個人事業主には、会社員のような退職金制度がないため、自分で老後の資金を積み立てる必要があります。老後のお金に不安がある個人事業主におすすめしたいのが、小規模企業共済です。小規模企業共済は、主に小規模企業の役員や経営者のための退職金制度ですが、個人事業主でも利用できます。
本記事では、個人事業主が小規模企業共済を利用するメリット・デメリットや手続き方法などについて、詳しく解説します。
目次
小規模企業共済とは?
小規模企業共済とは、積み立て式の退職金制度です。独立行政法人 中小企業基盤整備機構、通称「中小機構」が運営しています。
小規模企業の役員や経営者のために、廃業・退職した際の生活資金を確保するための制度として作られました。いざという時の資金作りに役立つのはもちろん、節税面や事業の資金繰りなどにも役立つ制度となっています。2022年3月時点で、全国で159万人の加入者がいるとても人気のある制度です。
共済金の種類は4つ!掛金と共済金の種類について
小規模企業共済には固定の掛金プランがなく、月額1,000円から70,000円までの範囲で自由に掛金を決められます。
掛金は500円単位ごとで細かく設定できるので、自分の予算に応じて無理なく積み立てられるでしょう。そして、解約した際に受け取る共済金(解約手当金)には、以下4つの種類があります。
共済金A | 個人事業を廃業した場合共済契約者の方が亡くなられた場合 |
共済金B | 老齢給付(65歳以上で180か月以上掛金を払い込んだ方) |
準共済金 | 個人事業を法人成りした結果、加入資格がなくなったため、解約をした場合 |
解約手当金 | 任意解約機構解約(掛金を12か月以上滞納した場合)個人事業を法人成りした結果、加入資格はなくならなかったが、解約をした場合 |
【引用:中小機構「共済金(解約手当金)について」】
小規模企業共済、解約理由によって受け取れるお金が異なります。共済金(解約手当金)の種類によって、受け取れる額が変わる点に注意しましょう。受け取れる金額は、共済金Aが最も多く、次いで共済金B、準共済金となっています。解約手当金の場合は、掛金納付月数に応じて80〜120%の金額を受け取れます。
具体的な金額などについては、以下のページを参考にしてください。
【参考:東京商工会議所「小規模企業共済制度とは」】
小規模企業共済の加入資格は?
小規模企業共済の加入資格は、以下の通りです。
- 常時使用する従業員数が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主や会社役員
- 上記に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)
- 事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員
- 常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
- 常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
- 常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
【参考:中小機構「加入資格」】
個人事業主の場合、従業員数が20人以下、商業やサービス業は5人以下であれば、小規模企業共済を利用できます。2つの事業を行っている事業主の場合は、メインの収入となっているほうの事業で加入しましょう。
小規模企業共済に加入できない人は?
小規模企業共済に加入できない人には、以下のようなパターンが考えられます。
- 配偶者等の専業従事者(共同経営者の要件を満たしていない)
- 医療法人、学校法人、社会福祉法人、NPO法人などの直接営利を目的としない法人の役員等
- アパート経営等の事業を兼業している会社員(法人または個人事業主と常時雇用関係にある方)
- 学業を本業とする全日制高校生等
- 商業登記簿謄本に役員登記されていない会社の役員
- 生命保険外務員等
- 独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営する「中小企業退職金共済制度」、「建設業退職金共済制度」、「清酒製造業退職金共済制度」、「林業退職金共済制度」の被共済者である場合
【参考:中小機構「加入資格」】
例えば、ダブルワークで個人事業をしている会社員だと、小規模企業共済には加入できません。
一般的な個人事業主であれば、加入できるケースがほとんどですが、共同経営者や給与所得者に該当する方の場合は、加入資格があるか確認しましょう。
小規模企業共済に節税効果はある?
小規模企業共済には、節税効果があります。小規模企業共済の掛金は、すべて所得控除にできるためです。所得控除がよく分からない方は、まず「所得税の計算方法」を確認しましょう。
- 売上 – 経費や控除 = 課税所得
- 課税所得 × 税率 = 所得税額
上記のように、控除額が増えると「課税所得」を減らせます。課税所得が減ると、課税所得に税率をかけて求める所得税額も減額できるという訳です。小規模企業共済を利用して、掛金を所得控除できるようになれば、結果として所得税額を抑えられる、つまり節税効果があると言えます。
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個人事業主が小規模企業共済を利用するメリット
個人事業主の退職金制度としておすすめの「小規模企業共済」ですが、具体的には以下のようなメリットがあります。
- 最大で積立金額の120%程度を共済金として受け取れる
- 掛金をすべて所得控除にできる
- 掛金の増減が自由にできる
- 支払い方法が一括・分割で選べる
- 退職金になるので老後の生活に役立つ
- 貸付制度がある
上記のように、節税や資産形成などでメリットがあるのはもちろん、柔軟に利用しやすいのも小規模企業共済のメリットです。以下では、各メリットについて詳しく解説します。
最大で積立金額の120%程度を共済金として受け取れる
小規模企業共済の掛金は、最大120%程度を「共済金」として受け取れます。例えば、20年間で240万円を納付した場合、共済金Aなら約278万円、共済金Bなら約265万円を受け取ることが可能です。昨今は投資信託や株などで資産運用する方が増えていますが、元本割れする可能性もあります。長期利用を前提としている方で、安定して資産形成をしたい方には、小規模企業共済がぴったりでしょう。
掛金をすべて所得控除にできる
前述した通り、小規模企業共済の掛金はすべて所得控除にできます。例えば、月額7万円で利用した場合は、年間84万円を所得控除にできるのです。所得課税額が400万円の方なら年間約24万円、1,000万円の方なら約36万円ほどの節税効果があります。所得税を低く抑えたい方には、とてもおすすめできる制度です。
掛金の増減が自由にできる
掛金の増減を自由に行えるのも、小規模企業共済を利用するメリットです。小規模企業共済の掛金は、利用途中でも増額・減額を行えます。500円単位で細かく設定できるので、例えば事業収入が増える時期だけ多く納付するといったこともできるでしょう。予算や事業状況などに合わせて、柔軟に資産形成が行えるのも、小規模企業共済の魅力です。
支払い方法が一括・分割で選べる
掛金の増減だけでなく、支払い方法も柔軟に選択できます。選択できる支払い方法は、月払い・半年払い・年払いの3種類です。一度に高額な支払いが発生するのが心配な方は「月払い」、後からまとめて支払いたい方は「半年払い」または「年払い」が良いでしょう。時期によって収入が上下する仕事の場合でも、分割払いがあるので安心して利用できます。
退職金になるので老後の生活に役立つ
退職金制度のかわりになるのが、小規模企業共済を利用する大きなメリットです。個人事業主は、会社員のような退職金制度がありません。そのため、NISAやiDeCoなどを利用して、老後資金を作っている方もいるでしょう。しかし、投資商品は元本割れのリスクがあるため心配という方もいるのではないでしょうか。小規模企業共済は、長期利用をするのであれば元本割れのリスクがありません。そのため、安定して老後資金を作ることができます。
貸付制度がある
小規模企業共済には、貸付制度もあります。貸付制度とは、小規模企業共済の利用期間(納付期間)に合わせて、限度額まで事業資金を借り入れられる制度です。小規模企業共済の貸付制度には、以下のようにたくさんの種類があります。
- 一般貸付制度
- 緊急経営安定貸付け
- 傷病災害時貸付け
- 福祉対応貸付け
- 創業転業時・新規事業展開等貸付け
- 事業承継貸付け
- 廃業準備貸付け
【参考:中小機構「廃業準備貸付け」】
上記のように、不景気や病気の際に利用できるものから、親族の介護、新規開業に対応するものまでさまざまです。金額は制度によって異なりますが、おおよそ掛金の7〜9割で、上限1,000〜2,000万円程度を借り入れられます。資産形成をしつつ、もしもの時の準備にもなるというのは、個人事業主にとって非常に嬉しいポイントでしょう。
個人事業主が小規模企業共済を利用するデメリット
小規模企業共済を利用する場合は、デメリットも把握しておく必要があります。
- 掛金納付期間が12か月未満だと掛捨てになる可能性あり
- 20年未満で任意解約すると元本割れする
- 受け取るお金には税金がかかる
注意が必要なのは、短期利用になった場合は元本割れするリスクがある点です。また、利用するお金すべてが免税になる訳ではない点にも、注意する必要があるでしょう。以下の項目では、個人事業主が小規模企業共済を利用するデメリットを3つご紹介します。
掛金納付期間が12か月未満だと掛け捨てになる可能性あり
掛金納付期間が12か月未満だった場合、掛金を受け取れなくなる可能性があります。共済金の種類ごとに、掛け捨てになる期間を見てみましょう。
- 共済金A/B:6か月未満
- 準共済金/解約手当金:12か月未満
例えば、利用を開始してから12か月以内に法人成りする場合(準共済金)は、掛け捨てになる可能性があります。また、資金不足などで12か月以内に解約する場合(解約手当金)も、掛け捨てになってしまうでしょう。掛け捨てにならないように、20年程度の利用を想定して加入するようにしましょう。
20年未満で任意解約すると元本割れする
20年(240か月)未満で任意解約した場合、元本割れしてしまいます。任意解約時に受け取れる「解約金手当」は、納付期間によって支給率が決まっており、支給率が100%になるのは240か月目からです。そのため、240か月未満で任意解約した場合は、100%を下回る金額しか受け取れません。また、途中で掛金を増減させた場合、掛金区分ごとの掛金納付月数が20年未満だった場合も、元本割れする可能性があります。
しかし、個人事業を廃業した場合(共済金A)や、65歳以上で180か月以上掛金を払い込んだ場合(共済金B)であれば、20年未満でも元本割れしません。あくまで任意解約する場合に限りますが、短期利用の場合は元本割れのリスクがあるので、20年以上の利用を前提として考えておきましょう。
受け取るお金には税金がかかる
掛金は全額所得控除にできますが、受け取るお金には税金がかかります。受け取るお金は、税法上は退職所得・雑所得・一時所得などの「所得」に分類されるためです。「掛金が所得控除にできても、受取金に課税されるなら意味がないのでは?」と考える方もいるでしょう。
しかし、退職所得に関しては通常の所得よりも低い税率が設定されています。「(退職金 – 控除) × 0.5 = 課税所得」として計算されるので、利用しない場合と比べれば節税効果は大きいのです。節税効果は確実にある制度ですが、共済金を全額そのまま受け取れる訳ではない点に注意しましょう。
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手続き方法
小規模企業共済に加入する際は、以下の流れで手続きをします。
- 必要書類を準備
- 所定の書類に必要事項を記入
- 窓口で書類提出(初回掛金を現金支払いする場合は、掛金をその場で支払い)
- 中小機構からの書類を受け取り
上記のように、手続き自体は非常に簡単です。掛金の支払い方法によって手続きが若干変わるので、事前にどの方法にするか決めておきましょう。
なお、手続きに際しては以下のものが必要です。
- 確定申告書の控え(開業1年目の方は、開業届の控え)
※e-taxで電子申告をしている方は、e-taxの「受付通知」も必要 - 契約申込書
- 預金口座振替申出書
- 初回掛金(初回掛金を現金支払いする場合)
上記のように、事業に関する書類や、加入に関する書類が必要となります。
初回の掛金を現金で支払う場合は、掛金も用意してから手続きをしてください。
小規模企業共済に似た制度はある?
小規模企業共済のような資産形成制度には、ほかにも以下のようなものがあります。
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
- 国民年金基金
それぞれ特徴や違いのある制度なので、利用に際しては比較・検討が必要です。
各制度について、以下で詳しく解説しますので、資産形成について悩んでいる方は参考にしてください。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoとは、自分で選んだ保険商品や投資信託などで資産運用する、私的年金制度です。掛金が全額所得控除にできる点や、運用益を非課税で再投資できる点、受取時に所得控除を受けられる点がメリットとなっています。自営業の場合、月額6.8万円(年額81.6万)が掛金上限なので、小規模企業共済と同程度の金額を所得控除にできます。
ただし、原則として60歳まで引き出せない点や、投資信託を運用した場合は元本割れリスクがある点には注意しましょう。
国民年金基金
国民年金基金は、国民年金に加入している個人事業主や第1号被保険者を対象とした公的年金です。個人事業主は国民年金のみなので、厚生年金を納めている社会人よりも年金の受給額が非常に少なくなってしまいます。
将来の年金を増やすための制度が、国民年金基金です。国民年金基金を利用するメリットは、掛金を全額所得控除にできる点、そして終身年金のプランも選択できる点です。終身年金とは、生涯にわたって一定額を受け取れるもので、長生きしても年金を受給し続けられる点がメリットとなっています。
iDeCoやNISAのような資産運用では、受け取れるお金に限度があるため、一生涯にわたって一定額を受け取れるのは大きなメリットです。安定した運用・受取を希望される方は、国民年金基金の利用、もしくはiDeCoとの併用がおすすめです。
小規模企業共済に関するよくある質問
小規模企業共済への加入を検討する場合、制度に関してさまざまな疑問が出てくるかと思います。ホームページでも分かりやすく解説されていますが、それでも疑問や不安を感じるでしょう。以下では、小規模企業共済に関するよくある質問3つに回答していきます。
個人事業が廃業になったらどうなる?
個人事業が廃業になったら「共済金A」として共済金を受け取ります。共済金Aは、元本割れのリスクがないのがメリットです。中小企業共済は、廃業時の共済金を最も高く、任意解約時の共済金を最も低く設定しています。廃業して経済的に厳しいときに、共済金を多く受け取れるというのも、中小企業共済の魅力でしょう。
個人事業主でも退職所得として受け取れる?
個人事業主が、中小企業共済の共済金を「退職所得」として受け取れるかは、受け取り方によって異なります。受取方法の違いによる、税法上の扱いについて見てみましょう。
受取方法 | 税法上の扱い |
共済金・殉教差金を一括で受け取り | 退職所得 |
共済金を分割で受け取り | 公的年金等の雑所得 |
共済金を一括と分割併用で受け取り | 一括分:退職所得分割分:公的年金等の雑所得 |
65歳以上で任意解約65歳以上の共同経営者が任意退任 | 退職所得 |
65歳未満の方が任意解約65歳未満の共同経営者が任意退任 | 一時所得 |
12か月以上の掛金の未払いによる解約(解約手当) | 一時所得 |
【引用:中小機構「共済金(解約手当金)について」】
個人事業主が共済金を退職所得として受け取るには「一括受取」「65歳以上で任意解約」のいずれかを選択する必要があります。一括と分割を併用しても退職所得として受け取れますが、分割分は雑所得扱いになりますので、ご注意ください。
小規模企業共済の掛金の仕訳・勘定科目は?
小規模企業共済の掛金は、事業とは関係のない支出になるため「事業主貸」の勘定科目で仕訳をします。事業主貸(じぎょうぬしかし)とは、事業用口座にある売上金から、生活費としてお金を引き出した際に使う科目です。事業用口座から掛金を振り込んでいる場合で、帳簿づけしなくてはならない方は、上記の方法で記入しましょう。
まとめ
今回ご紹介したとおり、個人事業主でも小規模企業共済を利用することができます。掛金をすべて所得控除にできて節税になるので、お得に老後資産を積み立てたい方にはぴったりの制度です。また、貸付制度もあるため、事業が不安定になった際の備えにもなります。保険や福利厚生などが手薄な個人事業主だからこそ、積極的に活用していきたい制度です。ただし、短期利用になってしまうと、掛け捨てや元本割れになるリスクもあります。メリット・デメリットをしっかりと把握したうえで、魅力を感じた方はぜひ利用してみてください。
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