労災保険の「特別加入」についてご存じでしょうか?ある程度の知識はあるかもしれませんが、詳細や加入プロセスについては未だに不明瞭な方も多いのではないでしょうか。労災保険は、労働者が仕事中や通勤途中に発生した事故や怪我に対する保険です。フルタイムの従業員であれば、通常は雇用主が加入手続きを行いますが、フリーランスの場合は自身で手続きを進める必要があります。
中でも『特別加入』とは、フリーランスが自主的に労災保険に加入する制度で、労働者としての権利を守る重要な手段の一つです。特に、仕事に関連する怪我や事故が発生した場合、特別加入によって経済的な安心感を得ることができます。特別加入の方法や手続きについて詳しく解説いたしますので、ぜひ参考にしてください。
- フリーランスは、労災保険に「特別加入」という形で加入できるよ!
- 加入のためには細かい条件があるから注意が必要だけど、充実した補償が受けられるから、何かあった時も安心!
- もし条件を満たしているなら、ぜひ検討してみてね!
労災保険の特別加入制度とは?
本来、労災保険は、企業に雇用されている従業員しか加入できません。しかし、個人で事業を行うフリーランスも「特別加入」という制度を使えば、労災保険に加入できるのです。
通常加入できるのは「労働者」や「従業員」のみ
労災保険は、労働者が勤務中に事故にあったときに、治療費や休業費用などの給付を行う公的制度です。労災保険は、従業員を雇用する全ての事業主に加入が義務づけられています。補償の対象となるのは、労働基準法で定められている「労働者」で、企業に雇用される全ての従業員がこれに該当します。
一方、企業に雇用されないフリーランスは「労働者」とみなされず、労災保険の対象外とされます。また、中小企業の事業主についても「従業員」ではないため、労災保険の補償対象になりません。
フリーランスは労災保険に『特別加入』できる
近年、フリーランスなどの労災保険で補償されない事業者も、任意で労災保険に加入できるようになりました。これを「労災保険の特別加入」といいます。特別加入できるのは、労働者と同じように労災を被る可能性のある事業者です。
フリーランスが労災保険に特別加入するメリット
フリーランスが労災保険に加入する意義としては、まず、充実した補償が受けられるということです。フリーランスは、企業に雇用される従業員とは違い、業務にかかる責任は全て自分が負います。その分、身体を負傷した際の事業への損害は大きく、最悪の場合仕事を失ってしまう可能性もあります。そうした場合に労災保険に入っておけば、治療費の負担がなくなったり、休業中も給付金が受け取れたりと、大きな損失の補てんになるのです。また、労災保険は国が運営する保険制度なので、安心して加入できるのもポイントです。
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特別加入できる事業者は?
特別加入制度は、通常労災保険の対象とならない人が加入できる制度ですが、実際、どのような事業者が該当するのでしょうか?特別加入できる事業者は、以下の通りです。
- 中小事業主等
- 一人親方
- 特定作業従事者
- 海外派遣者
- 芸能関係作業従事者
- アニメーション制作作業従事者
- 創業支援等措置に基づき事業を行う者
- 原動機付自転車又は自転車を使用して行う貨物運送事業者
- IT関係のフリーランス
- 柔道整復師
それぞれについて、以下で詳しく見ていきましょう。
中小事業主等
労災保険においては、社長や役員などは補償の対象になりません。しかし、一定規模以下の企業の事業主であれば、労災保険に特別加入することができます。加入できる事業主の業種と企業規模は次の通りです。
企業規模 | 業種 |
労働者数50人以下 | 金融業・保険業・不動産業・小売業 |
労働者数100人以下 | 卸売業・サービス業 |
労働者300人以下 | その他 |
上記のような中小企業においては、事業主も労働者と同様の仕事をこなすことが多くなるでしょう。そうなると当然、労働者と同じリスクを負うため、労災保険の特別加入も認められているというわけです。また、事業主以外にも以下の者が特別加入を認められています。
- 事業主の家族従業者
- 中小事業主が法人その他の団体である場合の、代表者以外の役員
一人親方
労働者を雇用せずに特定の業務を個人で行う「一人親方」も、特別加入することができます。一人親方の職種は、以下の7つに限定されます。
- 自動車を使用する旅客(個人タクシーなど)や貨物の運送業
- 土木・建築・その他工作物の建設・改造・保存・現状回復・修理・変更・破壊もしくは解体やその準備(大工・左官・とび職)
- 漁船による水産動植物の採捕業(自営の漁師など)
- 林業の事業
- 医薬品の設置販売事業
- 再生利用の目的となる廃棄物などの収集・運搬・選別・解体などの事業
- 船員法第1条に規定する船員が行う事業
こうした仕事は、業務災害を被るリスクが特に高く、労災保険による保護が必要とされます。また、一人親方は、通勤や業務形態などについて労働者とほとんど変わらないことも、特別加入が認められている理由です。
特定作業従事者
労働者を雇用せずに特定の作業を行う「特定作業労働者」も特別加入することができます。以下の6つの作業に就いている方が対象です。
- 特定農作従事者
- 特定農作作業機械作業従事者
- 国又は地方公共団体が実施する訓練従事者
- 家内労働者およびその補助者(特に危険度の高い作業に従事する者)
- 労働組合等の常勤役員(特定業務に従事する一人専従役員)
- 介護作業従事者および家事支援事業者
こうした業務は、危険な機械や動物、有害薬品などに接する機会が多いため、特別加入の対象となっています。
海外派遣者
海外派遣者も、日本の労災保険への特別加入をすることができます。本来、労災保険は「属地主義」という法律の原則に基づき、海外では適用されません。そのため、海外派遣されて働く労働者は、日本の労災保険ではなく海外の災害補償等に加入することとなります。
ただし、これには問題があります。派遣先の国によっては、災害補償がない場合や、あったとしても補償内容が不十分な場合があります。そこで、海外派遣者も十分な補償が受けられるよう、日本の労災保険に特別加入することが認められているのです。
芸能関係作業従事者
芸能関係の作業従事者は、2021年4月より、新しく特別加入対象となりました。実演関係者、制作関係者両方が加入できます。それぞれ、以下の職種が加入対象です。
俳優(舞台俳優、声優、テレビ映画俳優) / 舞踏家(ダンサー、バレリーナ、日本舞踊) / 音楽家(歌手、演奏家、シンガーソングライターなど) / 演芸家(落語家、漫才師、司会、DJなど / スタントマン / その他
監督 / 撮影 / 照明 / 音響 / 録音 / 大道具 / 美術装飾 / 衣装 / ヘアメイク / スクリプター / アシスタント / マネージャー / その他
なお、芸能関係作業従事者が特別加入する際の区分は「特定作業従事者」です。
アニメーション制作作業従事者
こちらも、2021年4月より新しく特別加入可能となりました。アニメーション制作に関わるフリーランスは、基本的に対象となります。具体的には、以下のような職種です。
キャラクターデザイナー / 絵コンテ / 作画 / 背景 / 監督 / 演出家 / 脚本家 / 編集 / 音響、照明など
声優は、「アニメーション制作作業従事者」ではなく、「芸能関係作業従事者」にあたります。また、アニメーション作業従事者も、特別加入の際には「特定作業従事者」として加入します。
創業支援等措置に基づき事業を行う者
創業支援等措置とは、退職後、65歳から70歳までの間の就業を確保する制度の1つです。具体的には、以下のような働き方を提供する措置です。
- 70歳まで「業務委託契約」を継続的に結ぶ
- 70歳まで継続的に、事業主自ら実施する社会貢献事業に従事する
- 70歳までに継続敵に事業主が委託・出資等する団体が行う社会貢献事業に従事する
ただしこの措置に基づき働く場合は、「従業員」として勤務する再雇用や継続雇用とは違い、「フリーランス」という形で働くことになります。そのため、企業が加入している労災保険の適用対象外となるのです。そこで、こうした事業者も特別加入ができるようになりました。創業支援等措置に基づき事業を行う事業者の特別加入区分は「一人親方等」です。
原動機付自転車又は自転車を使用して行う貨物運送事業者
こちらは、フードデリバリーの配達員の方などが該当します。配達員は、従業員としてではなくフリーランスの扱いになるので、労災保険の対象外です。しかし、配達中は事故で怪我をするリスクが高いため、特別加入が認められています。
IT関係のフリーランス
IT関係のフリーランスも、2021年9月より特別加入できるようになりました。対象になるのは、以下のような職種です。
- ITコンサルタント
- システムエンジニア
- プロジェクトマネージャー
- プログラマー
- データサイエンティスト
- Webデザイナー
- Webディレクター
- その他
このように、情報処理システムの設計や保全などの業務に関わる事業者全般が該当します。IT関連のフリーランスが特別加入する際の区分は「特定作業従事者」です。
柔道整復師
柔道整復師とは、骨折や脱臼等の怪我を治療する職業で、国家資格にあたります。個人で接骨院を開業している方や、病院と業務委託契約で働く方が特別加入の対象です。
特別加入の方法と手続き
では、特別加入の権利があるとして、特別加入するにはどのようなステップを踏むのでしょうか?ここからは、労災保険の特別加入に必要な手続きをご紹介します。
特別加入団体を通じて加入する
フリーランスの方が労災保険に特別加入するには、「特別加入団体」を通じて加入しなければなりません。
特別加入団体とは、相当数の一人親方等で構成され、各都道府県労働局の承認を受けた団体を指します。この団体を「事業主」、構成員を「労働者」という形にすることで、労災保険に加入できるという仕組みです。
特別加入団体を通じて加入する方法は2つあります。
- 新しく特別加入団体をつくる
- 既存の特別加入団体を通じて加入
以下でそれぞれの方法について詳しく解説していきます。
加入方法①:新しく特別加入団体を設立する
加入する方法の1つは、特別加入団体を新しく立ち上げて加入する方法です。この場合、労災保険申請の流れは次の通りです。
- 特別加入団体を立ち上げる
- 「特別加入申請書」を都道府県の労働局長に提出
- 労働局より承認・不承認通知
また、特別加入団体として労働局に承認されるためには、以下のような条件を満たさなければなりません。
- 一人親方または特定作業従事者の相当数を構成員とする単一団体であること
- その団体の構成員の範囲、構成員である地位の得喪(資格を得る、失うこと)の手続きが明確であること
- その他団体の組織、運営方法が整備されていること
- その団体のの定款などに規定された事業内容からみて労働保険事務が可能であること
こうした要件に見合っているかを総合的に労働局が判断して、承認されれば、加入が認められます。
加入方法②:既存の特別加入団体を通じて加入
2つ目の加入方法は、すでに承認された特別加入団体に加入して手続きする方法です。申請の流れは以下の通りです。
- 特別加入団体へ加入申請
- 各団体の組合が、「特別加入に関する変更届」を都道府県労働局長に提出
団体を立ち上げる方法と違い、すでに承認されている特別加入団体へ加入さえできれば、組合が手続きをしてくれます。詳しくは以下の記事でも紹介しています!併せてご覧ください。
【補足】健康診断結果の提出が必要な場合も
労災保険に特別加入する際、特定の職業に従事した経験がある方は、健康診断の受診、結果の提出が必要になります。具体的には、次の職業が対象です。
業務の内容 | 特別加入前に従事した通算期間 | 必要な健康診断 |
粉じん作業を行う業務 | 3年以上 | じん肺健康診断 |
振動工具使用の業務 | 1年以上 | 振動障害健康診断 |
鉛業務 | 6ヶ月以上 | 鉛中毒健康診断 |
有機溶剤業務 | 6ヶ月以上 | 有機溶剤中毒健康診断 |
健康診断を受ける必要があるかどうかは、提出された届出書をもとに、労働局が職歴詳細をみて判断します。その結果、健康診断が必要とされた加入予定者は、労働局長が指定する医療機関にて受診しなければなりません。受診料は国が負担してくれますが、診断機関に行くまでの交通費は自己負担です。健康診断の結果によっては、労災保険の特別加入が認められなかったり、加入範囲が制限されることがあります。
特別加入の補償と保険料
ここからは、特別加入の補償や保険料について紹介します。一般加入の労災保険とほとんど同じですが、特別加入特有の制限などもあるため、確認しておきましょう。
補償される業務範囲
補償される業務範囲は、基本的に「特別加入申請書に記載された業務」に直接付随する行為を行う場合に限定されます。例えば一人親方であれば、請負契約に直接必要な行為を行う場合や、それに関する機会・道具等(手工具程度のものは除く)を運搬する場合などが該当します。
また、通勤災害については、補償がない職種もあるため注意しましょう。例えば、個人タクシー運転手や個人貨物運送業者などは通勤中の労災が適用されません。これは、自宅と就業場所の往復の実態が明確でない、という理由からです。
補償内容
特別加入の労災では、以下のような災害、事故が補償されます。
- 労災事故における怪我や病気の治療費
- 労災事故による休業のときの補償
- 労災事故により障害状態になったときの補償
- 労災事故による死亡の際の遺族給付
具体的な給付額と補償内容は、以下の表の通りです。
補償種類 | 給付条件 | 給付内容 |
療養補償 | 治療・療養が必要 | 療養にかかる費用全額 |
休業補償 | 療養のため仕事を4日以上休んだとき | 4日目より給付基礎日額の8割を支給 (休業補償給付6割+特別支給金2割) |
障害補償年金 | 傷病治癒後、身体に障害が残ったとき | 障害等級1~7級の等級に応じて給付 給付基礎日額に応じて年金額を決定 |
遺族補償年金 | 死亡時 | 遺族の人数や給付基礎日額に応じて年金を給付 |
このように、業務中の事故に関する治療は、自己負担なしで受けられます。また、一定期間仕事を休まなければならない場合や障害を負った場合は、加入時に定めた「給付基礎日額」を基準に日額や年金、一時金での給付があります。
保険料の計算
通常の労災保険とは違い、特別加入の場合は加入者に保険料の負担があります。特別加入の労災の保険料は、給付基礎日額と職種により異なります。計算式は、以下の通りです。
保険料=給付基礎日額×365×保険料率
給付基礎日額については、3,500円〜25,000円の間で、申請に基づいて労働局長が決定します。料率は、職業により、以下の通りです。
特別加入の種類 | 料率 |
自動車、原付を使用して行う旅客もしくは貨物の運送事業 | 11/1000 |
建設の事業 | 17/1000 |
漁船による水産動植物の採捕事業 | 45/1000 |
林業 | 52/1000 |
船員法第一条に規定する船員が行う事業 | 48/1000 |
創業支援等措置に基づき高年齢者が行う事業 | 3/1000 |
柔道整復師法第二条に規定する柔道整復師が行う事業 | 3/1000 |
芸能関係作業従事者 | 3/1000 |
アニメーション制作作業従事者 | 3/1000 |
IT関係のフリーランス | 3/1000 |
このように、建設や林業、漁業などの職種は、その事故発生状況に応じて料率が高くなっています。一方のITフリーランスなどは、災害リスクが低いことから、料率が低く設定されています。また、保険料は給付日額次第でも大きく左右されるので、支給額と保険料のバランスを考えて設定しましょう。
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まとめ
フリーランスも労災保険に「特別加入」という形で加入できます。幅広いフリーランスの労災保険への加入が認められていますが、加入できる職種を確認すること、特別加入の場合には保険料がかかることには注意が必要です。認定されれば、万が一の際にも充実した保障を受けることができますので、ぜひ1度、ご自分の労災保険について検討してみてはいかがでしょうか。
- フリーランスは、労災保険に「特別加入」という形で加入できるよ!
- 加入のためには細かい条件があるから注意が必要だけど、充実した補償が受けられるから、何かあった時も安心!
- もし条件を満たしているなら、ぜひ検討してみてね!
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