、場合によっては不審に思われる可能性があります。国税調査が入っても問題ないように、業務で使用していると説明できるようにしっかり準備しておきましょう。
経費にする車を購入する際は「中古車」がおすすめ
個人事業主が車を購入するなら「中古車が良い」とされます。中古車がオススメされている理由は、節税効果が高めやすくなるからです。では本当に節税効果が高めやすいのか、そして「4年落ちが最適」という話は本当なのかについて、詳しく解説します。
なぜ中古車がおすすめなのか?
個人事業主が経費にする場合、中古車がおすすめされるのは、1回あたりに計上できる経費の金額が大きくなるためです。先ほどご紹介した減価償却率の表を、改めて見てみましょう。
引用:国税庁HP「減価償却資産の償却率等表」
耐用年数 | 償却率 |
2年 | 0.500 |
3年 | 0.334 |
4年 | 0.250 |
5年 | 0.200 |
6年 | 0.167 |
上記のように、耐用年数が長ければ長いほど償却率が低くなるので、減価償却費も少なくなります。
中古車の場合、何年落ちの車かにもよりますが、基本的に耐用年数は2〜3年程度でしょう。耐用年数が短い中古車は、償却率が高く1年あたりに計上できる経費(減価償却費)も多くなるので、節税効果が高くお得とされているのです。
4年落ちの車が節税になるのは本当?
この記事をご覧の方の中には「4年落ちが最もお得」という話を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。4年落ちが最適とされるのは、中古車の耐用年数は何年落ちかによって異なるためです。まず記事の前半でご紹介した、中古車の耐用年数について振り返ってみましょう。
車の状態 | 耐用年数 |
耐用年数が残っている中古車 | 残りの耐用年数 + (経過年数 × 20%)※1年未満の端数は切り捨て |
耐用年数が過ぎた中古車 | 2年 |
上記の計算をもとに、年式ごとの耐用年数を計算してみます。
年式 | 普通自動車の耐用年数 | 軽自動車の耐用年数 |
新車 | 6年 | 4年 |
1年落ち | 5年 | 3年 |
2年落ち | 4年 | 2年 |
3年落ち | 3年 | 2年 |
4年落ち | 2年 | 2年 |
5年落ち | 2年 | 2年 |
6年落ち | 2年 | 2年 |
上記のように、普通自動車の場合は「4年落ち」から耐用年数が変わりません。そのため、最も耐用年数が短くなる境目の4年落ちが、減価償却費も高額になりお得だとされているのです。ただし、4年落ちが最もお得なのは普通自動車の場合で、軽自動車は2年落ちが最も良いと言えます。
また、短期間で高額な経費として落とせるというだけで、経費計上できる合計額が爆発的に増えるといったものではありません。
まとめ
個人事業主は、車の購入費用や維持費、駐車場代などを経費にできます。経費にする際は「減価償却」を忘れずに行いましょう。減価償却をする際は、ご自身の車の耐用年数を知っておく必要があります。
特に中古車は、何年落ちの車かによって耐用年数が変わりますので、購入時の確認が必須です。また、仕事とプライベートどちらでも利用する車の場合は、家事按分が必要になります。家事按分を正しく行わないと、追加で税金がかかる場合もあるのでご注意ください。
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