「副業しているけど、開業届を出したほうがいいのかな?」「会社員は個人事業主になれないんじゃないの?」
副業している会社員の方は、上記のような悩みを持つのではないでしょうか。副業をしている方は、まず個人事業主とは何なのか、どうすれば個人事業主になれるのかを知りましょう。
本記事では、副業している会社員でも個人事業主になれるのかを詳しく解説します。開業届の提出方法や確定申告のやり方なども解説しますので、ぜひ参考にしてください。
- 会社員でも個人事業主になれるよ!
- 副業収入が20万円を超えたら、開業して確定申告をしよう
- 開業する際には、確定申告の種類やインボイス制度登録についても考えよう!
目次
個人事業主とは?
個人事業主とは、開業届を出して事業を行っている人のことです。企業とは異なり、個人で事業を営むので「個人事業主」と呼びます。個人事業主は、仕事を獲得する営業活動から、実際の業務、経理業務まで全てを自分でこなすのが一般的です。
個人事業主とフリーランスの違い
個人事業主とフリーランスの違いは、開業届を提出しているかどうかです。個人事業主は開業届を出しているのに対して、フリーランスは必ずしも開業届を出している訳ではありません。フリーランスは開業届の提出状況に関わらず、個人として取引先と契約を結んで業務を行う働き方を指します。つまりフリーランスは、個人事業主をふくむもので、個人で事業を営んでいる人全般を指すのです。
個人事業主になるメリット
個人事業主になるメリットは、以下のとおりです。
- 自分の裁量で働ける
- 法人より手続きが簡単
- 開業経費が少なく済む
個人事業主は、ライフスタイルにあわせて柔軟に働けるのが魅力です。個人事業主は自分で営業活動から経理まで全てを行います。そのため、どのくらい仕事を受けるのか、どんなペースで働くかを調整しやすいのです。
また、法人よりも開業や経理関連の手続きが簡単なのも魅力です。法人のように、開業に関して費用がかかったり、税理士を雇う費用がかかったりすることはありません。利益が法人並みに多くならない限りは、確定申告も自分自身で行えるでしょう。
個人事業主になるデメリット
個人事業主になるデメリットは、以下のとおりです。
- 利益が増えると所得税負担が重くなる
- 社会的な信用を高めにくい
売上が発生すると、会社員や個人事業主は「所得税」を、法人は「法人税」を納める必要があります。所得税や法人税の税率は売上額によって異なりますが、所得900万円を超えると所得税が33%となり、法人税よりも税率が高くなってしまうのです。そのため、売上が800万円を超えてきたあたりから、個人事業主は法人設立を検討したほうが良いとされています。
また、個人事業主は会社員よりも社会的信用が低い傾向にあります。これは、会社員のように一定の収入が得にくいためです。個人事業主は、体調を崩したり営業がうまくいかなかったりすれば、収入がゼロになる可能性があります。社会的信用が得にくく、ローンや賃貸などの審査が通りにくいのは個人事業主になる大きなデメリットです。しかし、もちろん一定の売上を数年間にわたり上げられていたり、事業で高い実績を上げられれば、社会的信用は高まっていきます。
会社員でも個人事業主になれる?開業目安について
副業をしている会社員の方は「会社員 兼 個人事業主ってできるのか?」と疑問に感じるかもしれません。また、売上がいくらくらいになったら開業すべきか迷う方もいると思います。以下では、会社員でも個人事業主になれるのか、また開業目安はいくらなのかについて解説します。
開業届を提出すれば個人事業主になれる
会社員でも、開業届を提出すれば個人事業主になることが可能です。会社員として働きつつ、個人事業主として働くことを「副業」や「兼業」などと呼びます。
なお、副業をしている会社員が開業届を出していなくても、違法にはならず罰則もありません。ただし、開業届を出していないと青色確定申告ができなかったり、事業実態の証明ができず融資等が受けられなかったりするので注意しましょう。
会社員が開業届を出す目安
会社員が開業届を出す目安としては、副業収入(所得)が20万円になったタイミングです。開業届を出すと青色確定申告ができるようになり、その青色確定申告が必要になってくるのが副業所得20万円ラインだからです。では、そもそも確定申告はどういった条件を満たす場合に必要なのでしょうか?
- 給与とは別の所得が20万円を超えた場合
- 給与を2ヶ所からもらっている場合
- 給与所得が2,000万円を超えた場合
副業収入は「給与とは別の所得」なので、20万円を超えたら確定申告が必要となります。なお、この場合は「所得」である点に注意しましょう。所得とは、以下の方法で計算した金額です。
- 売上 − 経費 = 所得
確定申告には「白色確定申告」と「青色確定申告」があり、青色のほうが節税効果が高くなります。そのため、確定申告が必要となる副業所得20万円を達成したタイミングで、青色確定申告をするのに必要な開業届を提出するのが良いのです。
開業届を提出して個人事業主になる方法
会社員が個人事業主になりたい場合は、開業届を出すだけで手続きが完了するので非常に簡単です。ただし、書類作成についてはいくつか分かりにくい部分があります。また、青色確定申告を利用したい場合は別の手続きが必要になるので注意が必要です。以下では、会社員が開業届を提出して個人事業主になる方法を解説します。
開業届を提出する流れ
開業届を提出する流れは、以下のとおりです。
- 開業届を作成する
- 所轄の税務署に提出する
まずは開業届を作成しましょう。開業届は国税庁のHPからダウンロードできるほか、税務署で紙を受け取ることもできます。開業届にはマイナンバーを記入するので、マイナンバーカードもしくは個人番号通知書をご準備ください。
開業届を作成し提出するには、以下の3つの方法があります。
- 税務署の窓口で提出する
- 所轄の税務署に郵送する
- e-Taxで提出する
記入内容に不安がある場合は、税務署の窓口で確認してもらったうえで提出するのがおすすめです。税務署に行く時間がない場合は、郵送やe-Taxで提出してください。
開業届の提出に併せて行う手続き
開業届を提出する際には、確定申告やインボイスなどの手続きもあわせて行いましょう。確開業届を提出する際に併せて行うべき手続きは、以下の3つです。
- インボイス制度の登録
- 消費税簡易課税制度選択届出手続
- 青色申告承認申請
インボイス制度の登録をおこなって「適格請求書発行事業者」になる場合は、郵送もしくはe-Taxにて「適格請求書発行事業者の登録申請手続」を行いましょう。なお、インボイス制度については以下の記事もご覧ください。
インボイス制度に登録する方で「簡易課税制度」を利用したい場合は、併せて「消費税簡易課税制度選択届出手続」も提出します。簡易課税制度や仕入税額についても、関連記事を参考にしてください。
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副業している会社員の確定申告
副業している会社員でも、副業収入が20万円を超えたら確定申告を行わなければなりません。確定申告を行う際は、まず白色・青色どちらにするかを考えたうえで、必要な手続きを行いましょう。以下では、確定申告の種類や、手続き方法などを解説します。
白色申告・青色申告の違い
確定申告には、白色と青色があります。具体的な違いは、以下のとおりです。
白色確定申告 | 青色確定申告 | |
控除額 | 0円 | 10〜65万円 |
事前申請 | 不要 | 必要 |
申告作業 | 簡単 | 少し難しい |
白色確定申告は、事前申請の必要なく行える方法です。青色確定申告よりも提出書類が少ないので、簡単に確定申告を行えるのが魅力となっています。しかし、手続きが簡単な代わりに控除が使えないので、節税がしにくいのがデメリットです。
青色確定申告は、最大で65万円の控除が利用できる方法です。10万円控除と65万円控除の2種類があり、65万円のほうは保存帳簿の多さや記帳方式などが異なります。65万円のほうが書類作成が煩雑なものの、会計ソフトを使えば簡単に作れるので、65万円控除のほうがおすすめです。
青色申告承認申請書の提出方法
青色申告承認申請書は以下の方法で提出できます。
- 郵送
- 窓口で開業届と一緒に提出
- e-Taxで提出
なお青色申告承認申請書は、申告したい年の3月15日までに提出する必要があります。ただし開業日が1月16日以降だった場合は、開業から2ヶ月以内に承認申請書を提出すれば問題ありません。承認申請書を提出し忘れると青色申告ができず、控除も使えなくなるのでご注意ください。
確定申告書の作成方法
確定申告書の作成方法は、白色か青色かによって異なります。まずは、それぞれの確定申告において必要となる書類と帳簿(金銭の流れや取引状況などを記録した書類)を確認しましょう。
白色申告 | 青色申告 (10万円控除) | 青色申告 (65万円控除) | |
提出書類 | ・確定申告書B ・収支内訳書 | ・確定申告書B ・青色申告決算書 ・第三表 ・第四表 ※状況によって不要な書類あり | ・確定申告書B ・青色申告決算書 ・貸借対照表と損益計算書 ・第三表 ・第四表 ※状況によって不要な書類あり |
提出帳簿 | ・法定帳簿 ・任意帳簿 | ・現金出納帳 ・経費帳 ・売掛帳 ・買掛帳 ・固定資産台帳 | ・総勘定帳 ・仕訳帳 ・売掛帳 ・買掛帳 ・現金出納帳 ・固定資産台帳 |
必ず必要になるのは「確定申告書B」です。確定申告書Bには、以下の内容を記入していきます。
- 住所/氏名
- 収入などの金額
- 所得金額
- 控除額
- 税額
- その他の情報
- 還付受取用の口座
確定申告書Bを作成する方法には、手書きおよびエクセル等での電子作成があります。現在では、確定申告ソフトを使って作成するのが一般的です。確定申告ソフトは利用料がかかりますが、青色確定申告で必要になる帳簿も含めて簡単に作成できるので、ぜひ導入しましょう。
「ソフト利用料を払いたくないけれど、ちゃんと作れるか不安」という方は、国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用するのもおすすめです。また、税務署で確定申告書の相談会を行っている場合もあります。相談会に関しては予約が必要なので、お近くの税務署で相談予約を受け付けていないか確認してみてください。
確定申告書の提出方法
確定申告書の提出方法は以下のとおりです。
- 所轄税務署の窓口で提出
- 所轄税務署または業務センターに郵送
- e-Taxで電子申請
自宅から申請したい場合は、郵送もしくはe-Taxでの電子申請がおすすめです。なお、e-Taxは事前登録が必要で、原則としてマイナンバー連携なども必要になるので、提出前に準備をしておきましょう。
会社員が個人事業主になる際のよくある質問
会社員が個人事業主になる場合、以下のような疑問・不安を抱く場合が多くあります。
- 開業届を出すと会社に副業がバレる?
- 副業禁止でも開業届を出して副業していい?
- 確定申告書を出すと副業がバレる?
- 副業でFXをしている場合でも個人事業主になるべき?
以下では、会社員が個人事業主になる際のよくある質問4つに回答していきますので、参考にしてください。
開業届を出すと会社に副業がバレる?
開業届を出しても、副業していることが会社にバレることはありません。開業届を出したからといって、税務署から勤務先に通知がいくことはないからです。ただし、後述するように確定申告を行ったり、副業先で社会保険に加入したりするとバレる可能性があります。開業届を提出しただけでは、社内やSNSなどで言及しない限りバレませんのでご安心ください。
副業禁止でも開業届を出して副業していい?
前提として、企業が定める副業禁止ルールは法的拘束力がありません。そのため、副業禁止の会社で働きながら、開業届を出して副業をしたとしても、訴えられたり逮捕されたりする可能性はほぼないのです。
ただし、以下のようなケースは会社から訴えられたり、解雇理由として成立してしまう可能性があります。
- 本業に明らかな支障が出る働き方をした
- 会社での業務中に知り得た情報を使って個人事業を成功させた
- 会社の競合となる事業を行った
- 病気・出産などで手当をもらいながら休業しているときに副業をした
上記のようなケースは、会社に損失を与える可能性があるため絶対にNGです。例えば、深夜に副業をしていて会社での業務中に寝ていたり、機密情報を使って個人事業を行ったりすれば、解雇理由になる可能性があります。
また直接解雇にならなくても、退職勧告をされる可能性もあります。職場の人間関係が悪化して居づらくなるケースもあるので、注意しましょう。副業禁止の会社で副業をする場合は必ず自己責任で行い、企業に損失を与えたり、信義に反したりしない範囲で行うようにしてください。
確定申告書を出すと副業がバレる?
確定申告を行った場合は、会社に副業がバレる可能性があります。副業バレの主な原因は、以下のとおりです。
- 住民税の金額が多い
- 社会保険料の金額がおかしい
よくあるのは、住民税の金額が給与から算出したものより多いケースです。住民税は収入額によって変動するので、副業で収入が増えると、住民税額も変わってしまいます。住民税額で副業がバレないように、確定申告書の第二表にある「住民税に関する事項」を「普通徴収」にしておきましょう。
また、副業でアルバイト・パートをしていた場合、条件を満たすと社会保険に加入する必要があります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2ヶ月超の雇用期間が見込まれている
- 学生ではない
- 従業員数51人以上以上の企業
参考:厚生労働省『パート・アルバイトのみなさま』
これまで従業員101人以上の企業が対象でしたが、2024年10月からは51人以上の企業が対象と対象範囲が広がりました。給与合算額をもとに算出した社会保険料は、本業の会社に通知がいってしまいます。そのため、社会保険料が本業のみの場合よりも多いと知られて、副業がバレてしまうのです。どうしても副業バレを防ぎたい場合は、社会保険料の加入対象にならない範囲で副業をしましょう。
副業でFXをしている場合でも個人事業主になるべき?
副業でFXをしている場合、個人事業主になる義務はありません。また、FXは原則として事業所得ではなく「雑所得」という扱いになるので、事業収入がなく個人事業主として認められにくい場合があります。そのため、個人事業主になりたい場合は継続してFX収入を上げ続けないといけません。
なお、給与以外の収入が20万円を超えてきたら、確定申告を行う必要があります。開業届の提出状況にかかわらず、FXの雑所得が20万円を超えたら、必ず確定申告を行ってください。
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まとめ
副業をしている会社員であっても、開業届を提出して個人事業主になれます。開業届を提出しておけば、最大65万円の控除を使える青色確定申告を利用できるようになってお得です。ただし、青色確定申告は書類作成が煩雑になるので、税務署の相談会や確定申告ソフトなどをうまく活用しましょう。
なお、給与とは別の所得が20万円を超えたら、必ず確定申告をしましょう。確定申告をせず所得税を納税していないと、脱税になるので注意しましょう。本記事の内容が、開業届や確定申告について理解を深めるのに役立てば幸いです。
- 会社員でも個人事業主になれるよ!
- 副業収入が20万円を超えたら、開業して確定申告をしよう
- 開業する際には、確定申告の種類やインボイス制度登録についても考えよう!
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