紙の約束手形は、2026年度末にあたる2027年3月31日を区切りに、電子交換所での交換が終了します。
ただし、約束手形そのものが法律で一律に禁止されるわけではありません。
政府と銀行界が進めるのは、紙の手形・小切手から、でんさいやインターネットバンキングによる振込への全面的な電子化です。
手形を振り出す企業だけでなく、手形を受け取って割引してきた企業も、決済方法と資金繰りの両方を見直す必要があります。

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約束手形とは?お金の支払いを先延ばしにできる証券
約束手形は、振出人が受取人に対し、決められた期日に一定の金額を支払うと約束する有価証券です。
振出時点で代金全額を支払わず、将来の支払期日まで入金を待ってもらえるため、企業間取引の決済に使われてきました。
振出側は手元資金を残せる一方、受取側は期日まで現金を受け取れません。
受取側が期日前に資金を必要とする場合は、金融機関などへ手形を譲渡する手形割引が使われてきました。
約束手形は2026年度末に廃止される
全銀協は、2027年3月31日を電子交換所における手形・小切手の交換取扱終了日としています。
一般に約束手形の廃止と呼ばれますが、正確には紙の手形・小切手の利用をやめ、電子的な決済へ切り替える取り組みです。
2027年4月以降も手形そのものが直ちに無効になるわけではありませんが、電子交換所を介した決済はできません。
金融機関ごとに手形帳の発行や取立受付を前倒しで終了する場合があるため、取引銀行の期限を確認しましょう。
約束手形廃止までの主な流れ
| 時期 | 変更内容 |
|---|---|
| 2024年11月1日 | 下請法の対象取引で、決済まで60日を超える長期の手形などが指導対象になった |
| 2026年1月1日 | 取適法の対象取引で、同日以後の発注分に対する手形払いが禁止された |
| 2027年3月31日 | 電子交換所における手形・小切手の交換取扱いが終了する |
出典:全国銀行協会「加藤会長記者会見」、公正取引委員会「サプライチェーン全体での支払の適正化に関する事業者団体等への要請について」
2024年11月から手形の支払期日は60日以内が原則になった
2024年11月1日から、下請法の対象取引では、交付日から決済までの期間が60日を超える長期の手形などは、割引困難な手形に該当するおそれがあるとして指導対象になりました。
それ以前の基準は繊維業90日、その他の業種120日でしたが、業種を問わず60日へ短縮されています。
さらに2026年1月1日以降に発注された取適法の対象取引では、手形を交付して代金を支払うこと自体が禁止されています。
60日ルールはすべての企業間取引に一律で適用されるものではないため、自社の取引が取適法の対象かも確認が必要です。
約束手形が廃止される理由
約束手形の全面的な電子化が進められる理由は、受取側の資金繰り負担と、紙を扱う事務負担を減らすためです。
受取側が入金まで数か月待たされ資金繰りが悪化する
約束手形は、商品やサービスを納品してから代金を受け取るまでに長い期間が空く場合があります。
受取側は売上が確定していても、支払期日までは仕入代金、人件費、外注費などを別の資金で支払わなければなりません。
発注側が長い支払期間を設定すると、その負担を受注側が引き受ける形になります。
印紙代・郵送・保管など事務の手間とコストが大きい
紙の約束手形には、作成、押印、郵送、受領、保管、取立依頼といった作業が発生します。
手形の額面に応じた印紙税に加え、郵送料や保管の費用も必要です。
振出側と受取側の双方で経理処理が増えるため、電子化による事務量の削減が求められています。
紙の手形は紛失・盗難や不渡りのリスクがある
紙の手形は現物を扱うため、郵送中や保管中の紛失・盗難リスクがあります。
記載内容の誤りや押印漏れがあれば、訂正や再発行も必要です。
支払期日に振出人の当座預金が不足していれば不渡りとなり、受取側は予定していた資金を得られません。
約束手形の廃止で何が変わる?事業者への影響
約束手形の廃止により、紙の手形を前提にしていた決済と資金繰りを続けるのが難しくなります。
手形での支払い・受け取りができなくなる
電子交換所での交換終了後は、金融機関を通じて紙の手形を決済する現在の方法を使えなくなります。
手形帳の発行終了日、振出期限、取立受付期限は金融機関ごとに異なる場合があります。
取引先と銀行振込やでんさいへの切り替えを決めないまま期限を迎えると、請求や支払いの実務に支障が出ます。
手形を前提にしていた資金繰りの見直しが必要になる
振出側は支払いを先延ばしにできた期間が短くなり、従来より早い時点で預金残高を確保する必要があります。
受取側も、入金日と仕入代金や人件費の支払日を改めて確認しなければなりません。
建設業や製造業など、手形取引が多い業種ほど、取引先との調整件数や会計処理の変更が増えます。
受取側は手形割引による早期現金化ができなくなる
紙の約束手形の発行がなくなれば、その手形を金融機関などへ譲渡して現金化する手形割引も使えません。
手形割引を運転資金の確保に使ってきた企業は、でんさい割引やファクタリングなど、別の方法を準備する必要があります。

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約束手形の代わりになる決済手段はでんさい
紙の約束手形から切り替える決済手段には、銀行振込とでんさいがあります。
手形のように将来の支払期日を設定し、必要に応じて譲渡や割引も行いたい場合は、でんさいが候補になります。
でんさいは手形を電子にした決済の仕組み
でんさいは、でんさいネットが取り扱う電子記録債権です。
紙の証券を発行せず、インターネット上の記録によって債権の発生、譲渡、支払いを行います。
支払期日になると、支払企業の口座から受取企業の口座へ自動で送金されるため、金融機関へ手形を持ち込む取立手続きも不要です。
紙のコストや紛失・郵送の手間がなくなる
でんさいには紙の現物がないため、手形の作成、押印、郵送、保管にかかる作業を減らせます。
手形と異なり印紙税が課されず、郵送代もかかりません。
紛失や盗難の心配がなく、受け取った債権の一部だけを分割して譲渡や割引に使える点も紙の手形との違いです。
でんさいを使うには取引先も金融機関で利用登録が必要
でんさいで支払うには、自社と取引先の双方がでんさいネットを使える状態にしておく必要があります。
自社だけが金融機関へ申し込んでも、取引先が未登録であれば、その取引先へでんさいで支払うことはできません。
取引先がでんさいネットへ登録済みか確認し、でんさいネットから付与された9桁の番号など取引に必要な情報を共有してもらい、支払条件や開始時期を合意してから切り替えましょう。
出典:でんさいネット「でんさいとは」、でんさいネット「当社と取引先とで窓口金融機関が異なりますが、でんさいで支払うことはできますか」、三協信用金庫「でんさいサービス操作ガイド」
でんさいとファクタリングの違いを詳しく知りたい人は、下記の記事も参考になります。
約束手形の廃止に向けて事業者がやること
約束手形の廃止対応は、取引先との合意、金融機関への申込、社内実務の変更の順で進めます。
STEP1 取引先と今後の支払い・受け取り方法をすり合わせる
現在の取引先を、手形を振り出している先と受け取っている先に分け、銀行振込とでんさいのどちらへ切り替えるか確認しましょう。
支払期日、振込手数料、でんさいの手数料もあわせて決めておくと、切り替え後の認識違いを防げます。
STEP2 でんさいに移すなら金融機関で利用登録する
でんさいを使う場合は、取引金融機関へ利用を申し込みます。
金融機関によって申込書類、審査、手数料、使える口座が異なるため、現在の取引銀行へ確認しましょう。
取引先にも登録を依頼し、でんさいネットから付与された9桁の番号など、取引に必要な情報を共有してもらいます。
STEP3 廃止までのスケジュールを決めて社内で共有する
金融機関の手形帳発行終了日と取立受付終了日を起点に、最終振出日、取引先への案内日、新しい決済方法の開始日を決めます。
経理規程、請求書の記載、会計ソフト、承認手順の変更内容も社内で共有しましょう。
手形割引を使っている場合は、資金が不足する時期と金額を確認し、代わりの現金化方法も同じ日程で準備します。
手形が使えなくなった後、入金を待たずに現金化する2つの方法
手形割引の代わりに早期現金化する方法は、でんさい割引とファクタリングです。
ファクタリングは売掛債権の売買ですが、でんさい割引は金融機関で融資取引として扱われる場合があります。
対象となる債権、必要な登録、審査、手数料も異なるため、資金が必要になる時期や金額に合わせて選びましょう。
でんさいを「でんさい割引」で早期に現金化する
でんさい割引は、受け取ったでんさいを支払期日前に金融機関へ譲渡し、手数料を差し引いた資金を受け取る方法です。
必要な金額だけ分割して譲渡できるため、紙の手形よりも金額を調整しやすい点がメリットです。
一方、でんさいの受取には取引先を含む双方の登録が必要で、割引できるかどうかは金融機関の審査で決まります。
まとまった金額のでんさいを継続的に受け取り、取引金融機関との関係がある企業に向いています。
出典:でんさいネット「ご契約者さま向け でんさい活用ガイド」
売掛金(請求書)をファクタリングで早期に現金化する
ファクタリングは、入金前の売掛金をファクタリング会社へ売却し、手数料を差し引いた資金を受け取る方法です。
請求書や取引の証拠があれば申し込めるサービスがあり、取引先がでんさいを使っていなくても選択できます。
一般的な買取ファクタリングは償還請求権がなく、売掛先が倒産した場合の未回収リスクはファクタリング会社が負います。
ただし、手数料は会社や契約内容によって異なり、大口の資金調達より少額を短期間で必要とする場合に向くサービスもあります。
手形割引とファクタリングの違いを確認したい人は、下記の記事も参考になります。
売掛金を現金化する方法をまとめて比較したい人は、下記の記事も参考になります。

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| 必要書類 | 本人確認書類・請求書・入出金明細の3点 |
個人事業主向けファクタリングの仕組みや選び方を知りたい人は、下記の記事も参考になります。
請求書を現金化する手順と必要書類を確認したい人は、下記の記事も参考になります。
約束手形の廃止に関するよくある質問
Q. 手元にある約束手形は廃止後どうなる?
2027年3月31日を過ぎたからといって、手元の約束手形が法律上直ちに無効になるわけではありません。
ただし、電子交換所を介した交換が終わるため、現在と同じ方法で取立できない可能性があります。
すでに受け取っている手形は支払期日と取立受付期限を確認し、取引銀行へ早めに相談しましょう。
Q. 小切手も廃止される?
小切手も約束手形と同様に、2027年3月31日で電子交換所における交換取扱いが終了します。
法律によって小切手そのものが一律に禁止されるわけではありませんが、金融機関が小切手帳の発行や取立を前倒しで終了する場合があります。
今後の支払いは、銀行振込や電子的な決済へ切り替える必要があります。
Q. 個人事業主・フリーランスも影響を受ける?
個人事業主やフリーランスでも、約束手形や小切手を振り出す、受け取る、割引する取引があれば影響を受けます。
取引先から受け取る決済方法が銀行振込だけなら、紙の手形廃止による直接の変更はありません。
今後でんさいを受け取る場合は、個人事業主も金融機関を通じた利用登録が必要です。
まとめ
約束手形の廃止とは、2027年3月31日の交換取扱終了に向け、紙の手形・小切手を電子的な決済へ切り替える取り組みです。
取引銀行の手形帳発行期限と取立受付期限を確認し、取引先と銀行振込またはでんさいへの切り替えを進めましょう。
でんさいは紙のコストや紛失リスクを減らせますが、自社と取引先の双方が使える状態にしておく必要があります。
手形割引の代わりに早期現金化したい場合は、でんさい割引とファクタリングの条件を比較してください。
少額の請求書を短時間で現金化したい場合は、ペイトナーのファクタリングも選択肢になります。

- 2027年3月31日で紙の手形・小切手の交換取扱いが終わるよ
- でんさいへ移すなら、自社と取引先の双方で登録と条件確認を進めよう
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