助成金を受けるためには、いくつかのポイントがあります。ポイントを知らないと審査に通りにくくなる可能性があるため、注意が必要です。本記事では、助成金を受けるにはどうすれば良いのか、また申請時の注意点にはどんなものがあるかを解説します。これから助成金の申請をする方は、ぜひ最後までご覧ください。
- 助成金を申請する際には「雇用保険の加入状況」と「勤務時間の管理」を見直そう!
- 残業時間の未払いや、不正受給経歴などがあると審査に通りにくくなるよ
- 業種によっては申請できない場合もあるので、さまざまな資金調達方法を活用しよう!
そもそも助成金とは?
助成金とは、主に国や地方自治体が行っている資金援助制度です。
助成金を利用するメリット
- 返済の必要がない
- 条件を満たしていれば原則受給できる
- 社会的な信用が高まる可能性がある
助成金を利用するメリットは、返済の必要がないので確実に資金繰りを改善できる点です。ローンや融資は利子をつけて返済するので、最終的には資金繰りが悪化してしまう可能性があります。しかし、返済の必要がない助成金であれば、利用することで資金がマイナスになる可能性がありません。
また、助成金の審査に通れば、事業の社会的な信用が高まる可能性があります。助成金の申請にあたっては事業計画書を提出する必要があるので、審査に通ったということは、計画的に事業を進めているんだといった証明になるためです。
助成金を利用するデメリット
- さまざまな書類を準備する必要がある
- 条件を満たしていないと申請できない
- すぐに受給できる仕組みになっていない
助成金を利用するデメリットは、さまざまな書類を準備する必要がある点です。事業計画書や申請書のほか、制度ごとに必要な書類を準備しなくてはならず手間がかかります。また、条件を満たしていなければそもそも申請ができない点もデメリットです。制度ごとに細かな条件が定められており、条件を満たせないケースも多くあります。
さらに、カードローンやファクタリングとは異なり即日で受給できる制度ではない点も、助成金のデメリットです。一般的に、助成金を受給するまでには申請→審査→取り組み実施→取り組み完了報告→受給といった流れを経るので、数か月はかかります。資金繰りが悪化している際にすぐ資金調達できる方法でない点には十分注意しましょう。
【補足】助成金と補助金の違い
助成金と似た言葉として「補助金」があります。補助金は、条件を満たしていて、かつ審査に通り、計画通りに取り組みを完了した場合にのみ受給できるものです。条件を満たしていても、応募が多くほかの事業計画よりも評価が低かった場合には、審査落ちする可能性があります。
助成金と補助金の違いは、こうした受給難易度の高さにあります。助成金は条件を満たしてさえいれば原則として受給できますが、補助金は条件を満たしてても、事業状況や申請書類の内容によっては受給できないので注意しましょう。
助成金を受ける前に確認すべきポイント
助成金を受ける前に、そもそも事業が適切に行えているのかを確認しましょう。雇用保険や労働時間などが適切に管理できていないと、審査が通らなくなります。特に注意していただきたいのが、以下3つのポイントです。
- 雇入れと同時に雇用保険を取得しているか
- 労働時間の管理・記録が適切に行われているか
- 残業代が適切に支払われているか
以下では、助成金を受ける前に確認すべきポイント3つをそれぞれ詳しく解説します。これから助成金の申請をしようと考えている方は、ぜひ以下の項目をご覧ください。
ポイント①雇入れと同時に雇用保険を取得しているか
まず確認したいのは、雇用保険の取得状況です。厚生労働省が行っている助成金制度で、賃金や人材開発などに関する制度の場合は出勤簿や賃金台帳などを提出する必要があります。各書類においてチェックされるのが、雇用保険の状況です。
雇用保険が適用となる労働者については、雇い入れと同時に雇用保険に加入することが義務付けられています。雇い入れ日と雇用保険取得日(加入日)が異なっていないか、また保険料を適切に納めているかを必ず確認しましょう。
ポイント②労働時間の管理・記録が適切に行われているか
労働時間の管理・記録についても、賃金台帳や出勤簿においてチェックされる項目です。給与明細とタイムカードにズレが生じている場合は、助成金の審査に通りにくくなるので注意しましょう。労働基準法違反になるまで長時間残業をしていた場合も、状況によっては審査が通りにくくなる可能性がありますが、残業代を適切に支払っていれば問題ないケースもあります。
労働時間は週40時間・1日8時間までと労働基準法で定められています。上限以上に働いていた場合は、残業扱いとして管理し、適切に残業代を支払わなくてはなりません。
ポイント③残業代が適切に支払われているか
残業代の未払いが発生している場合、助成金の審査に通らなくなります。指摘されてから支払えば問題ないケースもありますが、既に未払いが判明しているのであれば、支払ったうえで助成金の申請をしましょう。
ただし、そもそもどこまでを残業扱いとするかが曖昧になっている場合もあるかと思います。この後の項目で、労働時間・残業時間に関して確認すべきポイントを解説していきますので、あわせてご覧ください。
労働時間・残業時間に関する確認ポイント
前述のとおり、労働時間・残業時間の管理は助成金申請において非常に重要です。しかし、これまで労働時間の管理があいまいになっていて、実態が把握しきれていない企業もあるでしょう。以下では、労働時間や残業時間に関して確認すべきポイント2点を解説します。
労働基準法の内容を確認する
まず、どこからが残業時間に該当するのかを、労働基準法をもとに確認しましょう。
- 使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。
- 使用者は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。
- 使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。
引用:厚生労働省『労働時間・休日』
上記のように、1日の労働時間が8時間を超えていたり、週の労働時間が40時間を超えていたりしたら、残業扱いになります。例えば、1日8時間であっても週6日働けば、週40時間を超えるので残業扱いです。なお変形労働時間制やフレックスタイム制などの制度を用いている場合は、この限りではありません。
残業になる境界線を把握する
どこからが残業扱いになるのかを把握したら、実際の例をみながら、どこからが残業になるか境界線を引いてみましょう。
- 1日10時間出勤し、うち1時間は休憩をとった
- 平日週5日労働の契約だが、土曜日に休日出勤を6時間した
- 残業:平日1時間、土曜日6時間
上記の場合、1日10時間のうち休憩を1時間とっているので、労働時間は9時間です。労働基準法では1日の労働時間を上限8時間としているので、残業時間は1日あたり1時間となります。さらに、休日出勤の場合はすべてが残業扱いとなるので、この週の残業時間は「(1時間×5日)+ 6時間 = 11時間」となります。
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助成金を受けるための流れ
助成金を受けるための流れは、制度によって少しずつ異なります。以下では、一般的な流れを大まかに解説しますので、申請時のイメージを掴みたい方はご覧ください。なお、以下とは手続きの流れが異なっている制度も多くあるので、申請時は必ず要項をご確認ください。
step①制度要項を確認する
まずは、自社が対象となる助成金なのか要項を見ながら確認しましょう。助成金によってはいくつかの枠があり、特定の枠のみ対象となる可能性も多くあります。まずは要項を隅々まで読み込んで、どういった事業が対象となるのか確認してください。制度要項を読む際は、以下の点を確認しましょう。
- 対象となる事業
- 助成対象となる費用
- 申請期限
- 必要となる書類
助成金を利用する際は、ひとまず締め切りまでに必要となる書類をすべて提出する必要があります。上記のポイントを必ず確認して、書類の不足や不備がないようにしてください。
stpe②事業計画を立てる
申請する助成金が決まったら、事業計画を立てましょう。販路開拓や人材育成など、制度にあわせた取り組みを考えてください。事業計画を立てる際のポイントは、無理のないスケジュールを組むことです。補助金とは異なり、書類の内容によって優劣がつく訳ではないので、着実に実施できる計画を立てるのが重要になります。
事業計画に無理があると、申請した通りに事業が進まず、採択が取消しになる恐れがあります。確実に完了報告ができるように、日々のタスクや月々のリソース状況などを鑑みたうえで事業計画を立ててください。
step③書類準備をする
事業計画を立てたら、そのほかの書類も準備していきましょう。必要書類は制度によって異なりますが、基本的に申請書と事業計画書、そして社員関連の書類などが必要になります。書類準備には数週間程度はかかるので、余裕をもってすすめてください。
補助金とは異なり、助成金は受付が早期に停止するケースはありません。焦って準備をすると、不備によって審査が通らなくなったり、指摘を受けて審査通過が遅れたりします。2〜3週間ほど前から準備をして、ミスのない書類を用意してください。
step④書類提出をして審査を受ける
書類が揃ったら改めて確認をして、提出します。書類提出の方法は制度によって異なりますが、昨今は郵送やWebが一般的です。郵送の場合は、当日消印有効の場合と、当日必着のケースがあります。締め切り直前に送ると、郵送遅延によって間に合わなくなる可能性があるので、1週間程度は余裕を持って提出するようにしましょう。
書類を提出したら審査結果を待ちます。応募が多いと審査に1ヶ月以上かかるケースもあるので、すぐに結果が出ない前提で気長に待ちましょう。
step⑤審査に通ったら計画に沿って事業を進める
審査に通ったら、計画に沿って取り組みを進めましょう。取り組みが完了しないと、完了報告ができず助成金の受給もできません。そのため、着実に取り組みを進めていく必要があります。
step⑥事業が完了したら報告をして支給を待つ
事業が計画通りに進んだら、所定の方法で完了報告をしましょう。完了報告をしたら、事務局が内容を確認したうえで、助成金の支給可否が判断されます。完了報告の内容に問題がなければ、登録した口座に助成金が振り込まれます。
助成金を受けられなくなる人の条件
残業代未払いや雇用保険加入状況などとは別に、助成金を受けられなくなる条件もあります。具体的には、以下のような人は助成金の受給ができません。
- 過去に不正受給をした
- 労働保険料の未納がある
- 労働基準関係法令の違反があった
- 性風俗関連、暴力団など対象外となる事業
- 暴力主義的破壊活動を行った、または行う恐れがある
以下では、助成金を受けられなくなる条件について詳しく解説します。
過去に不正受給をした
過去に助成金や補助金を不正受給した場合、5年間は助成金・補助金を利用できなくなります。不支給決定日や採択取消し日から5年間は申請すらできなくなるので、十分に注意しましょう。不正受給の例としては、以下の事例があげられます。
- タイムカードや賃金台帳の改ざん(架空雇用)
- 退職済み社員を雇用し続けているかのように装う(架空雇用)
- 残業手当を支払ったかのように記載する(架空残業手当)
参考:厚生労働省『雇用調整助成金等の不正受給への対応を強化します』
昨今は不正受給に対する対応が強化されています。事業所訪問や立ち入り検査などによって、不正申請が判明する可能性は十分にあるので、書類の改ざんや偽造は絶対にやめましょう。
労働保険料の未納がある
助成金は保険料の一部を財源としているので、労働保険料の未納があると助成金を利用できません。保険料を適切に支払っている「雇用保険適用事業所の事業主」が、助成金を利用できるのです。
労働保険料の未払いがある場合は、申請する前に支払いを済ませましょう。また、そもそも保険適用となる労働者が雇用保険に未加入だった場合は、早期に加入を済ませ、未納の保険料を支払ってください。労働保険に関しては、以下の条件を満たす労働者が適用対象となります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
参考:厚生労働省『雇用保険の適用範囲が拡大されました!』
なお、賃金から保険料が天引きされていたのに未加入だった場合、2年を超えて遡って加入することができます。
労働基準関係法令の違反があった
労働基準関係法令とは、労働基準法や労働安全衛生法、最低賃金法などを含む法律です。法令違反があった場合は、助成金を申請する資格を失います。労働基準関係法令の違反事例には、以下のようなケースがあります。
- 最低賃金が適用となる労働者に対して基準以上の賃金を支払わなかった
- 労働環境の安全確認や労働災害防止措置を怠った
- 労働者に定期賃金を支払わなかった
- 予告なしに社員を解雇した
- 産休や育休を取得させなかった
- 残業代や休業手当を支払わなかった
労働基準関連法令の違反がある場合、助成金を支給するのにふさわしくない事業者と判断されます。これから申請を検討している方は、今一度労働環境を見直しましょう。
性風俗関連、暴力団など対象外となる事業
性風俗関連や暴力団など助成金の対象外となる事業は、申請することができません。該当する業種の事業者に関しては、別の資金調達方法をご検討ください。
暴力主義的破壊活動を行った、または行う恐れがある
暴力行為や破壊活動などをしていた方、または行う危険のある方も、助成金の対象になりません。具体的には、以下のような行為が該当します。
- 放火
- 騒乱
- 電車との衝突
- 電車を脱線させる
- 車両や建造物の破壊
- 強盗
- 爆発物の使用
まとめ
助成金は、きちんと準備をして申請すれば高い確率で審査を通ります。しかし、本記事で紹介したように残業代の未払いがあったり、労働時間の管理が適切でなかったり、雇用保険に正しい日時で加入できていなかったりすると、審査が通らなくなるので注意しましょう。
指摘が入ってから対応をして、審査に通る場合もあります。しかし、指摘が入ってしまうと審査が長引き、結果として事業も滞るのでデメリットしかありません。指摘なくスムーズに申請が通るように、本記事を参考にしながら準備を進めてください。
- 助成金を申請する際には「雇用保険の加入状況」と「勤務時間の管理」を見直そう!
- 残業時間の未払いや、不正受給経歴などがあると審査に通りにくくなるよ
- 業種によっては申請できない場合もあるので、さまざまな資金調達方法を活用しよう!
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